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    hjm_shiro

    @hjm_shiro

    ジャンル/CP雑多

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    hjm_shiro

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    凪玲/「だって、そこに入らないから」
    ⚠夢を叶えたその後

    酔っ払った凪くんが玲王の鞄に私物を入れちゃう話。
    本当に持ち帰って欲しいものは、

    ※過去の話をリメイクしてますので注意

    #ngro
    #なぎれお
    lookingHoarse
    #凪玲

    「……お、れーお」
     ハッとして、声がする方に視線を向ける。どうやらぼんやりしていたようで、凪が「おんぶして~」と腕を伸ばしながら潤んだ目で俺を見下ろしていた。レオも酔っちゃったの? なんて尋ねる凪の方がいつもよりポヤポヤとしていて、どことなく足取りも覚束ない。そんな俺も変わらず足元が危うくて、ふわふわと浮いているような心地だった。
     数十分前まで飲んでいたアルコールがそうさせるのか、はたまた隣に凪がいる嬉しさで気持ちが弾んでいるのか。今の俺にはよく分からないが、気分は頗るいい。
     そして、気分がいいのは凪も同じなのだろう。ふらふらと光源に吸い寄せられる羽虫のように凪が車道側を歩いていこうとするから、俺は慌てて凪の腕を引っ張った。飲み屋が連ねる駅前から少し離れた住宅街とはいえ、夜になってもそれなりに車通りがある。案の定、白い車が猛スピードで横を通り過ぎていった。
    「こーら、なーぎ。危ないから白線の中を歩けって」
    「うぃ~」
    「もう……本当に分かってんのかよ」
    「分かってるよ。でもさ、レオが俺のこと、おんぶしてくれたらぜんぶ解決しない? ね、そーでしょ?」
     間延びした声で俺の袖を引く凪に、俺はやれやれと肩をすくめる。

     凪とはブルーロックを経てプロになり、夢を叶えてからも交流を続けている。去年、俺たちはW杯で優勝し、凪は引き続きプロの世界で、俺は引退して御影コーポレーションを継ぐ形で日々頑張っていた。互いに住む世界が変わっても、俺たちの距離感が変わることはなく、時間が合うときはこうして飲みに出かけている。
     凪と飲みに行くのは楽しい。置かれている環境が変わったこともあり、凪を通して昔の仲間たちの話を聞くのは楽しかった。凪も凪で、俺の話に付き合ってくれる。今度、仕事で海外に行くと言ったら、オフを合わせて一緒に行きたいとも言ってくれた。
     そんなわけで、俺たちは何年経っても変わらずに交流を深めているのだが、そんな凪にはひとつ悪癖がある。

    「…………またか」
     家に帰り、鞄の中を確認して一言。財布やキーケース、パスケースなどに混じって、凪が間違って入れたらしいハンカチが出てくる。どうやら凪は酔うと、俺の鞄の中に間違って自分の物を入れてしまうらしかった。
     毎回、食事も後半になってくると、トイレに行った凪が俺のところに戻ってくる。そのまま座敷の隣に座ってチビチビと甘いカクテルを飲む凪の顔を見ながら、そろそろ水に変えてやんねーとな、と、こっそりお冷にすり替え、会計を済ませている間に、間違えて俺の鞄に私物を入れてしまうらしい。
     昔の凪はそんなこともなかったのに、ここ最近はずっとだ。ほとんど私物を持たなかったくせに、俺が口酸っぱく「ハンカチは持て」「ティッシュも持て」「鍵もパスケースも忘れないようにしろ」と言うようになってから、凪は必要最低限の物をパーカーのポケットに詰めてくるようになった。その習慣が身に着いたこと自体は大変素晴らしいことなのだが、同時に今日みたいな悪癖まで身についてしまったのは大誤算だった。
     俺の鞄の中には、凪のハンカチやティッシュ、ガムや飴玉に至るまで、実に様々なものが突っ込まれる。さすがに財布が入っていたときは目を疑った。おいおい、しっかりしろよ! と呆れる反面、俺がいないと何もできないことに安堵を覚えたりもした。そして、可愛いな、とも思うようになってしまった。
     だって、仕方ないだろう? こんな可愛いことをされたら、意識せざるを得なくなってしまう。凪の私物を見るたびに凪のことを思い出すし、また会いたいなと思ってしまう。それに、この凪の悪癖があるからこそ、誘う口実ができているのも事実で。だから、俺は嬉しいのと同時に困っている。
     このままでは、ずるずると凪を縛ってしまう。凪は、俺と飲むのは楽しいと言ってくれてるけど、それでも。俺だけが凪を独占していい理由にはならない。何より、女々しく縋ってしまいそうになる自分が嫌だった。
     だから、次こそは凪に渡そうと決めている。持ち帰らずに、ちゃんと私物を返そうと。


