一通り発声練習を終え、腰を掛けて一呼吸する。少し動くと汗ばむくらいによく晴れているが、公園の端に置かれたそのベンチは大きな木の影になっていて休憩するのに丁度良かった。
背もたれに寄り掛かって伸びをする。そよ風に青々とした葉が揺れ、キラキラと眩しい木漏れ日が気持ちが良い。
「また撮影に入ったら、こんなふうにのんびりしてられないもんな」
先日久しく帰った部屋には、賑やかな住人が増えていた。自分の部屋はなくなっていたが、悪い連中じゃなくて良かった、と思う。
「アブーにもなんか礼……しなきゃ、な……」
アブーの好きなものはなんだろうか。いつも本を読んでいるから、詳しくないけど、何か本をプレゼントしようか。それとも飯でも行こうか。
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