個性事故:『ドリームランド』プロむこ勝デク(最終回ネタバレ⚠️)
▼読んでも読まなくてもいい設定。
デクくん達が雄英を卒業して3年目くらい。
○緑谷出久→大学3年生。UAで教師見習い兼体術のアドバイザーしてる。バブの顔しているが体術が鬼強い。月一くらいでかっちゃんに会ってる。(主にかっちゃんが組手の相手になれとか新しい技の客観的意見が欲しいとか色々理由付けてる。その後大体一緒にご飯行くし何ならかっちゃんちに泊まるし自分の部屋にも泊まらせる。)
かっちゃんのことが好きなことに自覚がないが及岩(ここで突然のHQネタ)も驚く超絶信頼関係を築き上げている。
OFAからの無個性なので周りが色々気にしてUAの職員寮で暮らし、大学へ通っている。
休日はエリちゃんとお菓子を作ることも多い。でも器用は方ではないので、よく遊びに来るかっちゃんに度々助けを求める。
○爆豪勝己→プロヒ3年目。ジーニストのとこに所属してる。コツコツとデクの課金してる。(※アーマードスーツ)
色々理由付けてデクくんに会ってるし、動きが鈍ってないか確認してる。でも理由の8割は会いたいだけ。
デクくんに超絶ウルトラハード激重感情を持っているし、自覚してる。超絶信頼関係どころか超絶恋愛関係になりたい思っている。
無防備に自分の家に泊まりに来たり泊まらせたりするデクの寝顔を堪能したり、寝ぼけたデクを抱き抱えるついでに抱きしめたりしているので結構楽しんでいる。
出久はUAの職員寮に住んでいるので、泊まる度に高確率で相澤先生と遭遇しプロヒ的な会話もするが、未だに出久に手を出せていないことがバレバレなので憐みの表情を向けられる。解せない。
なんでもいいが、寮ではヤるなよ、と相澤に言われている。
出久とエリちゃんがお菓子作りをしているのを少し離れたソファから良く眺めている。が、出久に助けを求められることが大半。まんざらでもない。
以下本編↓
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__出久は病院の一室の前に居た。
「悪いね緑谷くん、急に呼び立てて」
扉の前にいたホークスが言う。
「いえ、こんな僕が役に立てるなら」
改めて出久は彼の顔を見て力強く告げる。
それを見てホークスは思う。無個性に戻ろうが何になろうが、彼はやはり根っからの『ヒーロー』なのだと。
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某日_、よく晴れた日にそれは起きた。
大規模な交通事故が起き、ヒーローも大勢出動する事態に発展した。
その中にはプロヒ3年目の勝己を始め、元1Aメンバーも多くいた。
被害者の数はゆうに百を超え、死者2名・重傷者多数となった。
扉が大きく凹んだドアを壊したりしながら要救助者の発見を進めていくヒーロー達。
10人、20人と発見していく度にある異変に気づく。
被害者の殆どが『意識がない』状態で見つかるのだ。
勿論意識を保てないレベルの重傷者も居たが、捻挫レベルや擦り傷レベルの被害者も意識が無い。
極めつけは車に外傷もない、エアバッグも出ていない車の中に居た人達でされ意識が無かった。
念の為、脳の異常を検査するために対光反射も確認したが問題なかった。
彼らはただ『意識が無い』のだ。
結果的に被害者の8割が『意識が無い』状態だった。
この救助活動に参加した勝己は、ある可能性に思い付き、顔を顰めた。
全ての被害者を病院へ収容し、道路上の瓦礫類の撤去を終えたのは事故発生から5時間後だった。
道路も通行止めを解除し通常通りの交通量に戻った。
病院に収容された被害者に関しては、発見と救命処置を終えてしまえば後は医者に全て委ねる他ない。
ヒーロー達は作戦本部として使用していた事故発生場所から1番近い総合病院の駐車場の一角に集まり、現場を取り纏めていた中堅ヒーローの一言が終わり解散となった。
勝己は《ある可能性》を心の中で断定していた。だが現段階では公安が調査中なのだろうと思い、自分が出来ることは一先ずここまでだと考えていた。
共に参加していた瀬呂と上鳴に帰りを促され、歩き出そうとした時、「ダイナマイト、少しいいか」と声をかけられ振り向くと、現在は公安として働くホークスと所長のジーニストが居た。
どうやらまだ自分にはやる事があると察した勝己は瀬呂と上鳴に「先に帰れや」と言ってホークスとジーニストの元へ向かった。
2人の後を着いていく勝己はそのまま本部として使っていた駐車場__ではなくその本体である総合病院の中へ入っていった。
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「さて、爆豪くん。今回の事故についてどう思った?」
勝己はホークス達の後ろを付いて病院内へ入り、そのまま7階へ向かうエレベーターへ乗り込んだ。
