Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    hjm_shiro

    @hjm_shiro

    ジャンル/CP雑多

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💓 👏 💕 🙏
    POIPOI 62

    hjm_shiro

    ☆quiet follow

    凪玲/空白の左手とその理由について
    結婚適齢期になった二人が、ブルロメンバーの結婚式(二次会)に参加する話。ずっと凪に恋してる玲王と、ずっと浮いた話ひとつない凪。

    #なぎれお
    lookingHoarse
    #ngro
    #凪玲

    「あーあ、先越されちゃったね」
     テラスまでやってきた凪がぽつりと呟く。
     風が強いせいか、外のソファー席は不人気だった。一方の室内は、相変わらず飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎで、ワインボトルが床に転がっている。

    「今年に入ってもう三度目だよ。来月は斬鉄の結婚式だっけ?」
    「あー……、そういえばそうだな」
    「急にみんな結婚していくじゃん。今までそんな素振りみせなかったのに」

     ハァ、と重いため息をついて、凪がソファーの背もたれにふんぞり返る。
     めったに飲んでいるところを見ないし、酔ったところも見ないのだが、さすがの凪も今日は飲みすぎたのか、頬が少し赤かった。それもそのはず、結婚式からの披露宴、そして二次会と続けば、どんな酒豪でも酔い潰れてしまう。お互いそこそこ酒には強いほうだが、凪も玲王もとっくの昔にキャパオーバーしていた。

    「まー、こういうのはタイミングとかもあるしな〜。年齢的にも、そろそろ身を固めるにはいい歳だし。つーか、お前って結婚願望あんの?」
    「あるよ。めちゃくちゃある」
    「マジかよ! 意外! てか、お前とこういう話するの初めてかも……」

     熱くなった息を吐き出しながら、酔いを醒まそうとパタパタと手で顔を仰ぐ。
     凪に結婚願望があるのは意外だった。今まで浮いた話のひとつも聞いたことがなかったから……というより、意図的に聞きたくなくて避けてきたから、凪にそういった気持ちがあると知ってちょっとだけ悲しくなった。いつかは凪も結婚しちゃうんだよなーと思うとやるせない。

    「レオは? そういえば、婚約者がいるとかいないとか言ってなかったっけ?」
    「そういやぁ、そんな奴もいたな……」
    「なにそれ。ずっと続いてたんじゃないの?」
    「親同士が勝手に決めただけの相手だからなんもねーよ。それにこの前、破断になった」
    「えっ」

     凪がガバッと勢いよく体を起こす。本当に? と鬼気迫る表情で問い詰めてくる凪に思わず後ずさった。
     さっきまで、ソファーにふんぞり返っていたくせに。溶けちゃいそうなぐらい、ぐでーっと体から力を抜いていたくせに、凪に強く両肩を掴まれて逃げ場を失ってしまう。
     玲王は、そんなに他人の不幸を喜ぶなよなーと笑うと、凪の手を振り払った。

    「別にレオの不幸を喜んではないよ。でもどうして?」
    「いつまで経っても結婚しないから」
    「どういうこと?」
    「全然、縁談の話が進まないから、他の財閥の息子と結婚するんだとー」

     俺としてはラッキーだけど! と、付け足して笑う。
     本当にラッキーだった。それは嘘じゃない。人生の伴侶ぐらい自分で選びたいし、ビジネス結婚だけはしたくない。そこまで自分の人生を"家のため"や"ビジネスのため"に費やしたくなかった。だから、ラッキーではあった……けれど、傷つかなかったわけじゃない。
     ただシンプルに他人から選ばれなかったこと、結局は金と名誉のために他を選んだことを知り虚しくなった。自分だって相手のことを選ばなかったくせに。随分と虫のいい話だとは分かっているけれど。
     だけどやっぱり切なくなるのだ。今までの人生、いつだって九十九点止まりで、本当に欲しい物には手が届かなかった。残念ながらヒーローにも主人公にもなれなかったし、サッカーにおいても一番になれているかどうか、正直怪しい。
     凪のことだってそう。大好きで大切な宝物である凪の、特別な友人ポジションには収まっているけれど、本当の一番にはなれないことを、ずっと前から知っていた。

