成星「朱優」
朱優「どうした」
成星「お前の魔法を見せてほしい」
朱優「…というと?」
成星「お前がいつも使っている魔法だ。あの物体を出現させる…」
朱優「…具現化魔法か」
成星「そうだ」
朱優「見せてどうする」
成星「俺もその技術を習得する」
朱優「お前は本当に魔法のことになると貪欲だな。全属性を扱えて、まだ満足していないか」
成星「俺はこの世に存在する全ての魔法を習得したい…くらいには思っている」
朱優「言っておくが樹さんもこの具現化魔法は使えない」
成星「!…そうなのか?」
朱優「この魔法を使えるのはここでは俺だけだ」
成星「なぜお前はそれが使える?」
朱優「使える魔法の属性や種類は遺伝や家系で概ね決まっているんだろ。だったらそういうことだ、としか説明のしようがない」
成星「お前の家系は特殊なのか?」
朱優「いや、ただの無属性が扱える家系だ」
成星「無属性はその名の通り属性がない分、派生もしやすいからな。魔法の種類だけで言うなら無属性が圧倒的に多い」
朱優「その数多くの無属性の中のひとつがこの具現化魔法だ」
成星「その魔法、発動条件は?」
朱優「使うやつ…ここで言うと俺がその具現化させたいもののイメージを具体的に描き起こせるかつその物体の特性を理解していることだ」
成星「ふむ…」
朱優「言葉で言うより実際にやった方が早いな。では…そうだな、お前の武器をここに出してやろう」
成星「俺の武器を…?」
朱優「ああ。お前の武器は見たことがあるから形状は記憶している。そしてお前の武器の特性は、持ち主の魔力を増幅させて、より強力な魔法を放つことができる。これだけ理解していれば…」
成星「!!…俺がいつも使っている武器だ」
朱優「こういうことだ。わかったか?」
成星「お前の具現化させたその杖は俺の本当の杖と性能は同じなのか?」
朱優「言っただろ。具現化魔法を使う人間がその対象をどれだけ理解しているかで再現度は変わる」
成星「…ではお前が具現化させたその杖、一度俺に使わせてくれ」
朱優「いいだろう」
成星「…ふむ。手に取った感じは一緒だな。そして魔法の威力は…これも俺が普段使っているものと同じだ…」
朱優「ふん、どうだ?」
成星「…お前は俺の使っている杖を完全に理解している、ということか」
朱優「そのようだな」
成星「…なるほど。具現化魔法は物体の形状を記憶する力と性能を理解する力が必要、と。それならお前が使えて、京が使えないのも納得できる」
朱優「そういえばあいつも無属性が使えたな」
成星「ああ。だがあいつは具現化魔法は使えない。おそらくだが使えるのは戦闘魔法と特殊魔法だけだ」
朱優「さっきも言ったように無属性は種類が膨大だからな。京がそもそも別の種類の無属性を扱っているという可能性も大いにある。…まぁ、具現化魔法が使えたところであいつでは再現度は低いだろうな」
成星「俺の武器を再現しても見た目が同じだけの杖のおもちゃとか出てきそうだな」
朱優「ふ、そういうことだ。だから具現化魔法は誰でも扱えるような魔法ではない」
成星「ところで。お前は戦闘のとき魔法を使っていないのか?」
朱優「俺の銃弾は魔法でできている」
成星「…なるほど。ではお前は銃で魔法を打ち出しているのか」
朱優「そうだ」
成星「ふむ…樹さんの頭脳だったら具現化魔法も使えそうなものだが…なぜ使えないんだ…?他に何か条件があるのか…?」
朱優「ふ、新たな課題が見つかったようだな」
成星「…具現化魔法を習得するためにはこの魔法自体を理解しなければできそうにないな。課題をまとめてまたお前に聞きに来る」
朱優「ふん、暇だったら付き合ってやるよ」
成星「暇じゃなくても付き合わせる。俺は絶対にこの魔法を習得してみせるからな」