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    フィンチ

    @canaria_finch

    🔗🎭を生産したい妄想垢

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    フィンチ

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    ワニ🔗とネコ🎭の異種族間恋愛におけるすったもんだ
    ※🔮視点

    #Sonnyban
    sonnyban

    Every Jack has his Jill とある島には少し変わった動物達が住んでいる。ネギが好きなワニに、鎧兜を身に着けた犬、うさぎの姿をした月の使いなんて変わり種も。猫の妖精のアルバーンもそのうちの一匹で、楽しそうによく笑うのが印象的な彼だが今は眠たげに目元を擦って今にも瞼が落ちてしまいそうだ。
    「いらっしゃいアルビー…って、随分眠そうだけど大丈夫?」
    「んー……実はそのことで浮奇に相談があって」
     オヤツ時も近いということで先日購入した新しい豆で珈琲でも淹れようと考えていた浮奇だが、訪ねてきたアルバーンの様子がこれでは味を楽しむといった雰囲気でもない。勿論、話を聞くつもりはあるがこれは休ませた方が良さそうだと判断すると、来客時に案内するテーブルにではなくソファへと座るよう促して自らもまた隣に腰を下ろした。少し袖を引くだけでゆらゆらと今にも舟を漕ぎ出しそうな身体は簡単に寄りかかってくる。それを浮奇が自慢の毛並みでぽふりと受け止めると、アルバーンは眠たげな声でぽつりぽつりと話し出した。
    「最近さ、サニーの様子がおかしいんだ」
     思い浮かんだのは一匹のワニの姿。二匹の仲の良さは周知の事実だが、様子がおかしいとなれば浮奇にはひとつ心当たりがある。薄々そうじゃないかとは思っていたが、最近やっとサニーがアルバーンへの恋心を自覚したらしいのだ。それで少し空気がぎこちなくなってしまい悩んでいるとか?と、恋バナへの流れを期待した浮奇だったがどうやらそうではないらしい。
    「んっと…、僕んちのそばに川が流れてるの分かる…?」
     確かに、アルバーンの家は川沿いに建っている。そうだねと相槌を打って先を促すと、続けて聞こえてきたのは耳を疑う内容のものだった。
    「理由は分からないんだけどね、サニーが…なんか……毎朝川に入って唸ったり…バシャバシャ暴れてるんだよね」
     その予想外過ぎる行動に浮奇はピシリと固まる。当然、困り果てたように話す声からは恋の気配など微塵も感じない。
     だが、そんな奇行に驚きつつも身体が濡れているからうちで拭いていくようにアルバーンは声をかけたそうだ。なんだかよく分からないけど、見てしまったからにはと。そしてサニーもそれに頷き、タオルを借りて身体を拭いた後はそのままコーヒーを振る舞っていつものように喋ってしばらくすると帰っていく。それがかれこれ一週間ほど続いていて、そのうえ早朝にやってくるものだから宵っ張りのアルバーンは結果的に睡眠時間が削られてしまってのこの現状。一通り聞き終えた浮奇は溜め息のひとつも吐きたい気分だったが、くぁ、と欠伸を噛み殺すアルバーンを前にそれをするのも憚られた。
    「どうして、あんなことしてるんだろ………、何か…理由があると……思う…んだけ、ど……」
     いよいよ覚束なくなってきた口振りにとりあえず少し眠っていくようにと声をかけると、うん、と素直な返事の後に寄りかかる身体の重みが増して、間もなくすうすうと寝息が聞こえ始める。結局、相談にのるというよりは出来たのは話を聞くことだけ。とはいえ、あまり弱った姿を見せることのない猫の子のこんな姿を見てしまってはこのまま傍観してもいられない。なんとか解決策を見出さなければ。そう決意すると、浮奇はぽふぽふとアルバーンの頭を撫でながらこの後どう動いたものか思案し始めた。





