しっぽにめろつく悪役令嬢 小松田さんのどんぐり眼があたくしを見つけると、パッと光ってほにゃっと緩んだ。
「おかえりなさぁい!」
腕をぶんぶん振って、ぱたぱた走って出迎えてくれる彼を見て、あたくし思わずほろりと涙を溢してしまったの。
「えっ!泣いてる!?どうしたの、どこか痛いの!?」
あたふたと、どこにもない怪我を探してあたくしの周りをぐるぐる回る彼の、栗色の髪がふわふわ揺れてるのが、かわゆいあの子の尻尾みたいで。
嗚呼。
小松田さんて、──実家で飼ってたバカ犬そっくり!
***
あたくし悪役令嬢だったのよ。
きんきらきんの髪の毛をぐりんぐりんに巻いて、カーテンみたいなスカートにはフリルやレースやリボンが散らばって、足には歩くことなんか考えにもない殺人ヒールのガラスの靴を履いて。
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