7階は意図的に他の階と違う作りになっているのか、病室は勿論あるが会議室が多く配置されていた。
その中のある一室へ通され、椅子へ腰掛けたホークスにそんな事を聞かれた勝己。
「ざっくり3つ。
1、事故の規模の割に被害者が多い。
2、全く外傷がねぇ車が大半。
3、被害者の殆どが意識がネェ。
…どう見ても普通の事故じゃネェのは明白。
《個性事故》か…。」
そう答えれば流石です。と言いそうな顔をしてホークスは笑った。
「御明答。」
そして居住まいを正したホークスは真剣な顔で言い放った。
「協力して欲しいんだ。
君と、
…緑谷くんに。」
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会議室でホークスとジーニストの話を聞き終えた勝己は部屋を出て、廊下の壁に寄りかかりながらスマホからとある人物に通話をかけた。
pururururu…
『はい。どうしたの?この時間に電話なんて珍しいね。』
「お前、この後雄英行く予定だったか?」
『うん、と言っても資料作成の手伝いだけど』
「わぁーった。…出久…、【デク】。今から言う場所に来い。」
『!、うん』
その後必要な情報を伝え、電話を切った。
そのままズルズルと壁にもたれ掛かったまましゃがみ込み、深いため息を吐いた。
「…アイツが諦めようとしてても俺ァ諦めてねぇんだよ…。」
誰も居ない廊下に放った小さな言葉は静寂に吸収されてしまった。
だがそれは熱い決意が籠った、祈りのような声だった。
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「かっちゃん!!」
聞き馴染みしかない声に呼ばれ、そちらを見ればジーンズといつものクソダサい文字Tの上にパーカーを羽織るといったラフな格好で現れた出久が居た。
「来たか。」
病院の夜間診療入口の近くで出久を待っていた勝己はヒーロースーツから私服へ着替えていた。
そのまま二人は夜間診療入口を通り、エレベーターホールへ進む。
エレベーターへ乗り込み、勝己は『7階』と『閉』のボタンを押した。
7階へ到着し、勝己はエレベーターを降りてとある病室を目指して歩き出す。
そのあとを出久が追っていく。
出久は不謹慎ながら興奮していた。
勝己の背中を追う。
ただそれだけなのにこんなにも___。
「デク」
ふと勝己が足を止め、振り返った。
勝己の赤い瞳に出久が映る。
「気張れよ」
彼の真剣な表情とその言葉とその眼差しに潜む信頼に、再び【デク】として勝己の隣に立てる事に高揚する自分を制して、
「うん」と答えた。
「ここだ」
エレベーターから降りてしばらく歩き、とある角に位置する病室の前についた。
そこにはホークスとジーニストの姿があった。
「悪いね緑谷くん、急に呼び立てて」
___話は冒頭の場面へ戻る。
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案内された病室__、ではなくその隣の会議室に先ずは通された。
ホークス・ジーニスト・出久は椅子に座り、勝己は出久の後ろで壁にもたれかかっている。
「さて、改めて礼を言わせて欲しい。急な呼び立てに応じてくれてありがとう」
「いえ、気にしないで下さい!」
ホークスに頭を下げられ、出久は慌てて言った。
「今日君をここへ呼んだのは、ある任務の依頼のためだ。
これから任務の概要を説明するが、それを聞いた上で受けるか受けないか決めて欲しい。」
ジーニストが出久にそう告げる。
出久は一度目を閉じて、目の前に座る二人と後ろから感じる確かな信頼に向かって力強い眼差しで言い放つ。
「受けます。そこに助けを求める人がいるなら、僕はそれに応えたい。」
その答えに少しだけ面食らったホークスとジーニストは直ぐに表情を和らげ出久の後ろにいる勝己を見る。
「だぁーら言っただろ、こいつは必ず受けるって」
その二人の視線に、勝己は不敵な笑みを浮かべてもたれかかっていた壁から背中を離し、出久の隣へ座った。
「さすが幼馴染と言ったところだな」
「本当に爆豪くんの言った通り過ぎてオレ逆に怖いっすよ」
やれやれといった雰囲気で笑う先輩二人の様子に、
「え?え?!かっちゃん何言ったの?!怖いんだけど!!」
と慌てまくる出久。
その横で勝己が「てめぇが言いそうな事言っただけだわボケ!」と泣く子も黙る敵顔で不敵な笑みを浮かべる。
「今緑谷くんが言ったことと同じこと言ったんだよ。多分こう言うって」
「一語一句違わずに」
「え、かっちゃん怖」
「んだとテメェ!!」
ホークスとジーニストはこのままでは出久が爆破されそうな勢いだと察知し、話しの流れを戻す事にした。
「本題に入るよ、緑谷くんはニュースで今日の昼頃に発生した大規模交通事故の事は知っているかな?」
