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    hjm_shiro

    @hjm_shiro

    ジャンル/CP雑多

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    hjm_shiro

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    凪玲/恋の本質
    ⚠凪玲版深夜の創作60分一本勝負に参加したときのSS。
    ⚠お題「バレンタイン」をお借りしています。
    ⚠白宝のふたり。付き合ってる。
    お題そのままにバレンタインデーにまつわる凪玲の話。

    #なぎれお
    lookingHoarse
    #ngro
    #凪玲

     玲王はモテる。お金持ちで容姿端麗で勉強もスポーツもできて人気者。知らない人はいないのでは? ってぐらい学校では有名。だから、バレンタインの時期になると大変なんだろうなぁ、とは思ってたけど、やっぱり玲王は大変そうだった。
     朝、リムジンを降りた瞬間から俺のことなんて知りません、居ません、みたいな顔で女子たちが玲王に寄っていく。あっという間に玲王を中心とした輪が出来上がって、俺はその外でぽつねんと立つ羽目になった。
     あーあ、離れちゃった。と思いつつも、こうなったら助けることはおろか、近付くことすらできないので、そそくさと輪を避けて教室に向かっていく。そのとき、つんつんと誰かに袖を引かれた。ツインテールの女子が俯きながら俺の袖を掴んでいる。

    「……なに?」
    「えっと、あの、」
    「あー、玲王にだったら自分で渡してね。預かるの面倒だから」
    「ちが……」
    「じゃ」

     まったく、こっちの身にもなってよね。と思いつつ手を振り解いて教室を目指す。途中、何度も似たようなことがあって、そのたびに俺は同じようなセリフを繰り返した。
     チョコぐらい自分で渡して欲しい。っていうか、そのまま玲王に渡せずに持ち帰ってしまえ。玲王は俺のなんだから。人のものにベタベタと気安く触らないで欲しい、っていうのが俺の本音だ。

     玲王と俺は、監獄を出るタイミングで正式に付き合うことになった。正直、監獄を出るまではサッカー漬けでお互いふわふわとした気持ちにも雰囲気にもなれなかった。だけど、やっと数ヶ月前に仮釈放された。なんでも、高校は卒業してこいとのことだった。

     そんな経緯もあって、俺たちはまた通い慣れた白宝で授業を受けている。仮釈放されたとはいえ、放課後は与えられた練習メニューをこなしているのだが、前よりは自由があった。自由最高、やっほー、なんて思ってたけど、まさかこんなに玲王の人気が出て、嫉妬することになるとは思っていなかった。BLTVを通して有名になった俺たちは……というより玲王はさらに有名になってしまった。前からキャーキャー言われてたけど、その比じゃない。たぶん、チャイムが鳴り終わるまで玲王は女子たちに捕まりっぱなしなんじゃないかな、と思う。それが許せなかった。

    「俺のなのに……」

     ボソボソと呟いて机に突っ伏す。今日一日、こんな面白くない思いをするなら休めばよかった……なんて思いながら俺は目を閉じた。


     ※※※


    「凪! お前、俺のこと置いて先に行っただろ! 帰りは絶対、おいてくなよ!」

     昼休み。玲王が俺の教室までやってきた。ドン、とテーブルに置かれた弁当箱は三重。よく食べるね、と言ったら、お前の分もある、と玲王が誇らしげに言った。

    「えー、いいのに。咀嚼めんどい」
    「体が資本だろーが! ばぁやが持たせてくれたんだ。食うぞ」
    「うへぇ」

     仕方なく、封を開けようとしていたパンを鞄にしまう。そのときだった。

    「玲王! ちょっといい?」
    「俺?」
    「うん」

     ここじゃ話せないことだから……と玲王が女子に引っ張られていく。
     あーもう、どうすんの、この弁当箱。馬鹿みたいに積み上がった弁当を勝手に開けるわけにもいかない。
     さっき片付けたパンを再び取り出し、もそもそとパンを食べる。今日は珍しくチョコレートパンだ。どうせ、玲王からは貰えないだろうし。だって、日本のバレンタインデーは女子から男子へ、が基本だ。それにプライドの高い玲王がチョコを用意しているとも思えない。女子みたいな真似するかよ、って言いそうだ。

     もぐもぐと甘ったるいチョコレートのクリームが入ったパンを咀嚼する。甘すぎて喉に引っかかりそうだ。水を買い忘れたから、口の中がカラカラで最悪である。
     あとで飲み物でも買いに行こう。それまでに玲王が帰ってきてくれたらいいな。
     そんなことを思ってたけど、結局、玲王はでっかい弁当だけを置いて戻ってくることはなかった。


     ※※※


     おいてくなよ。って言った癖に、玲王はいつまで経っても俺の教室には来なかった。掃除も終わって、自習してる生徒もひとり残らず居なくなって、どんどん空が暗くなっていく。そのうち一番星でも見えそうだ……なんて思っていたところ、また朝みたいに見知らぬ女子が寄ってきた。ロングヘアーの細くて可愛い子、ってクラスの奴が噂してるのを聞いたことがある。