     凪にはずっと好きな人がいる。それは他のメンバー経由で聞かされていた。ずっと一途に思い続けている相手らしく、レオもよく知ってる人だよ、と聞かされている。自分がよく知る人間かつ凪と共通の知人なんて、サッカー関連かマスコミ関連の人しかいないが、たぶんその中の誰かなのだろう。永遠に知りたくないので、深く追求するつもりはないが。

    「ま、本当に流れてよかったわ! ずっと好きな奴いたし」
    「……は? なにそれ」
    「ちょ、お前、さっきから顔怖いって」
    「レオに好きな人がいるなんて初耳なんだけど」
    「いや、言ってないし」

     お前だ、とは口が裂けても言えない。お前のことを、実は友だち以上に想っていたとは言えないので、笑って誤魔化す。だけど、少しは気にして欲しくて凪の方を見たら、ガクッと肩を落としていた。

    「えっ、そんなに秘密にしてたのがショックなのかよ?」
    「うん、まぁ……」
    「お前だって俺に教えてくんねーじゃん」
    「なにを?」
    「好きな人のこと」

     知りたくないくせに教えて欲しいとは矛盾している。でも、他のメンバーは知っていて、一番凪の近くにいる自分だけが知らされていないのは悔しい。

    「お前の方は順調?」
    「さっきまでは」
    「ハッ、なんだそれ」
    「フリーになってやったーと思ったら速攻フラれた」
    「それは……ご愁傷さま」
    「……お前のせいだよ」

     ずっと、レオのために空けてたのに。
     そう言って、すりすりと左手の薬指を撫でる仕草に、ぽかーんと口を開く。

    「でも、レオには好きな人、いるんだもんね。じゃあ、もう、無理じゃん……」
    「お前、なに言って……」
    「俺のほうがレオのこと、幸せにする自信あるのに……」
    「……なぁ、お前、さっきから自分でなに言ってるか気付いてるか?」
    「んー……、どうだろ……」

     もう眠い、ちかれたー。と呟いて、肩に頭を乗せてくる凪に柄にもなくドキリとする。

     急速に酔いが醒めた。眠気も怠さも何処かへ吹き飛んでしまう。
     なぁ、凪、寝るな! と凪を揺さぶったが、既に目を閉じていた。今度は玲王の方がガクッと肩を落とす。

     凪が起きたら、早急に答え合わせをしなくては。だけど、ひとまず、今はこのまま。

     凪の頭を撫でながら、何もない凪の左手を握る。もしかしたら、次の次ぐらいで自分たちの結婚式になるかもしれない、なんて、そんなことを思いながら。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭💖💖💜💜💜💜💜💜💜💜💜💜❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤💖😭💴❤💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    hjm_shiro

    DOODLE凪玲/【最新】nagi_0506.docx
    ⚠監獄内の設定を少しいじってる

    凪に好きなものを与えて、うまくコントロールしているつもりの玲王と、いやいやそうではないでしょ、って思ってる周りの人たちが思わずツッコんじゃう話。
    プロフィール情報は常に最新の状態にしてください。
    「たまにレオってすげぇなって思うわ」

     千切がぽつりと呟く。千切は本場よろしく油でベチャベチャになった魚――ではなく、さっくりと揚がったフィッシュフライをフォークに突き刺すと美味そうに頬張った。玲王としては特に褒められることをしたつもりはないのだが、ひとまず適当に話を合わせて、そう? と軽く相槌を打つ。

     新英雄大戦がはじまってから、選手たちは各国の棟に振り分けられている。それぞれ微妙に文化が異なり、その違いが色濃く出るのが食堂のメニューだった。基本的には毎日三食、徹底管理された食事が出てくるのだが、それとは別に各国の代表料理も選べるようになっていて、それを目当てに選手たちが棟の間を移動しに来ることもあるほどである。今日はフィッシュ&チップスと……あとはなんだったかな、と思い出しつつ、玲王はナイフでステーキを細かく切った。そうして隣にいる凪の口にフォークを突っ込む。もう一切れ、凪にやろうとフォークにステーキを突き刺したときだった。千切の隣に見知った顔ぶれが座った。
    2587

    related works

    recommended works