「真ん中にあったのがチチが作ったやつだな」
「……アタリ。おじいちゃん、本当におばあちゃんが作るものすぐ分かるよね。おにぎりなら手で握るだけだしわかんないんじゃないかなぁって思ったんだけど…」
炊いたお米を塩をまぶした手で握っただけの塩むすび。
悟空の孫娘、パンをはじめとした、悟飯、悟天、ビーデル、そしてチチが握ったものがひとつずつ皿に並べられそれぞれを悟空が食した。
どれがチチが握ったものかをあてるというパンからの出題だったが、悟空はすべての塩むすびを軽く平らげたあとにたやすく正解して見せた。
「おばあちゃんの料理は食べなれているから、味付けとかで分かるのかなって思ってたけど、ここまでとは思わなかったわよ」
「チチのメシはうめぇからな~」
「味付けは塩だけじゃない」
「いや、だってよ、チチが握ってんだぞ? チチの味がするからそれこそすぐわか」
「悟空さ」
悟空の言葉は氷点下なチチの声で途切れさせられる。
あたたかな日差しのような笑顔の祖母ではあるが、纏う気配には圧がある。幸いにもそれは悟空にだけ向けられているようであるが、現在好奇心旺盛な年ごろのパンには悟空が言わんとしたことを理解したい気持ちの方が強く、祖父母にじゃれつくことになる。
「なんだかんだ言ってオシドリ夫婦ってやつなんだよねー」
やれやれとぼやいた悟天が、ちゃっかりと自分用に握っていた塩むすびを頬張っていた。