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    noa_noah_noa

    アルセノの文章を時々。
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    POIPOI 19

    noa_noah_noa

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    よくわからないけれど⚖️くんが情緒不安定。
    描写はないけど事後なので注意。

    #アルセノ
    haino

    無題。とろとろと溢れていく意識を集めて目を開けると、うっすらと白んだ空がサイドテーブルを照らしていた。
    視界に入った水差しが喉の渇きを思い出させてくれる。
    酷使してしまった喉を潤すべく身体を起こそうとしたが、隣の温もりがそれを阻止している。両腕でがっちりと俺を包み込んでいる男はすっかり夢の世界にいるらしい。

    すう、すうと幼子のような寝息を立てている姿は普段の仏頂面との落差もあって愛らしく感じる。
    作りものめいた彼の髪をくしゃりと撫でれば、見た目よりも柔らかい触感が心地よかった。無意識なのだろう、撫でる手に吸い付くように顔を動かしている。

    かわいい。
    でも、格好いい。

    そんな男が俺のものだなんてそんな贅沢、許されていいのだろうか。

    自分の肩に回されている右手をそっとなぞれば、しっかり長さが整えられた指先。
    何も傷つけないよう長さだけではなくヤスリで磨かれたそれらは彼の美しさをいっそう引き立たせている。

    愛されているのだと、思う。
    大事にされているのだと、思う。

    少し気だるさの残る体は不快感は意識が飛ぶ直前のべたついた不快感は感じられず、むしろ彼に掛けられたしっとりとした布のおかげもあって家を訪れる前よりも肌が生き生きとしている。

    幸せだと、思う。
    この時間が長く続けばいいと、思う。

    けれども同時にこのままでいいのかと考えることもある。


    彼は自分と違って未来がある。
    平穏な人生がある。
    命を繋ぐことだってできる。

    そんな彼の全てを俺が奪ってしまってよいのかと思う。
    だって自分は彼の愛を返すことができない。
    その事実が酷く悔しい。

    生の結末が決まってしまっている自分は彼を幸せになんてしてやれない。
    そもそもこんな役職だ、その前に命を落とすことになる可能性だってある。
    遺された彼は何を思うだろう。きっと自分がいなくなっても元の平穏な生活に戻るだけだ。いや、そんなことはないかもしれない。ああ見えて感情には不器用な男だ。仕事は平常にこなすくせに、俺の遺品を眺めて物思いに耽るかもしれない。
    ああ、やはり遺品なんてものは残すものじゃない。

    せめて子供を残すことができればよかったのに。そうすれば彼は俺を忘れることはないだろう。子を育て慈しむことで悲しみを紛らわすことだって出来るだろう。子の成長を見守ることで人生の安寧を得ることだって出来るに違いない。

    でもそんなことは不可能だ。
    自然の摂理に反している。
    教令を犯せば可能かもしれない。
    でもそんなことは彼は望んでいないし、俺の信念に反する。

    何故今日はこんなに机上の空論ばかりを並べ立てているのだろう。
    わからない。
    なぜ?

    この温もりを手放したくない。
    あの甘く耳にじんわりと溶ける声色を知っているのは自分だけでいい。
    見えぬ古傷まみれの身体を優しく触れるあの感触を忘れたくない。
    彼の全てを知るのは自分だけであればいい。

    嗚呼、何という醜い独占欲!
    傲慢だ、我儘だ、独りよがりにも程がある!


    先ほどより更に溶けた脳内は一つ一つの思考を組み立てかけては崩してを繰り返して形を保たせてくれはしない。

    ほんの少しできた腕の隙間から抜け出して、ベッド脇のくずかごに捨てられた口のきっちり縛られたゴムを取り出して、思い切り噛みちぎる。

    どろり、

    白濁が口内を侵す。

    「ふふっ、ふっ……ははは、っ、……ぅ、あぁ、ゔァ、………ひっ、」


    ただ、生命が死んだだけだった。
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    noa_noah_noa

    CAN’T MAKE夏の初め、フォロワーさん達とマルチ中に「⚖️にキスしてほしくて溺れたフリをする🌱」の話で盛り上がり、私なりに書いてみた結果、惨敗しました。
    もし覚えていたらこっそり読んでください。もう夏が終わってしまいますが。

