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    途綺*

    @7i7_u

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    途綺*

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    🐑🔮//君に届けたい言葉

    🔮のポストへ差出人不明のラブレターが届く話。

    #PsyBorg

    ポストの中に、見慣れない手紙を見つけた。

    中身を読まずともゴミ箱行きと分かるような見慣れた紙や封筒に混じって、濃い紫色の封筒がポストの中でひときわ強く存在を主張している。誰かに手紙を送ると言われた覚えもなく、浮奇は首を傾げつつ封筒を取り上げた。

    住所と宛名はシールに印字されているため筆跡で判断することは難しく、裏側へひっくり返してみても差出人の名前はない。けれど、切手に押されたスタンプの住所には見覚えがあるし、隅っこに小さく特徴的なタトゥーを模したサインが書かれている。加えてサインの横に、これまた特徴的な筆跡で「Love Letter」と綴ってあり、浮奇はもう吹き出さずにはいられなかった。

    ラブレターとは大体の場合は見た目では分からないようにするのが一般的であり、実際に今まで何度か受け取ったものはそうだろうなと予感させる渡し方はされても何の変哲もない封筒だった。つまり浮奇は人生で初めて、ラブレターと名付けられたラブレターを受け取ったことになる。

    遊び心の絶えない彼らしいやり方だと口元を緩めつつ、丁寧にペーパーナイフで封筒を開いた。配信者という立場上、どうしても彼との会話のほとんどはネット上になるため手紙でのやり取りはしたことがない。クイズ配信であったり説明のために写真に添えられた文字は知っているが、彼の書いた字を直接目にすることは初めてで、新鮮な気持ちで白い便箋を取り出した。



    "

    ───親愛なるUki Violeta様

    どうしても伝えたいことがあって手紙を書いたんだが
    そのことを考えるたびに俺は頭を抱えている。

    "



    「えっ、」

    ラブレターと綴られた割に穏やかでない書き出しに、浮奇は一度便箋から視線を離す。不安と期待がごちゃ混ぜになったまま、うろうろと視線を泳がせること数秒。受け取って開いた以上は見なかったことに出来ないし、彼の本当の気持ちであるなら何であろうと受け止めると覚悟を決めて、浮奇は続きへ目を通した。



    "

    素敵な歌を紡ぐ浮奇には安っぽいかもしれないし
    陳腐で使い古された表現になるかもしれない。
    それでも、俺の持てる全ての言葉を尽くそう。

    浮奇に、届けたい言葉がある。

    今までも、これからも、変わらないものを
    浮奇は俺に教えてくれたから。
    これが浮奇の心に届くことを願うよ。

    "



    一枚目の便箋はそこで途切れており、続く言葉は二枚目の便箋へ綴られているようだ。無意識に息を詰めていたことに気づいて、浮奇は目を閉じて深く息を吐き出した。回りくどいやり方を好む彼の遊びには慣れてきたつもりだったが、手紙は会話より先が読めないせいで調子が狂う。小さく震える手で二枚目を手にして、浮奇は息を呑んだ。



    "

    浮奇の声を何に喩えよう。

    例えば、空から舞い降りた天使。
    いや、それにしては少し悪戯好きなところがあるな。

    例えば、ゆらゆら浮かぶクラゲ。
    いや、ただ流されるより自分の道を歩くタイプだろう。

    例えば、よく晴れた日の窓際。
    いや、きっと雨だろうと浮奇の声は心に響く。

    例えば、穏やかに通り過ぎていく風。
    いや、欲望に忠実に強く吹くこともあるな。

    例えば、薄く柔らかなヴェール。
    いや、浮奇の声はもっとはっきりと頭に残る。

    例えば、式場で喜びを告げる鐘の音。
    いや、その音を鳴らすのは浮奇と俺の二人でありたい。

    俺の心にどれほど浮奇の声が響いているのか
    俺の心にどれほど浮奇の心が繋がっているか
    浮奇にも分かるように伝えるのは難しいだろう。

    この世の中にある全ての言葉を掻き集めても
    たったひとつしか当てはまる言葉が見つからない。

    どうか俺の想いが伝わりますように。
    どうか浮奇と心が繋がりますように。

    浮奇に、届けたい言葉がある。


    愛してる

    ───Fulgur Ovid

    "


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    途綺*

    DONE🐑🔮//異体同心

    ある雨の日に、お互いの肩に寄り掛かる話。
    雨の降り続くある日、配信を終えて階下に降りたファルガーは、シンクに重なった食器を見つけた。やや潔癖の気がある浮奇が片付いていないキッチンが好まないのは、自他問わずに認める周知の事実である。遅めの昼食をとったばかりだったにしては妙な時間に置かれているそれに違和感を覚えて、室内を見渡せばソファの上に丸い塊を見つける。

    分厚い雲に覆われて仄暗い空間に響くのは、浮奇と愛犬の寝息だけだった。

    「浮奇」

    名前を呼べばむずがるように顔をクッションへと埋め込む仕草が愛おしくて、小さく息を溢しながらふわふわと触り心地の良い髪を撫でる。

    「浮奇、どこか具合が悪いのか?」

    肩を叩きながら問い掛ければ、眠気に囚われた星空を宿す瞳が軽く開かれる。ぱちぱちと瞬きを繰り返す浮奇に、もう一度同じ言葉をかければ、ゆるく首を横に振られた。何かを訴えるように伸ばされた腕の意図を正確に汲み取ったファルガーは、心配を滲ませた表情を崩せないまま、その身体を抱え起こして自分の方へと凭れ掛からせる。ちょうど良い位置を探すように頭を動かした浮奇は、落ち着く場所を見つけるとファルガーを見つめてきた。
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