逆襲されちゃう話「そんな薄い格好だと風邪を引いてしまうヨ」
そんな言葉と同時に立香の肩にふわりとショールをかけられた。淡いオレンジ色のショールは立香が持っていないタイプの物だ。ショールに触れれば、柔らかくて高価な物だって分かってしまう。
(また買ったんだ)
立香の物ではないそれはいつの間にかモリアーティが買って準備していた物だろう。立香が断っても大人の財力だヨ、受け取って欲しいと結局押し切られてしまう。
(それなら代わりに私の血を飲んでくれたっていいのに)
対価ではないけれど、さりげなく髪を触って首筋を晒してみる。あわよくば……と思っていても彼は騙されてはくれない。首筋にショールがさらにかけられてしまった。
「……お礼なのに」
「……年頃の女の子がそう言うものではないよ」
モリアーティの息を吐く音が聞こえた。立香の肩にあった手が立香の紙に触れた。そしてさっき晒した首筋にモリアーティの指が触れる。爪でひっかくように触れられると、くすぐったいのと同時に変な声が出そうになる。逃げようにも、今日は珍しく逃がすつもりはないモリアーティの腕が立香に巻き付いている。
そうしている間にもモリアーティの指は立香の首筋を触っている。
「ひゃっ」
今度こそ変な声が出てしまった。思わず両手で自分の口を塞ぐ。そんな立香の耳元をモリアーティが顔を寄せた。吐息がさらにくすぐったい。「大人を揶揄ったお仕置きだ……これに懲りて少しは大人しくしておくことだ、立香?」
そう言い残してモリアーティは離れていく。立香を捕まえていた腕も解放している。立香は咄嗟にモリアーティと距離を取って振り返る。口を塞いでいた手は、ぎゅっとショールを握りしめる。
「モリアーティ」
「顔を真っ赤にしている君も可愛らしいヨ」
モリアーティの名前を呼んだだけでその先は続かない。色々脳のキャパシティがオーバーしてしまって顔が熱い。立香のことを見ているモリアーティの表情を見るとさらに熱が上がりそうだ。口元までショールを上げて立香は俯くしか出来なかった。