孫家は家族写真をよく取る方だ。チチの父親である牛魔王は昔からカメラを手に娘夫婦や孫達の写真を撮ってくれたし、チチ自身が持っているスマートフォンのカメラ機能で写真を撮ることも多い。
そしてチチは小さなアルバムを持っており、そこに写真を収めている。
「また一枚増えたんか?」
「んだ。ほら見てけれ、この小蕪、ハートみてぇだべ?」
チチが傾けたミニアルバムには野菜の写真がきれいに並んでいる。
それは孫家の畑で収穫された野菜達で、収穫時にちょっと珍しい形だと気付いたもの達だ。
市場に卸すにはある程度形が整ったものが好まれるのでそれらは孫家の食卓行きになるわけだが、折角なのでと調理前にチチが写真を撮り始めたのである。
でこぼこが星型に見えるジャガイモに、まるで人型のようなニンジン。グローブのように妙な形になってしまった茄子……。
成長過程でこれは…? と気付けるものもあるが、根菜は引っこ抜いてみないと分からないのでそのときはつい吹き出してしまうことも多い。
破廉恥な形となってしまった大根を手に笑顔の悟空がチチの元にやってきたときは、ちょっとばかり教育的指導をしたけれど、それもおいしい煮物にしたことを思い出す。
「野菜って不思議だよなぁ。そりゃあでっかかったりちっこかったりはするけんど、大抵は普通の形になってくのにたまーに変なのできるよな」
「育っていく中で傷がついちまったりとかで理由は色々あるけんど、これはこれで面白れぇとこだな」
「この間うっかりハートのトマトを市場に持ってったらよ、卸しのおっちゃんがやけに面白がってちょっといい値で引き取ってくれたんだよな。またできたら欲しいって言われたぞ」
「あんれまぁ。でも意図して作ってるわけじゃねぇから難しいだよ」
「だよな。そこは言っといた。あとはまぁ、そういうのはやっぱ自分達で食いてぇなって思った」
チチの隣に座り目元を和らげる悟空に、チチも微笑み返す。
戦闘民族である夫は強くなること、強い存在に挑むこと、強くなること、修行が大好きだが、今はチチと一緒に農業にも勤しんでくれている。
寝起きを共にするだけでなく、共に畑に行き畑仕事を一緒にする時間がある今をチチはとてもいつくしんでいる。
胴着に身を包み瞬間移動などで出てしまうとしばらくは帰ってこないこともやはり多い夫だけど、チチは今を幸せだとしみじみと思うのだった。