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    r__iy1105

    田中新兵衛に心を狂わされた
    禪院直哉は可愛いと思う

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    r__iy1105

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    31日間で宿虎になるSS
    五日目
    任務での出来事を確認しに来た五条の話

    若人の青い春を大人が摘む事は、赦されないと常思う。
    若人の青い春は、今世で一度しか来ないのだから。
    さて理解のある大人のふりをして、見逃すのが良いのか。
    それとも理解等しない大人のふりをして、その真っ赤な青い春を摘み取るべきなのか。
    考えあぐねって、闇の中。

    【五日目:五条視点】

    伊地知から無言の電話を受けて、状況を瞬時に察して任務をさっさと切り上げた。
    その途中で、宿儺から悠仁に戻ったと連絡を受けてホッとした自分が居た。
    高専に戻って硝子の元に向かえば、ベッドに寝かされている悠仁の姿が目に入る。
    「で、状況は?」
    「私が治すべきところは、殆んど無かったよ。多分、宿儺が治したんだろ」
    窓から部屋の中に入りながら、硝子の報告を受けて隣に立ったままの伊地知に目を向けた。
    もしもの事を考えて、目隠しの布を上げて眠っている悠仁を見つめる。
    呼吸はしているらしく、胸が上下に動いているのが目に入った。
    宿儺の特徴的な紋様も無いから、悠仁だとは思うけど確証はない。
    「伊地知の報告は?」
    「あの任務に、裏が無いのは確かでした。私も五条さんも確認したとおり、三級の呪い一体のみです。ですから、一級以上の呪いが出る筈はなかったんです」
    伊地知が言うとおり、僕も悠仁の任務は念には念を入れて確認をしていた。
    それでも一級以上の呪いが出るとしたら、別の理由があるとしか考えられない。
    また僕への嫌がらせかと思っていると、眠っていた悠仁の指がピクリと動く。
    硝子と伊地知を下げさせて、僕が前へと出る。
    凶が出るか吉と出るか、どちらかと思っていると目を開けた悠仁が周りをキョロキョロと見回す。
    声を掛ける前に僕の後ろに居る伊地知を見付けた悠仁は、ベッドを降りて一目散に伊地知へと向かう。
    「伊地知さん、生きてる!?」
    悠仁の第一声を聞いて、伊地知がポカンと口を開けたまま固まる。
    起きたのは確実に悠仁だった事を確認して、ホッと胸を撫で下ろした。
    「虎杖君で、いいんですよね?」
    「そうだよ!宿儺に何もされなかった?紛らわしい言い方するから、すげー心配したんだけど!?あいつの冗談、全然冗談に聞こえないんだよ」
    はぁと深い息を吐きながら、悠仁が脱力していく。
    宿儺にからかわれたのだろうが、相手はあの宿儺だ。
    縛りを付けて、悠仁の記憶を改竄している可能性もある。
    「悠仁、体は大丈夫そう?」
    「あれ、五条先生どうしたの?うん、体は大丈夫!」
    「だから言っただろ。私が治すべきところは無かったって」
    余程伊地知の安否が気になっていたのか、悠仁は僕に気付いていなかったらしい。
    念のためと、悠仁の体の状態を硝子が確認する。
    「どう気分は?」
    「特に何もないです」
    僕を見た硝子が、こくっと頷いたのを合図に悠仁に問い掛けた。
    「悠仁に任せた任務が、おかしい事になったから急いで帰ってきたんだよ。何があったか、教えてくれるかな?」
    上げていた目隠しを戻して、悠仁へと布越しに視線を向ける。
    すると悠仁は、少し考えてから僕を見上げて口を開く。
    「言われてた呪いは祓えたんだけど、次が出てきたんだけど。あれって、伊地知さんも先生も知らない呪いだったの?」
    悠仁は確かに、言われていた呪いは祓ったみたいではあった。
    でも未確認の呪いは応戦はしたけど、上手くいかなったんだろう。
    それでも、ちゃんと呪いを祓えた事だけは褒められることだ。
    「任務はちゃんと終わったみたいで良かったよ。悠仁が言うとおり、その呪いについては僕達は知らなかったんだよね。……それを宿儺が祓ったって事でいいのかな?」
    「あ、そうだ」
    何かを思い出した様に悠仁が呟き、一度言葉を止める。
    「宿儺があの呪いは俺に引っ張られた呪いだって言ってたんだけど、宿儺の指でもあったのかな」
    うーんと悩む悠仁に、そこまで丁寧に教えてくる宿儺が意外で驚いた。
    指探しには非協力的なくせに、こう言う所はフォローする。
    人はこれを愛と呼ぶのだろうが、どう考えても呪いの一つだろう。
    「随分、悠仁は宿儺に愛されてるみたいだね」
    「え、それはないって。あいつ、領域内で良く俺の事殺すし」
    否定して笑う悠仁の耳は、微かに赤く染まっていた。
    本人は気付いていない様だから、敢えて言わずにからかう様に呟く。
    「真っ赤な青い春か」
    摘むのは簡単だけど、摘んでしまった後はきっともう元には戻らない。
    どうしたものかと考えつつも、見守る事を選ぶのだろうなと一人ごちる事にした。
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