     小一時間ほど眠っていたアルバーンが帰っていくのを見送ると、浮奇はさっそく動き出す。当事者であるサニーに直接あたるのも考えたが、あまり直接的に首を突っ込みすぎるのも良くないかと思いひとまずは共通の友であるファルガーを訪ねることに。彼ならばサニーの抱く恋心も知っているから、変にオブラートに包まずアルバーンの置かれている状況についても話すことが出来るだろう。しかし、ノックに応じて顔を出した彼の様子を見るからにどうやらタイミングの悪い訪問となってしまったようだ。
    「すまん浮奇、今来客中でな」
     入って良いようであれば大きく開けられるドアが、今は中の様子が伺えないほど薄く開いている。アポなしで来てしまったし、こればっかりは仕方がない。けれど、そう悠長にしていられる状況でもないからと浮奇は要件だけは伝えておこうと口を開く。
    「いいんだ、俺も急に来たし。ただ、後でで構わないから時間をもらえないかな?アルビーのことで話があるんだ」
    「あるばニャンの?」
     すると、返ってきたのは少しばかり気にかかる反応。加えて室内からも何やら物音がし、振り向いて中を確認したファルガーは何とも言えない表情を浮かべたかと思うと、改めて浮奇に向き直り問いかけてきた。
    「率直に聞くが、それはサニーが関係していることか?」
     その言葉で室内に誰がいるのかおおよそ見当がつく。それなら話は早いと浮奇が頷くと、ファルガーは頭が痛いと言わんばかりにこめかみを押さえ、それから小さく息を吐くと入ってくれとドアを開いた。
     お邪魔しますと言いながら中に入ると、見慣れた室内でソファに座っているのは所在無さ気な様子のワニ、もといサニー。そしてその隣にファルガーが腰を下ろすと、向かいのソファに座るよう促される。まるで三者面談みたいな配置だと思いながら二匹と向かい合うように浮奇が座ると、最初に口を開いたのはファルガーだった。
    「この状況で聞くのもなんだが、話してもいいか?」
     その問いが向かう先はサニー。
    「……いいよ、浮奇なら」
     そのやり取りから、おそらくアルバーンが浮奇にしたように、サニーもファルガーに何か相談事を持ちかけていたらしいことを察する。アルバーンが関係しているならひとつしか心当たりはないのだが、それならあんなことになるだろうか。しかし、そうなってしまった理由にもこの後の発言ですぐに見当がついた。
    「サニーからあるばニャンに意識してもらうにはどうしたらいいか相談を受けてな。分かりやすくアプローチをしてはどうかと言っていたんだがあまりいい反応が返ってこないらしいんだ」
     これは、もしかしなくてもあの行動がファルガーの言うアプローチなのだと思っていいだろう。問題はその内容を彼が知っているのかだが、この口振りからして知らないと思った方がいい。そう判断した浮奇はそっかと相槌を打つとにっこり笑って言葉を続けた。
    「俺もアルビーから相談を受けててね、最近サニーが家の傍の川に入って唸り声をあげてるんだって……それも毎朝、ね」
     それを聞いたファルガーは絶句していたが、当のサニーは照れくさそうにするばかり。予想通り過ぎる反応に浮奇は溜め息を吐くと、ジトりと目を据わらせてサニー、と呼びかける。
    「はっきり言わせてもらうけど、君のしたことは誰にでも伝わるものじゃないよ」
     何を言われているか分からないと言わんばかりにきょとんと瞬きをするサニー。しかし、ファルガーに気まずげに首を左右に振られたことで事態を察知したのかみるみるうちに顔を青ざめさせた。さすがに好きな相手を寝不足にまでさせていたと知ってしまえば落ち込むどころの話ではないのでそこは伏せたが、それでもサニーの動揺っぷりは相当なもので、誰に問うでもなくどうしたらどうしたらと呟き続ける姿は目も当てられない。とはいえこのままにしていても話が進まないからと、浮奇は勢いよくテーブルに両手を突いて立ち上がると異論は認めないとばかりに口を開いた。
    「とにかく、もう朝に行ったりしないこと」
     これだけは絶対だ。柔らかな毛に覆われた手は大きな音など立ててはくれなかったが、いつになく強い語気で話す浮奇に気圧されてかサニーは驚いたように目を丸くしてこくこくと頷く。それに対してよろしいと腕組みをすると、ぽふりと再びソファに腰を下ろした。
    「あとは、プレゼントでも渡すところから始めたらどう?アルビーの好きなものくらい知ってるだろ」
     勿論、昼間にねと釘を刺すことも忘れずに。そのアドバイスに神妙な面持ちで分かったと答えると、サニーは頭の中でのプレゼント選びに忙しいのか大人しく帰っていった。さすがにプレゼントは妙な方向にはいかないはず。そうてあってほしい。そんな願いを胸に後ろ姿を見送り、見えなくなったところでファルガーと浮奇はようやく一息つき顔を見合わせた。
    「まさかサニーがあんなことをしていたとはな、来てくれて助かった」
    「俺だってアルビーに聞いただけだったらアレが求愛行動なんて思いもしなかったよ」
     苦笑交じりにそう口にするファルガーに、浮奇は少々オーバーリアクション気味に肩を竦めてみせる。強めに注意してしまったが悪気があってのことではないし、そもそもワニの行動としてはなんらおかしいことはない。ただ、相手が猫だから伝わらなかっただけで。改めて異種族間恋愛の難しさを実感していた浮奇だったが、とりあえずは様子見だなとファルガーが零した言葉にそうだねと同意した。そして、ちらりと隣に立つ友の動向を窺う。
     ひとまずの目的は達成した訳だけれど――
    「ところでうきき、いいボトルが手に入ったんだがこの後の予定は?」
     その視線に気付いたのか否か、ファルガーは家のドアを開いて問いかけてくる。勿論、その誘いに乗らない手はない。
    「いいね、それならキッチンを借りようかな」
     材料さえ揃っているなら、アルコールにあうチキン料理を用意しよう。視線をかわし笑いあうと、二匹は明かり灯る家の中へと戻っていった。





