ニャンとワンだふる! 犬の亜人のおまわりさん・サニーが足繁く通っているのは、猫又ハーフの店長さんがネコ達と働いているその名もnekoCAFE。可愛いネコ達のオモテナシと、美味しい料理は勿論のこと、時折並ぶ店長さんお手製のシュガークッキーとブロンド・ブラウニーはあっという間に売り切れてしまう程の人気ぶり。一度運良く買うことが出来たもののそれ以降は機会に恵まれず、早々にかかるレジ前の完売札に今日もぐっと唸り声を堪えていた。
オフの日であれば店内でゆっくり珈琲と食事を楽しみたいところだが、勤務のある日はやはりテイクアウト利用にはなる。定番はサンドイッチにブレンド。猫の顔型食パンで作る一品は可愛い見た目の割にボリューミーだ。
そしていつものように注文を終え、受け取り口で待っていると店の奥で交わされている会話をケモノの耳がしっかりと拾った。
『店長、おまわりさん来てるよ!』
『え、ほんと?』
ここまではっきり言われてはさすがに自分のことだと分かる。何かしたか?声の感じは悪いものではないけれど。すると、テイクアウト用の紙袋を手に出てきたのは会話の流れ通りの人物だった。
「お待たせしました、いつもご利用ありがとうございます」
接客用と分かっていてもその笑顔は可愛くて、それをなんの心構えもなく間近で見てしまったものだから咄嗟に返す言葉も浮かばない。動揺しながらもなんとか差し出された紙袋を受け取ると、サニーはぎこちなく会釈をして足早に店を出ていく。失敗した、もっと気の利いた対応が出来ないものか。自己嫌悪のあまりしょんぼりと耳を平らにして交番に戻ったサニーだったが、そこで紙袋の中に注文した覚えのないものが入っていることに気付いた。
透明なフィルムに黄色いリボンで封をしてあるそれは完売しているはずのお菓子の詰め合わせ。入れ間違いか?この分の代金を支払った覚えはない。追加で払って手に入るなら喜んで買わせてもらいたいが…
そんなことを考えていると、紙袋にまだ何か残っているのが目に入る。そこにあったのは一枚のメッセージカード。入れ間違いの線も残っている為、書かれた内容を見るのには少し躊躇したがそれは杞憂だった。
『先日はうちの子がお世話になりました。良かったら食べてください🐾』
これには心当たりがある。先日、nekoCAFEのスタッフが道に迷っているところを保護して店まで送り届けたのだ。どうやら初めて向かった配達先からの帰り道が分からなくなっていたらしい。その際に店長は不在にしていたが、報告を受けてお礼の品を持たせてくれたといったところか。
あまりこういうのは良くないのだけど、後日ちゃんと代金を支払えば問題ない…か?
しかし、話はそこで終わらない。なんの気無しに確認したカードの裏面には10文字程度のアルファベットと、それとは別にふたつのハイフンで区切られた11桁の数字。
さすがに何が書かれているか分からないサニーではなかったが、あまりのことに頭がついていかず、その日の晩はメーセージカードを前に正座してこれからどうすべきかを夜通し悩むことになるのだった。