一緒にご飯。サンソンリリイのいる世界
「すみません、マスター。」
「いいよ、大丈夫。っていうかどっちも可愛いな?」
そういう立香の言葉にサンソンは苦笑いをうかべる。今二人の間にはサンソンそっくりの小さい子供がいる。カルデアにはリリィと言われる存在がいる。彼もそのうちの一人だ。召喚した当時は怯えて近寄ることすらもできなかったが今ではすっかり二人に懐いた。この時期のサンソンは虐められ自分の空に閉じこもっていたんだとか。それが原因なのかどこか小さい彼は表情に乏しい。
時計を見ればもうそろそろ夕食の時間だ。今日の献立はなんだろう。彼の口に合えばいいが。そんなこんなで食堂に辿り着き見た光景は回転寿司だった。おかしい、つい最近までは普通の食堂だったはずなのに。
「一体何が…」
「あぁ、これには深いわけがあってね、その子のわがままだよ」
食堂に来た藤丸たちを見て近寄ってきたダ・ヴィンチはそう言うと幼いサンソンにウィンクをする。
「どういうこと?」
「この子がね、回転寿司を食べたいって言ったんだよ。おそらく何かで見たんだろうね。」
幼いサンソンからしたら自分の国には無いもの、いわゆる未知のもの。そういや大人のサンソンも日本食に興味を示してなかったか。これはもしやそういうことだろうか。小さくてもサンソンはサンソンらしい。
好きな人の好きな物は知りたいのだ。
小さいサンソンは大きい自分とマスターを見て数日前の会話を思い出す。
「マスターのとこのご飯でお寿司がありますよね、あれはどんなものなのですか?」
「あれはそうだな、見たまんまだ」
「いつか食べてみたいです」
そんな話を聞いて自分を食べてみたくなったのだ。ここは暖かくて優しいから。手を伸ばせば握ってくれる人がいる。あの時得られなかったものがここにある。
「ありがとう、マスター」
幼いサンソンはそっと藤丸に手をのばしハグをする。今はこれが自分に出来る精一杯。そして思い出す召喚される間際の声。
「おいで、俺のところに。大丈夫、ここは暖かくて優しいから」