     それから数日後のこと。雑貨屋に赴いた浮奇は、偶然居合わせたアルバーンから嬉しそうに報告を受けていた。まず、あの早朝の奇妙な行動がなくなり睡眠不足が解消されつつあること。加えて、サニーから薔薇の花をプレゼントされたから花瓶を買いにきたのだと。笑顔の印象が強い猫の子ではあるが、今日は特別嬉しそうに見える。その様子に思わず頬を緩ませていると、アルバーンは少しそわそわとしながらまた相談事があるのだと口にした。前回とは全く状況が違うものだから浮奇としてもその相談には安心してのることが出来る。何より、今度こそ恋バナが聞けるのでは?ついついそんな期待を抱いてしまうが、続けて告げられた内容はあながち遠いものではなかった。
    「枯れちゃってそれで終わりってのも寂しいからさ、何か残しておけるいい方法がないかと思って」
     浮奇は勿論と頷くと、パッと思いついた内容を抑えきれずに話し出す。
    「ポプリにしてもいいけど、香りが気になるようなら押し花にしてみてもいいかもね。あとはそうだな、なるべくそのままの形で残しておくっていうならプリザーブドフラワーって手もあるけど…。俺の方でも少し調べておくよ」
     そのあまりの乗り気っぷりにアルバーンはきょとりと瞬きを繰り返したものの、すぐにありがとうと表情を綻ばせた。それからプレゼントされた薔薇のことを聞きながら少し花瓶選びにも付き合って、店を出たところでいつにしようか日取りも決めて。当初の目的である食器もいいデザインのものを見つけることが出来てとご満悦で帰路についていた浮奇だったが、正面から歩いてきた二人連れと目が合いその表情のままで固まった。
     やや気まずげに薄ら笑いで目を逸らしたファルガーとは対称的に、パッと目を輝かせて近寄ってくるサニー。丁度今行こうとしてたんだ、また相談したいことがあってと話すのをうんうんと聞きながらすすっとファルガーの隣に移動し、浮奇はどういうことだと抗議の肘打ちをお見舞いする。
     相談にのりたくないとまでは言わないが既に嫌な予感がしていた。そうでなければこんな分かりやすく後ろめたさを表現するものか。
    「うきき、すまん、落ち着いてくれ。俺では料理の相談にはのれんから仕方なく、だな」
    「料理の…?」
     そこまで聞いてぴたりと浮奇の動きが止まる。料理の相談というなら仕方がない。サニーの様子からしてアルバーンに関することなのは確実だけれど、手料理でも振る舞おうとしているとか?内容の見当は全くもって付かないが、どう転がっていくか分かったものではないからいずれにせよ場所は変えた方がいいだろう。
    「それじゃあ立ったままというのもなんだから、うちで話そうか」
     そう口にした浮奇の瞳は助かるよと照れくさそうに笑うサニーに向けているものの、その手はぽふりとファルガーの肩に乗せられていた。抵抗がないあたりついてくるつもりはあるらしい。それならまあまあ、よしとしよう。
     そんな調子で三匹は連れ立って浮奇の家へ。常ならばお客様にはソファに座って待ってもらって飲み物の用意でもするところだが、相談の内容次第では時間が惜しいかもしれないと浮奇はそれをせずにソファの空いた位置に自らも腰を下ろす。その位置が前回同様に三者面談じみていることにはもう何も言うまい。そうして早速本題に入ろうとしたが、あることを思い出した浮奇はそういえばと別の話題から切り出した。
    「さっきアルビーに会ったんだけど、サニーから薔薇を貰ったって喜んでたよ」
     その場でお礼は言われているだろうが、第三者からその様子を聞くのはまた違った喜びがある。そして、それを聞いたサニーは嬉しそうにそわそわしていたかと思うと、実はそのことでの相談なんだと言い出した。
     その時点で浮奇はおやと内心首を傾げる。おかしい、今はアルバーンが薔薇のプレゼントを喜んでいたという話をしていたはずだ。だが、サニーからの相談は料理に関することと聞いている。この食い違いはどういうことだろう。ファルガーが何か思い違いをしていたとか?それにしては、その場にいたサニーからは何も訂正が入らなかったし。同様の疑問をファルガーも抱いたのか、目が合うと小さく頭を振られる。これは、もしかしなくてもまた…
     二匹がそんな一抹の不安を覚えていると、それを裏付けるようにサニーがもじもじとしながら口を開いた。
    「もうそろそろ枯れてくる頃だろ?だから、その前に薔薇を美味しく食べれる良いレシピがないか聞きたくて」
     一瞬の沈黙。いや、咄嗟に口にできる言葉がなかったとも言える。そして告げられた内容を理解した浮奇はにっこりと笑みを浮かべ、それを見たファルガーは両手で顔を覆って項垂れた。
    「薔薇の『好き』は観賞用の『好き』だよ!!」