「はい、■■線の道路ですよね。」
「そう、今回の依頼はその事故と関連しているんだ」
「交通事故と、ですか?」
事故で思いつくとなると、事故車両の搬出や被害者達の応急処置と搬送等になるが、それらは既に終えている。
それなのに何故、いま『無個性』の自分が呼ばれているのか。
思い当たった可能性が__。
「交通事故と同時に別の何かが起こっている...?」
出久の思考が思わず声となって漏れた。
「さすがだね、事故の詳細を説明しようか」
「はい」
ホークスとジーニストから事故の詳細について語られた。
その内容は至って普通の事故だった。
ある一点を除いて。
「被害者の大半が意識不明?」
「そう。これは恐らく、いや確信をもって話そう。
本来ならば被害者となり得ない人達まで意識不明になっている。」
「えっ」
「被害がもう少し抑えられたはずの事故で、百人近くの被害者が出ている。可能性として挙げられるのは_ 」
「__交通事故が要因による被害者の個性の暴走...?」
それを聞いたホークスが頷いて言った。
「大正解」
「隣の病室にいるのが暴走を起こしてしまった被害者。
名前は想島 望くん、4歳。今は事故の影響と個性の暴走で目を覚ましていない。」
「4歳...」
あまりの幼さに出久は思わず口に出してしまった。
「親族は母親のみで、その母親は残念ながら今回の交通事故で亡くなってしまったそうだ...。」
「そんなっ」
その子を取り巻く状況が『最悪』としか言いようがなく、悲痛に顔を歪める出久。
その横で勝己はつぶやいた。
「母親の死で暴走、か...。」
「恐らくな。」
4歳ならば個性が発現して暫くしか経っていない。
不安定なその時期に母親を失うという精神的ショックを受ければ暴走もしやすくて当然だった。
続けてジーニストが言う。
「望くんの個性は『夢の島(ドリームランド)』。
本来なら手で触れた人間の意識を自分の夢の中へ連れていく個性だが、暴走で触れていない人間にも伝播し、意識不明の被害者が発生したと思われる。」
「ただ、自分の夢の中へ連れて行くのが通常だそうだが、彼の発現して間もない不安定な個性だと相手の個性因子と反発しあい、自分の夢ではなく夢の中へ連れて行った相手それぞれの個性に関連した夢を見せるらしい。」
「個性に関連した夢?」
「望くんの個性診断をした医師に問い合せたところ、個性関連の夢、というより個性と対話する夢だそうだ」
個性と対話__、OFAの歴代達と会話した時の感じなのだろうかと出久は一人考えた。
「今回の任務は至って単純、望くん自体の夢の中へ入って彼の暴走を止めること。」
「しかし、個性因子を持っている我々が夢の中へ入ったところで因子が反発しあって彼の夢の中へは行けない。
___だから【デク】が適任だという事だ」
それは確かに『無個性』のデクにしか出来ない事だった。
「改めて【ヒーロー・デク】、この任務引き受けてくれるかい?」
ホークス・ジーニスト、そして勝己が出久を見つめる。
「はい、やらせてください」
力強く頷き、そう返事をした。
************
諸々の準備を終え、出久達は会議室から隣の病室__望くんが眠る部屋へ移動した。
ベッドで眠る望くんを確認し、ホークスは再び注意事項を述べる。
「さっきも説明したけど、望くんの個性は『夢を見せる』こと。
その夢の中は我々も想定は出来ないし、解決にどれほど時間を有するかは不明だ。」
「そしてトリガーは『手に触れている』こと。手に触れたらそのまま眠りに入ることになるから心配ないと思うが、くれぐれも手を離すな」
「分かりました」
「そして__【大爆殺神ダイナマイト】も」
ホークスは出久の隣に立つ勝己を見た。
「わーってる」
勝己は真っ直ぐホークスとジーニストを見てそう返事をした。
出久は望くんが眠るベッドの横のある椅子に座り彼の夢の中へ入る体勢を取った。
望くんの手を握ろうとした右手を止め、後ろにいる勝己へ振り向いた。
「かっちゃん」
勝己は何も言わず、ただ出久を見つめた。
「行ってきます」
そう言って出久が拳を突き出せば、
「ヘマすんなよ」
と勝己は出久の拳に自分の拳をコツンと押しあてた。
その表情は言葉とは裏腹に真剣な表情をしていた。
__昔だったらこんな事も出来なかったなぁ…とふと思い、自分達の関係性の変化に少し擽ったさを感じると同時に、勝己がこんなにも真剣に自分の事を思ってくれている事が何よりも出久のやる気を漲らせた。
その思いが勝己に伝わるように、出久も真っ直ぐ勝己を見つめて安心させるように笑った。
それが伝わったのか、勝己は押し当てた拳を離して、出久の手を包み込む様に握って離した。
出久は再び望くんへ向き直り手を握る。
段々と睡魔が襲ってきて、出久の意識はそこで途絶えた。
**************
続きはないよ!!!!!!