Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji ❤ 🌓 💋 🌹
    POIPOI 188

    syako_kmt

    ☆quiet follow

    むざこく30本ノック
    22日目

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    銀座 銀座四丁目の交差点に立ち、時計台を眺めていた。
    「あの時計塔が出来て90年になるのだな」
     ライトアップされた建物を見上げ、無惨が呟いた。
    「早いものですね……当時の元号は……」
    「明治だな。まぁ、今の時計塔は昭和になって出来た二代目だ」
     無惨はボルサリーノのフェルトハットを被り直し、黒死牟と共に夜の銀座を歩いた。
    「大正くらいになると、夜も随分過ごしやすくなったと思ったが、近代化が進むにつれ、昼に拘る理由がなくなるほどに、夜は明るく、賑やかになったな」
    「そうですね……この銀座に関しては……夜の方が華やかな場所もございますね……」
     無惨はこの銀座という街を甚く気に入っていた。流行りのものが何でも手に入り、高級感があり、成熟した街だとよく話していた。
     着飾ることが好きな無惨とは反対に、頑なに洋装を嫌がった黒死牟だが、第二次世界大戦が終わった頃より無惨にしつこく言われ、洋装で、髪も短く整えた。
    「お前は元々目を見張るほどの美男子なのだから、何を着ても似合うのだ」
     黒死牟を大きな着せ替え人形とでも思っているのか、無惨は嬉しそうに何着も服を買い与えた。大柄な黒死牟に合う服は既製品では少ない。その為、無惨は自分のスーツを仕立てる時に、黒死牟のスーツも共に仕立てるよう注文していた。
     洋装に合わせた所作も身に着けたので、これで外出しやすくなると思ったが、無惨と黒死牟のずば抜けて優れた容姿は人の目を引き、かえって出歩きづらくなってしまった。そして、今ではスマートフォンの普及で一億総カメラマンの状態だ。何度もSNSに載せられ、後をつけられることなど日常茶飯事で、モデルにスカウトされることもしばしばあった。
     人の目があるせいで以前のように動きが制限されるという不便さがあったが、時代の流れに合わせて何とでも姿を変えることが出来る無惨は、一瞬でその環境に馴染んでしまった。
     今も時計塔を二人で眺めているだけで、何度も声を掛けられている。無表情で無言の黒死牟の横で、無惨は愛想笑いを浮かべ丁寧に応対している。「神対応」などと言われ、苦笑いすることもあった。
     そんな騒がしい人としての日々が無惨は嫌いではなかった。
    「私たちは“人”に見えるのだな」
     あの時計塔よりも長い年月、それは無惨の口癖のようになっていた。時代の移り変わりと共に姿を変え、その場に自然に馴染むことに拘り続けた無惨にとって、90年、変わらずにそこにある時計塔への特別な思いが何かあるのかもしれない。
     しかし、人の世が無惨の見る「夢」だとすれば、供をする黒死牟は目を逸らせない「現実」だ。
     こうして夜の街に繰り出す理由は散歩だけではない。
    「無惨様……そろそろ……“食材”を調達しなくては……」
    「あぁ……」
     黒死牟の言葉に小さく頷き、少し寂しそうな表情を悟られない為に、フェルトハットを目深に被った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💯💴🌃🕛💫📱💖💖👏👏💞💞💞ℹ💞💞😭👏👏👏💕💕💕💯💯💯🌃🌠✨💞💞🌠🌙🌕👏💯☺❤❤❤❤☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    17日目
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション 何か理由があって髪を伸ばしているわけではない。
     長い髪って手入れが大変ですよね、と言われるが、実はそうでもない。短い髪の時は月に一度は散髪に行かないといけなかったが、長い髪は自分で毛先を揃えるくらいでも何とでもなる。女性と違って髪が傷むだの、枝毛がどうだのと気にしたことがないので、手入れもせず、濡れた髪を自然乾燥させることにも抵抗がない。それに短い髪と違って、括っておけば邪魔にならないので意外と便利だし、括っている方が夏場は涼しいのだ。
     つまり、ずぼらの集大成がこの髪型だった。
     特殊部隊に入った時、長髪であることにネチネチと嫌味を言われたこともある。諜報活動をする時に男性のロングヘアは目立ち易く、相手に特徴を覚えられやすいから不向きだと言われ、尤もだなと思ったが、上官の物言いが気に入らなかったので、小規模な隠密班を編成する際の長に選ばれた時、全員、自分と背格好が近く、長髪のメンバーだけで編成し、危なげもなくミッションを成功させたことがある。だが、自分の長髪にそこまでこだわりがあったわけではなく、単なる反発心だけである。
    2382

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    15日目
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか
    「ほら見たか!これで恐れるものなぞ何もないわ!」とかつてないほど昂るのか、「案外大したことないわ、つまらんな」と吐き捨てるのか、「太陽の方がやはりお好きで?」「白昼にも月は出ておるわ馬鹿者」みたいな気楽な会話になるのか
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか  それは初恋の憧れに似ていた。
     手の届かない遠い存在という意味か、遠い昔の燦爛とした断片的な記憶のせいか、その強い「憧れ」が根底にあるから黒死牟とは意気投合したのかもしれない。
     自分たちにとって太陽とは最も忌むべき存在であり、その反面、強く憧れ、恋い焦がれた存在であった。
     今でも朝日を見ると、今際の際を思い出し身構える。しかし、その光を浴びても肌が焼け落ちることはなく、朝が来た、と当たり前の出来事だと思い出すのだ。

    「今日も雲ひとつない晴天ですね」
     黒死牟が車のドアを開けると、その隙間から日の光が一気に差し込む。こんな時、黒死牟のサングラスが羨ましいと思うのだが、まさかサングラスをしたまま街頭に立ち、演説をするわけにはいかないので日焼け止めクリームを丹念に塗り込む程度の抵抗しか出来ない。
    2129

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
    3210

    recommended works

    syako_kmt

    TRAININGむざこくアドベントカレンダー
    4日目
    遊園地にお忍びで遊びに行ったら、事件に巻き込まれ、デートしているところをTVで報道されてしまい、進退極まるが、実は仕事関係で行っただけで、二人は付き合ってるとかじゃないんだけど、無惨様が腹括ってシボと付き合ってることをカミングアウトしてしまい、それが世間じゃ真実と捉えられ、すったもんだから、付き合うことになってしまう二人
    遊園地デート 国会での汚いヤジはある種の名物である。美学に反する為、自分は絶対にヤジを飛ばす側をしないし、どんなヤジを投げつけられても、弱い犬の遠吠えだと気に留めたことすらなかった。だが、今回ばかりは完全に無視できない。その上、言い返したい、寧ろ言った人間の胸倉を掴んで、数発殴って歯の一本でも折ってやりたいとさえ思った。
     その理由は、自分だけでなく、矛先が秘書の黒死牟にも向かっているからだ。
    「うちの秘書は関係ないでしょう」
    「関係ないことないだろう!」
    「庇うのはお前らがデキてるからだろう!」
     マイクでは拾えない程度の音量で、お前がケツを出したのか? 等、聞くに堪えない下品なヤジが国会内に飛び交っている。
     おい、女性議員よ。こんな時に「セクハラだ」って怒れよ……と無惨は呆れながら、ヤジにマジレスするのは大人気ないと必死に堪えている。
    5140