     結局その後、サニーは食用の薔薇と観賞用の薔薇の違いを浮奇にきっちりと説明されしゅんと萎れていた。前回に引き続き悪気がないだけに少しばかり可哀想にも思えるが、食用ではない薔薇を食べるのはやはりよろしくないのでそこはきちんと説明しておかなければ。その代わり、手料理を食べさせたいのならとアルバーンの好みそうな料理のレシピをいくつかピックアップして。材料さえすぐに揃うならそのままキッチンで直接指導しても良かったのだが、自分でやってみるというサニーの言葉を受けてその日はレシピは渡すだけでお開きとなった。
     また何か予想もしないことが起きるのではと数日間は気が気でなかったが、思いの外日々は平穏に過ぎていく。その間にアルバーンの家を訪ねて例の薔薇でドライポプリを作ったりもしていたが、会う度に楽し気にしていて特に困った素振りも見られない。花びらをガクから外して乾燥させるのに一週間。更に香りを熟成させる為に瓶の中でねかせるのに一月ほど。そんな調子で瞬く間に時は過ぎていき、そろそろ完成かという頃合いで浮奇はアルバーンの家に向かっていた。
     それはほんのお思い付きからの行動。そもそも出かける予定ではあったし、そのついでに様子をみておいてもいいかといった程度で、来客があったり多忙のようであれば日を改めようと軽く考えてのことだった。だから、そこにアルバーンだけではなくサニーの姿まであるとは思わないし、ましてやそのサニーが川に入っているとも普通は思わない。なんなら、そのあまりにも聞き覚えのあり過ぎる状況に浮奇は思わず身構えたほど。お邪魔にもなるし、見つからないうちに離れておこうか。そうしてこっそりと距離を取ろうとした浮奇だったが、不意にアルバーンの視線がこちらを向きそれは叶わなかった。
    「あ、うーき!」
     にこにこと笑って手を振られてしまえば応えないわけにもいかず、浮奇は軽く手を上げ返すとゆったりとした歩調で歩み寄る。別件でも用があったのは事実なので訪ねようと思っていたことは伏せて、あくまでも通りすがりの顔で。
    「ご機嫌だね、アルビー」
     そう口にしてちらと後方に見えるサニーに気付いた素振りを見せると、アルバーンはうんと頷き嬉しそうに口を開いた。
    「サニーがごはん作ってくれるんだ」
     それで何故川に…?という疑問への答えは、遠くに見えるワニの姿を注視してみるとすぐに出る。川の中で仁王立ちしていたかと思えば、右手を振り上げ数秒後に勢いよく振り下ろした。そう、まるで熊のように。そして自らの手で捕らえた獲物―サーモンを両手で掲げると嬉しそうにこちらに、否、アルバーンに見せていた。
     確かにサーモンを使った料理のレシピも渡しはしたけれど、まさかの現地調達。サニーの予想しようのない行動に呆気に取られていた浮奇だったが、すぐ近くで聞こえた声に更に目を見張ることになる。
    「んはは、かーわい」
     誰に向けての言葉かは明らか。ここ最近はサニーの行動の突飛さに振りまわれてばかりだったけれど、あの姿を見てこう言えるのだからアルバーンも相当だ。なんだ、お似合いなんじゃないか。気を揉む必要なんて始めからなかったのだと、溜め息のひとつも出てしまう。まあ、納まるところに納まったのなら何よりだけれど。
     あまり長居するのも野暮かと浮奇がアルビーと呼びかけると、きょとりと猫の子が振り返る。
    「今度話聞かせてよ?」
     これ以上首を突っ込む気はないが、恋バナはやはり聞きたいししたい。そんな浮奇からの問いかけへの答えは、楽し気に目を細めた悪戯っ子のような笑みだった。
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    フィンチ

