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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこくアドベントカレンダー
    24日目
    Merry Christmas

    #むざこくアドカレ
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    #むざこく
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    Merry Christmas クリスマスだと言って何も変わったことはない。街中の浮かれた雰囲気を恨めしげに見る二人にとって、12月24日はクリスマスイブではなく、年末の忙しい1日である。
     訪れる先では笑顔で「メリークリスマス!」と挨拶をするが、他人の目が無ければ二人揃って大きな溜息を吐き、疲労困憊の表情に戻る。
    「一応聞くけど、プレゼント何が欲しい」
    「休みが欲しいです……」
    「却下」
     二人は再び大きな溜息を吐き、次のスケジュールへと向かう。
     サンタの格好をした無惨と、トナカイの角をつけた黒死牟が児童館で子供たちにお菓子を配るイベントを終えると、やっと午前の予定が終わる。時計を見ると午後2時である。
    「腹が減った」
    「同じく」
     二人は近くのカフェに入り、パスタセットを頼み、無惨はジェノベーゼ、黒死牟はナポリタンをチョイスする。
     最初に出てきたサラダを食べながら無惨は尋ねる。
    「お前は何歳くらいまでサンタさんを信じていた?」
    「小学校に上がる前くらいまでですかね。そのくらいで母が亡くなったのでプレゼントが届かなくなって。父はそういう配慮が出来る男ではなかったので……」
     黒死牟が子供の頃の話を語るのは珍しい。それくらい疲れていて気が緩んでいるのだろう。
     無惨は敢えて指摘せず、そのまま彼の昔話を掘り下げることにした。
    「プレゼントはどんなものを頼んだのだ」
    「当時流行っていた玩具とか自転車とか……あぁ、一度だけ親を困らせたことがありましたね」
     子供のプレゼントのリクエストで親が困るプレゼントは大体決まっている。
    「弟か妹か?」
    「いえ、お兄ちゃんが欲しいって手紙に書いたんですよ」
    「それは困るな」
     二人は笑いながら、顔を見合わせる。そして、良いタイミングでテーブルに置かれたパスタを食べ始めた。
    「なんでまた兄が欲しいと思ったのだ」
    「弟がいるので、どうしても兄として我慢を強いられる場面が多かったですし……あぁ、先日の遊園地を覚えていますか?」
    「産廃の?」
    「はい。あの遊園地に家族で行った時に俺、迷子になったんですよ」
     やはりそうか。無惨は先日気付いたことを言わず、黙って黒死牟の話を聞いていた。
    「その時に助けてくれたお兄さんがいて、また会えるって言ってくれたので、俺のお兄ちゃんになってくれるのかな? と思って、そのお兄ちゃんが来て欲しいなと思って……」
     その瞬間、無惨は持っていたフォークを落とした。その音に周囲の視線が集まるが、数秒もすれば皆、気に止めず、それぞれの時間を過ごす。
     だが、無惨はぽかんとした表情のままで、その姿に黒死牟も驚くが、まさか……と口を押さえる。
    「確か、政治家のご子息だと聞いていましたが……」
    「……親父の秘書に感謝だな」
     無惨は苦笑いしながら、再びフォークを持って、くるくるとパスタを巻いた。あの時の秘書は、その後、衆議院から立候補し、今は党の政務調査会長に就いている。やはり仕事が出来る男は違うな、と無惨は今度顔を合わせたら礼のひとつでも言ってやろうと思った。無惨より上の位置にいると言うのに、未だに無惨を見ると「お坊っちゃま!」と呼ぶ気の良い男だった。
    「まさか、あの時の……」
     黒死牟は真っ赤になりながら、無惨を見ている。幼かったので、抱っこしてくれたお兄さんという思い出しかなく、まさか、あれが無惨だったなんて思いもしなかった。
    「良い子にしていたから会えただろう?」
    「覚えておいででしたか!?」
     驚いて、黒死牟は昼飯どころではなくなっている。冷めたナポリタンを必死に口に押し込んでいる状態に無惨は苦笑いしていた。
     まだデザートが残っているというのに、大丈夫だろうか……と心配していると、黒死牟がぼそっと呟いた。
    「良い子にしてて良かった……」

