朝6時 朝6時。
窓を開け頬を撫でる風はひんやりと冷たく、部屋に差し込む陽射しは柔く穏やかだ。耳触りの良い外音と深みのある朝独特の芳香が眠気を覚まし、休日を演出してくれる。
早起きしたが予定のない日の朝の支度は特別に優雅で、忙しい朝とは対照的に時の流れがゆったりとしている。
「なにしてんの」
舌足らずなとろけた声色が届く。肩からずるずると引き摺られているタオルケットは一緒に暮らすことになった時に2人で買ったものだ。ベッドにいる時は絶対に手放さないしいつも寝るときはそれに顔を埋めている。
そいつのお陰で、かわいいリョータの寝顔にキスは出来ないのだけど。
「リョータおはよう」
今日は朝から予定は無いはずだが、珍しい。
「…んぁふ、おはよ」
くあと大きな欠伸から白く小粒な歯が覗き、細められた瞳が滲む。
差し込む朝の陽をきらきらと反射させて溢れそうなそれを親指で拭ってやると、くすぐったそうに瞳を細め、ぎゅと包み込むように腕の中に迎え入れられた。
「今日早いね」
「そうかぁ?」
「はは、まだ眠い?」
「いーや?」
「もうちょっと寝てくる?」
「だめ」
ぎゅうと強く抱き締められ、肌の匂いと暖かさに口許が緩む。柔くふわついた髪に唇をなんども押し付ければ、擽ったいだろ!と楽しそうでやわらかい笑い声が響いた。
「今日はなにすんの」
「リョータは?」
「エイジが決めて」
朝6時。
いつもより静かな休日の朝が、ゆっくりと時を進め始めた。