    ※フォロワーさんとのやり取りで出てきた台詞を引用・加筆して使用しております。

    ※水場でふざけるのは大変危険です。よいこは絶対にやらないでください。
    通り雨通り雨


     キスがほしい。
     恋人からのキスが欲しい。

     突如脳内を駆け巡った欲望は多忙の恋人と規則的な己の休暇を無断で申請させた。恋人に事後報告をすると、当然こっぴどく叱られた。けれども、その休暇を利用して稲妻旅行をしようと誘えば満更でもなさそうに首を縦に振ったので胸を撫で下ろした。まず、第一段階完了。

     稲妻までの道中、セノはいつものように気に入りのカードを見比べては新たなデッキを構築したかと思えば、『召喚王』を鞄から取り出してすっかり癖がついてしまっているページを開き、この場面の主人公の台詞がかっこいいと俺に教えてくれた。もう何百回も見ている光景だというのに瞳を爛々と輝かせる恋人はいつ見てもかわいい。手元の書物に視線を落としながら相槌を打っていると離島に着くのはあっという間だった。第二段階完了。
    2223

    noa_noah_noa

    REHABILI理科室の恋人。(https://poipiku.com/7286563/8958806.html)と同じ世界線のお話です。モブがひたすらおしゃべりしているだけ。それでも平気な人だけどうぞ。
    とある司書の話とある司書の話


     きれいな男の子がいたの。
    戦前からの歴史ある学校だから、当時の貴重な資料もたくさんあって。だから学校だけじゃ管理が不安だって、外から職員も雇っていたの。だから私もあそこで働いていたのよ。
     でも生徒さんたちはそういう古いものなんて興味がないでしょう?あのくらいの年頃の娘さんたちは図書館なんてほとんど寄り付かなくてね。授業の一環だったり、係の仕事だったり。それ以外なら自習室代わりに使う子は少しいたくらい。利用者のほとんどは一般開放日の地域住民よ。それもうんと年上のね。

     だから今でも覚えているのかもしれないわ。
    毎週火曜日と木曜日に来ていたの。一般利用ができるのがその2日だったから。毎回きっかり16時半に来てたの。チェックのネクタイに紺色のブレザーを着た男の子。あそこから自転車で20分くらいの学校の制服だったわ。え?今は駅が出来たの?あんな住宅街の中に?そこからだったら1駅の場所にある学校ね。ええ、その学校よ。中高一貫の名門校。
    2603

    noa_noah_noa

    REHABILI赤い目の🌱が書きたくて、プロット作って放置してたら違うものになってしまった。
    リハビリ
    少しドメスティックでバイオレンス。
    文章は書き続けないと鈍る。
    green eyedだよねえ、本当は。
    あかい目のかいぶつサマあかい目のかいぶつサマ





    ※赤い目のアルハイゼンを一度でいいから書いてみたかったけれど、何だかいつも通り変なものになってしまった。何でもありな人向け。








    あ、

     振りかざされた拳に気付いたのと同時に左頬がカッと熱くなる。途端、視界も急変。
    薄暗い室内でぼんやりと浮かぶ白い天井と、ぎろりと光る赤い、瞳。

    またか、

     自身の下腹部に響く殴打音を聞きながら、己の仕事が荒事を解決することでよかったと思う。そうでなければ無意識に受け身をとることだってできなかっただろうし、急所を気付かれないように避けるなんて芸当できなかったと思うから。

    「考え事とはいいご身分だな、セノ」

     眼前の男にはバレていたらしい。赤い目がぎりりと細くなったかと思えば、両手が首元にかかる。感情に任せて絞めあげられてしまえば、ぱくぱくと口を開けることしかできなくなる。止めさせなければならないのはわかっている。自分の右手を上げかけて、止めた。
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     きれいな男の子がいたの。
    戦前からの歴史ある学校だから、当時の貴重な資料もたくさんあって。だから学校だけじゃ管理が不安だって、外から職員も雇っていたの。だから私もあそこで働いていたのよ。
     でも生徒さんたちはそういう古いものなんて興味がないでしょう?あのくらいの年頃の娘さんたちは図書館なんてほとんど寄り付かなくてね。授業の一環だったり、係の仕事だったり。それ以外なら自習室代わりに使う子は少しいたくらい。利用者のほとんどは一般開放日の地域住民よ。それもうんと年上のね。

     だから今でも覚えているのかもしれないわ。
    毎週火曜日と木曜日に来ていたの。一般利用ができるのがその2日だったから。毎回きっかり16時半に来てたの。チェックのネクタイに紺色のブレザーを着た男の子。あそこから自転車で20分くらいの学校の制服だったわ。え?今は駅が出来たの?あんな住宅街の中に?そこからだったら1駅の場所にある学校ね。ええ、その学校よ。中高一貫の名門校。
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