✂️記念日おめでとうリ傭リパを祝うょへ
「おめでとう、リッパー。めでたい日には、ケーキに歳の数だけ蝋燭を刺すんだろ?」
「もはや火柱上がってますけど……!?」
ゴォオオオオ……という音が似合いそうな勢いの小さなキャンドル達の集団。
とてもあの誕生日用の可愛らしいキャンドルだとは思えない。それがびっしりとケーキに突き刺さっている。
「ちゃんと数ぴったりだ」
バランスが難しかった、と達成感溢れる笑顔で話すナワーブ。
「願い事は決めたか? 吹き消す時に願いを込めるといいらしいぞ」
「もう息では止められそうにない火なんですが……」
それなのに何故それを手で持てるのか、リッパーは燃え盛る炎に圧倒されながら冷や汗をかく。
ある程度距離があるはずなのに熱気がこちらまでやってくる。
「そうか……なら、霧の刃で消せばいいんじゃないか?」
「……ケーキごと吹き飛びますよ」
イベントごとには子どものようにキラキラと目を輝かせて、試合の時の冷静さからは想像出来ない程にはしゃぐナワーブ。
大変可愛らしく思ってしまう程には惚れ込んでいるが、いくらなんでも危ない。
食べ物とイベントを前にすると、ナワーブはいつも無邪気で大胆な一面をみせる。行動力と責任を負える能力があるだけに尚更だ。
それでも焚き火のような、大炎上ケーキは予想外だった。
「わかった。俺が代わりに火を消すから、合図をしたらリッパーは願い事を言ってくれ」
頭を抱えるリッパーを前にしてどうしてそうなったのか、ナワーブは真剣な顔で何故かグルカナイフを身構える。
「え、まさか……そのナイフで消そうとしてます?」
「ロウソクが完全に溶ける前に消す」
まさに有言実行、事前に練習でもしていたのか……元から全てが演芸だったかのように、見事ケーキの火を消した。
ナワーブの手には、切り落としたロウソクの破片も握られており、まさに完璧なパフォーマンス。
そして、成功して嬉しそうに笑顔を見せながら、あれ程燃えていたのに無事だったケーキを差し出す。
「……記念日、おめでとうリッパー」
「……ええ、はい。ありがとうございます……色々と驚かされましたが、スリルがあって刺激的で君は本当に目が離せませんね」
当然困惑はしたが、同時に魅せられていたのも事実。試合でも、こうした日常もリッパーは何度も心を動かされる。
恐れ知らずで危うくて、けれどお茶目で純粋な可愛らしいところがある。
「その、ケーキは……自分で切って、くれ……小さなプレゼントが、入ってる」
まるごと渡されたケーキにも意味があったらしく、恥じる様子を見せるナワーブ。
テーブルの上でケーキを切り開いて、中身を確認すれば小さな容器が隠されていた。
取り出すと、どこかの部屋の鍵だとわかる。
「事前に、部屋をとっておいた……丸一日は、自由にしていいらしい」
聞けば、ナワーブは自ら用意した贈り物の羞恥心を隠すため、あのような演出をしたらしい。
健気さと匂わせる色気、一連のギャップは破壊力が凄まじく、心を掴む。
「……いつもお前には喜ばされてばかりだから、俺も精一杯何かして応えたかったんだ」