    「……あの、」
    「玲王なら知らないよ。あとそれ、自分で渡してね」

     女子の手にある袋を指さして言う。じゃ、と机に突っ伏す俺に、女子は何も言わなかった。何も言わないが、その場からも離れようとしない。不思議に思っていると、ガラッと教室のドアが開いた。

    「ごめん凪! 遅くなった!」
    「玲王!」

     待ちくたびれたーと文句を言ってリュックを背負う。玲王は、悪かったと笑うと、女子の方を見た。

    「なに? 凪に用事?」
    「いや、なんでもないの! それじゃあ……!」

     パタパタと女子が去っていく。いつもなら愛想のいい玲王が、少しだけ鋭い目で女子のことを見ていた。

    「……お前もモテるようになったよな」
    「ん? なにが?」
    「めちゃくちゃ言われたんだよ。凪にもチョコ渡してほしいって」

     まぁ、自分で行けって言ったけど。と、玲王がぼやく。まったく同じことを自分も言ったと伝えたら玲王が笑った。

    「本当はそのまま捨てて欲しいぐらいだったけど……なんて言ったら呆れる?」
    「ううん。俺も同じこと思ってたよ。正直、いっぱいチョコ貰ってくる玲王のことを想像して嫌な気持ちになってた」
    「俺も」

     誰も居ないのをいいことにコツンと額を合わせる。ほんとに軽く唇にキスをして教室を出た。
     そのとき、ふと違和感を覚えて玲王の手を見る。

    「てか、これだけ……?」
    「なにが?」
    「チョコ、いっぱい貰ったんじゃないの?」

     朝から晩まで女子に囲まれていたのだ。こんな小さい袋だけだとは思えなくて首を傾げる。
     玲王はちょっとだけ笑うと、その小さな袋を俺に差し出した。

    「これは凪の分。あと、俺のはぜんぶ断った。下駄箱に入ってた分も、さっき返しに行ったし」

     まさかの発言に、え、と気の抜けた声が出る。そういう凪はどうなんだよ? と聞かれて、俺は両手をひらひらと振った。

    「いつも通り、一個もないよ。俺がモテるわけないじゃん」
    「んなわけねーだろ。どっちかって言うと、気付かなかっただけじゃねぇの?」
    「そうかな……?」
    「うん、そう。でも俺にとっては好都合だけど」

     何処のか分からない袋のチョコを玲王から手渡されて受け取る。初めてのチョコだ。それも玲王からの。

    「貰えるなんて思ってなかった……」
    「俺も。まさか用意する側になるなんて思ってなかった」

     けど、凪はこういうことぜってーしねぇだろ! と玲王が笑う。だから俺がしたのだと言って、玲王が先に進んでいく。


     学校を出て、いつも通りリムジンを呼ぼうとする玲王の手を引く。どうした? と驚く玲王の手に、俺はすっかり冷めたそれを押し付けた。

    「なにこれ、ココア……?」
    「チョコじゃないけど。でも、玲王へのバレンタイン」

     確かに俺は面倒なことはしない。だけど、昼休み。自販機で水を買うときに見たココアのボタンに自然と指が伸びた。いま買っても冷めちゃうのに、と思いながらも、何もせずにはいられなかった。
     たぶん、恋ってこういう事なんだと思う。人を好きになると、"面倒くさい"を簡単に凌駕していく。そんなことを思うより早く、勝手に体が動いてる。

    「もう冷めてんじゃん!」

     でも凪らしい。と、笑って玲王がココアを大事そうに握りしめる。

    「お前からのチョコが一番嬉しいよ」

     そう言う玲王に、俺はやっぱり考えるよりも先に体が動いていて、人目も憚らずに玲王のことを抱き締めていた。
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    Replies from the creator

    hjm_shiro

    DOODLE凪玲/【最新】nagi_0506.docx
    ⚠監獄内の設定を少しいじってる

    凪に好きなものを与えて、うまくコントロールしているつもりの玲王と、いやいやそうではないでしょ、って思ってる周りの人たちが思わずツッコんじゃう話。
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    「たまにレオってすげぇなって思うわ」

     千切がぽつりと呟く。千切は本場よろしく油でベチャベチャになった魚――ではなく、さっくりと揚がったフィッシュフライをフォークに突き刺すと美味そうに頬張った。玲王としては特に褒められることをしたつもりはないのだが、ひとまず適当に話を合わせて、そう? と軽く相槌を打つ。

     新英雄大戦がはじまってから、選手たちは各国の棟に振り分けられている。それぞれ微妙に文化が異なり、その違いが色濃く出るのが食堂のメニューだった。基本的には毎日三食、徹底管理された食事が出てくるのだが、それとは別に各国の代表料理も選べるようになっていて、それを目当てに選手たちが棟の間を移動しに来ることもあるほどである。今日はフィッシュ&チップスと……あとはなんだったかな、と思い出しつつ、玲王はナイフでステーキを細かく切った。そうして隣にいる凪の口にフォークを突っ込む。もう一切れ、凪にやろうとフォークにステーキを突き刺したときだった。千切の隣に見知った顔ぶれが座った。
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