にゃんこの日の新茶ぐだ♀目が覚めると頭に猫耳、お尻の部分に尻尾が生えている何で誰が予想出来ただろうか。
「えぇえええ……」
マイルーム備え付けの鏡を見て、現状に情けない声が出てしまう。猫耳に毛の色は私の髪色と同じで、意識をするとピクピクと猫耳が動いている。恐る恐ると自分の頭のソレに手を伸ばす。モフっとする毛の感触と、触れられているなという圧迫感。思いたくはないけれど、神経が繋がっているらしい。はぁっともう一度ため息をつく。チラリと視界に入るゆらゆらと揺れるオレンジ色の尻尾。二度目のため息。
マイルームに今日は一日いたい気分だけれど、ふと思い出した。
(あ……せっかくなら堪能しちゃう?)
トラブルもカルデアでは日常だ。この間、カボチャの人形になったときよりも猫耳と猫の尻尾が生えただけで済んでいるからいいのではないだろうか。
(モリアーティに見せちゃおう)
流石に猫耳を恥ずかしいので、ホームズからいつかの時にもらっていた鹿撃ち帽を被る。頭頂部が塞がってゴワゴワとして少し苦しい感じだが、我慢出来る範囲だ。尻尾は……旅先用の黒のマントをとりあえず羽織ってどうにかすることにした。あ、その前にと端末でモリアーティのルームに連絡する。万が一ルームに行ってモリアーティがいなかったらショックだからだ。
「もしもしーモリアーティいる?」
数コール鳴った後に繋がったのでモリアーティの返事も聞かずに私から話す。
『やぁマイガール。どうかしたかな?』
「いや特にないけど、今からそっちに遊びに行っていい?」
『あぁ構わないが、私も用事があるから君のマイルームに』
「そうなの?……じゃあお言葉に甘えて待ってるね」
モリアーティの提案は今の私にとって助かる提案だ。モリアーティの言葉を素直に受け入れてそう答えると、モリアーティが少し待っていてくれたまえと言って通話が終わった。
モリアーティが来る間帽子もマントもつけたままでマイルームをうろうろとしながら待つ。少ししてマイルームにモリアーティがやってきた。今開けるねと扉を開けてモリアーティを迎える。
「やぁマイガー……」
私の姿を見てモリアーティが固まった。そしてすぐに両肩を掴まれて押し込むようにマイルームに戻された。びっくりしてされるがままになっているとそのまま帽子に手を伸ばされた。
(あぁそう言えば、これモリアーティの地雷だった)
猫耳を隠すために丁度いいやと思って被った鹿撃ち帽だったけれど、モリアーティにとって地雷だったことを今思い出した。投げ捨てるように帽子が床に落とされる。再び私の方を見たモリアーティが目を見開いている。
「……にゃん」
とりあえず言いたかったので猫っぽい台詞を言ってみたが、こんなに気まずい中でのにゃんは初めてだ。(にゃんもそんなに言わないけれど)
「朝起きたら耳と尻尾がついていて……モリアーティにそれで見せたくて」
恐る恐る理由も付け加える。マントも外して尻尾も見せる。
「……どう?」
やけになって両手をにぎって猫っぽい仕草をしながら首を横に傾げる。後ろを意識すれば、尻尾も横にフリフリと振ることが出来た。もう一度、にゃんと言うおまけ付きだ。全力で猫になりきる。