    DONEふわっとしたMHパロ、ガノレク🔗×アイノレー🎭の馴れ初め
    仲良くなれるかな? とある村のアイルーキッチンで働き始めたアルバーンには悩みがあった。仕事自体は新入りということもあって覚えることも多く大変ではあるが違り甲斐がある。コック長は厳しくも懐の大きいアイルーであるし、手が足りてないようだと働き口として紹介してれたギルドの職員も何かにつけて気にかけてくれている。それならばいったい何が彼を悩ませているのかというと、その理由は常連客であるハンターの連れているオトモにあった。
    「いらっしゃいニャせ!ご注文おうかがいしますニャ」
    「おっ、今日も元気に注文取りしてるなアルバにゃん」
    「いいからとっとと注文するニャ」
     軽口を叩きながらにっこりと愛想の良い笑みを浮かべてハンターを見上げるアルバーンは、傍らに控えているガルクからの視線にとにかく気付かない振りをする。そう、このガルクはやってくるとずっとアルバーンを見てくるのだ。しかも、目が合っても全く逸らさない。ガルクの言葉など分からないから当然会話も成立しない。初めて気付いた時には驚きつつもにこりと笑いかけてみたのだが何か反応がある訳でもなく、それはそれは気まずい思いをした。だからそれ以来、気付かない振りをして相手の出方を窺っているのだが、今日も変わらずその視線はアルバーンを追っているようだった。
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