     一通りの仕事が終わった頃には、既にクリスマスイブではなくなっていた。冷えた車に乗り込んだ時、無惨は黒死牟の左手を掴んで薬指に指輪を嵌めた。
    「ご褒美だ」
    「……有難うございます」
     頬を赤く染めながら、二人は真っ暗な車内でくちづけを交わす。昼のことがあるので、黒死牟の気持ちはずっと乱れたままだった。
    「二十年越しの願いを叶えてやろうか? 私がお前のお兄さんになってやろうか?」
    「ご冗談を」
     再び唇を重ね、指を絡ませる。
    「私はお前を父の養子にしても良いと思っているぞ。そうすれば、お前も私と同じ名字を名乗れるだろう?」
    「え……?」
     黒死牟の体を抱き締め、無惨は耳元で囁く。
    「本当は夫婦として、同じ名字を名乗りたいがな」
     左手で優しく黒死牟の頬を撫でると、指輪の冷たい感触が頬に当たる。揃いの指輪が無惨の指にも嵌められているのだ。
    「無惨様が法律を変えてくだされば良いのです」
    「それもそうだな」
     笑いながら二人は啄むようなキスを繰り返す。
    「こんな素敵なプレゼントを貰ったのは生まれて初めてです」
    「そうか……帰ったら、もっと良いプレゼントをやろう」
     暗闇の中で光る無惨の瞳を見て、黒死牟は真っ赤になりながら無言で頷いた。

     この日以来、無惨の父の元秘書だった政務調査会長のことを「サンタさん」と二人がこっそり呼んでいるのは、ここだけの話。
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    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック⑤
    25日目
    某映画賞の授賞式で某イケメン俳優がしていたスタイルを、無惨様がなさるお話が読みたいです。それを初めて見た黒死牟の反応も知りたいです。
    フレームレスメガネ、黒タートル、黒系ジャケット、シルバーアクセの、顔とスタイルが良くなければ絶対似合わないあれです。

    普段はスーツでしょうし、無惨様は裸眼だと思うのでどういう状況だろう…とは思いますが、絶対お似合いになると信じてい
    某映画賞の授賞式で某イケメン俳優がしていたスタイルを、無惨様がなさるお話が読みたいです。 黒死牟がテレビの画面を見ながら、思わず感嘆の声を漏らした。一体何事かと思い、ソファに寝そべってタブレットを見ていた無惨は、テレビの画面に視線を移した。
     それは某映画賞の授賞式の中継だが、優秀助演男優賞を受賞した面々がレッドカーペットを歩く姿を、じっくりと見入っているのだ。
    「美しいですねぇ……」
     どの俳優を指しているかは一目瞭然である。そう、黒死牟は超がつくほどの面食いなのだ。国宝級イケメンとの呼び声高い無惨を彼氏に持つ黒死牟が見惚れてしまうほど、その俳優は美しかった。
     黒いハイネックのセーターに黒いスーツ、そして首元に輝くシンプルなパールジュエリー。どこを取っても隙のない美しさだというのに、それより何より美しいのが顔面で、その顔面の魅力を倍増させる眼鏡の破壊力。無惨は少々不貞腐れながらも冷静に分析していた。
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    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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    syako_kmt

    TRAININGむざこくアドベントカレンダー
    4日目
    遊園地にお忍びで遊びに行ったら、事件に巻き込まれ、デートしているところをTVで報道されてしまい、進退極まるが、実は仕事関係で行っただけで、二人は付き合ってるとかじゃないんだけど、無惨様が腹括ってシボと付き合ってることをカミングアウトしてしまい、それが世間じゃ真実と捉えられ、すったもんだから、付き合うことになってしまう二人
    遊園地デート 国会での汚いヤジはある種の名物である。美学に反する為、自分は絶対にヤジを飛ばす側をしないし、どんなヤジを投げつけられても、弱い犬の遠吠えだと気に留めたことすらなかった。だが、今回ばかりは完全に無視できない。その上、言い返したい、寧ろ言った人間の胸倉を掴んで、数発殴って歯の一本でも折ってやりたいとさえ思った。
     その理由は、自分だけでなく、矛先が秘書の黒死牟にも向かっているからだ。
    「うちの秘書は関係ないでしょう」
    「関係ないことないだろう!」
    「庇うのはお前らがデキてるからだろう!」
     マイクでは拾えない程度の音量で、お前がケツを出したのか? 等、聞くに堪えない下品なヤジが国会内に飛び交っている。
     おい、女性議員よ。こんな時に「セクハラだ」って怒れよ……と無惨は呆れながら、ヤジにマジレスするのは大人気ないと必死に堪えている。
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