     ◆

     今夜も凪とお気に入りの店で飲んで、凪のマンション近くまでぶらぶらと歩いて。いつも別れるT字路で、凪が足を止めた。
     くるりと振り返った凪の鼻先がほんのりと赤く染まっていて可愛い。上背もあって、体格もしっかりとした男なのに、大きな目もきめ細やかな白い肌も、凪の魅力をぐっと引き立てる。そう思うのは惚れた欲目というやつだろうか。だとしたら、恋とはつくづく厄介なものだと思う。
    「ありがとね、レオ。ここで大丈夫だよ」
     凪が言う。いつもならここで「気をつけて帰れよ」と返すところだが、今日は凪を呼び止めた。
    「ちょっとだけ待ってくれ。酔っているときのお前は気付いてねーと思うけど……。お前、いつも俺の鞄に間違って物を入れていく癖があんだよ。だから、」
     凪の目の前で鞄を開き、中に手を突っ込む。今ここで凪の私物を返してやろうと思ったが、財布とキーケース、パスケースにハンカチ――と、出てくるのは自分の私物だけだった。底までさらっても凪の物が出てこない。
    「あれ? いつも、お前のものが出てくるのに……」
     そう呟く俺をよそに、凪がちょっとだけ口角を上げる。「もう、レオってば、なに言ってんのさ」なんて言うから恥ずかしくなってしまった。「わりぃ、なんでもない」と首を傾げつつ、小さく謝って鞄を閉じる。
    「……今日も、俺のものが鞄の中から出てくるって思ったんでしょ」
    「えっ、」
    「でも残念。今日は何も入れてないよ」
     羞恥で俯きかけていた視線を上げる。凪は得意げな顔で、俺の鞄を指差した。
    「だって、そこに入らないから」
     俺、大きいし。
     そう言って、自分の胸元をするりと撫でる凪に、んん? と間抜けな声を出してしまう。
     こんなときばかり人通りも車通りもなく、街灯に集まる虫の羽音だけがやけに五月蝿くて。固まる俺をよそに凪はくるりと背中を向けると、じゃあね、と手を振って歩き出した。いつもより物足りなさのある鞄を抱えて、俺は凪の後ろ姿を見つめる。

     ――凪は俺の鞄を指さして、そこに入らないと言った。確かに、俺の鞄の中に凪は入らない。鞄は小さく、凪は大きいから。だけど、もし、凪がこの中に入ったとしたら?

     そう考えたとき、凪が本当に持ち帰って欲しいものが何なのか分かって、俺は急いで小さくなっていく凪の背中を追いかけた。 
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    Replies from the creator

    hjm_shiro

    DOODLE凪玲/【最新】nagi_0506.docx
    ⚠監獄内の設定を少しいじってる

    凪に好きなものを与えて、うまくコントロールしているつもりの玲王と、いやいやそうではないでしょ、って思ってる周りの人たちが思わずツッコんじゃう話。
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    「たまにレオってすげぇなって思うわ」

     千切がぽつりと呟く。千切は本場よろしく油でベチャベチャになった魚――ではなく、さっくりと揚がったフィッシュフライをフォークに突き刺すと美味そうに頬張った。玲王としては特に褒められることをしたつもりはないのだが、ひとまず適当に話を合わせて、そう? と軽く相槌を打つ。

     新英雄大戦がはじまってから、選手たちは各国の棟に振り分けられている。それぞれ微妙に文化が異なり、その違いが色濃く出るのが食堂のメニューだった。基本的には毎日三食、徹底管理された食事が出てくるのだが、それとは別に各国の代表料理も選べるようになっていて、それを目当てに選手たちが棟の間を移動しに来ることもあるほどである。今日はフィッシュ&チップスと……あとはなんだったかな、と思い出しつつ、玲王はナイフでステーキを細かく切った。そうして隣にいる凪の口にフォークを突っ込む。もう一切れ、凪にやろうとフォークにステーキを突き刺したときだった。千切の隣に見知った顔ぶれが座った。
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