炎の国01
僕は、およそ失恋というものをしたことがない。といっても、それは僕が百戦錬磨の恋愛強者であるとか、まあ百戦とはいかないまでも数少ない恋愛経験において、意中の相手のお眼鏡にかなう幸運にあずかったとか、そういう絵物語のような理由によるものではない。
そりゃあ僕だって今年で十八になる。お年頃だ。思春期真っ只中だ。なんならその全盛期はとうに通り過ぎたと言ってもいい。好感を抱いた相手の一人二人くらいは当然の如くに居た。そのうちの一人とは今でも文通を続ける仲ではあるけれど、まる二年の時を経て文通友達に収まっているというのは、つまりそういうことだ。この先に起こり得る変化といったら、せいぜいで文通の頻度が上がるか下がるかくらいなものだろう。
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