定位置 のんびりと時が進む休日、滅多に取れない愛しい時間を過ごすために、リョータは通い慣れた恋人の家に訪れていた。
「ねえ深津サン?」
少し気まずげに身じろぎしながら、おずおずと声をかける。
しばらく会えなかった後の逢瀬では、深津は必ずと言って良いほど、リョータを膝の上に乗せて時間を過ごす。始めの方こそ、筋肉の付いたゴリゴリの男同士でやることじゃ無いと抵抗していたリョータだったが、あまりにも本気の眼でじいと見詰めてくる深津に折れて(恐怖して)、今ではそこが定位置であると言っても過言では無い。
「…あー、そのさァ…」
「はっきり言わないと伝わらないピョン」
ハッキリと縁取られた瞳が所在なさげにゆらゆらと揺蕩う。花も恥じらう乙女の如きその仕草は、リョータのエキゾチックで色気のある容姿とミスマッチで胸の内を煽られる。深津が、膝にちょこんと座るリョータをわざとらしく覗き込めば、じわと頬に薄桃色が滲み出す。
「〜もう!!」
「言いたい事があるなら言えば良い。ピョン。」
するりと、晒されたうなじを指の腹でなぞってやれば、怯えた小動物よろしく肩を震わせる。
本当にこの男は、腹の奥底に押し込めたどろついたものを刺激するのが上手い。
「っふ、だから、」
胸に掌を当て、深く息を吸い、吐き出す。落ち着くための深呼吸ですら愛らしいと思ってしまうのは恋人の欲目なのだろうか。
覚悟ができたのか、よしと小さく呟きゆっくりと顔をあげる。ぬるりと二つの視線が交わり、花唇を解いた。
「…か、固いの、当たってます、ケド」
どんどん小さくなる声に、弛みそうになる口元が抑えきれない。もう何度もその身体を暴いているのに、いつまでも慣れずに恥じらい、欲を煽る。
「聞き取れないピョン。」
「ー!!!!もう!!馬鹿!変態!」
「散々な言われ様で涙が出るピョン」
「ッう、うそ!擦り付けないで!!」
「…」
「ーえ!!深津サン!!」
身を捩り懸命に抵抗する姿が、深津の加虐心を焚き付け、身も心も高揚させる事はおそらく今後も気付くことは出来ないのだろう。
二人しかいない家の中、膝に収まった可愛い恋人を逃がさないよう、柳腰に腕を回し強く抱き寄せた。