結婚したばかりのチチは、夫となった悟空と夜明けのコーヒーなどを飲む光景を想像して自分の頬を手で包み恥ずかしさと期待に身をよじっていた。
結果としては、そうなるまでにまぁ色々あって、新婚だというのに実家に帰らせてもらいます! もあったのだが、察せるオトナとしては長男、悟飯の年齢から推して知るべしである。
その後孫家はなんだかんだあったが、家族「四人」で幸せに暮らし、夫婦は最近、祖父と祖母にもなった。
次男の悟天は父親譲りの身体的強さは持っているが、まだ親の庇護下にある年齢なので、これからもまだ家族として穏やかに過ごしていけたら…と思っていたのだが。
「この歳でまだ『夜明けのコーヒー』を飲んでるとは思わなかっただよ…」
あたたかな湯気をあげている香ばしいコーヒーは粉末に湯を注ぐだけのインスタントだが、手軽なのにおいしいのでチチのお気に入りである。
寝台の上でその熱い液体を飲むのは結婚前の夢であり、新婚時の憧れでもあったが……。
「冷たいやつの方がよかったか? なんだったら今から新しいの作ってくっぞ?」
「うんにゃ、これでいいだよ。そうじゃなくてな、おめぇさなんか最近その…はりきってねぇだか?」
敢えてのジト目で。意識してチチは夫、悟空をにらみつけているのだが本人はけろっとしているのが悔しい。むしろ下着だけ身に着けて惜しみなく晒されている肢体にチチの方が根負けして視線をそらしてしまう。
すると獣を思わせるような流れるような動きで、悟空がチチの隣に腰を下ろし身を寄せてきた。彼の手にもチチと同じコーヒーの入ったマグカップが握られており、新婚時は苦くて飲めないと言っていた彼が苦も無くそれに口をつけている光景を見る。
「いやぁ、パンってかわいいじゃねぇか」
「んだ。悟飯とビーデルさのいいところを継いだんだろうなぁ、とってもめんこいだ」
「ああ。で、悟飯のやつがさ、すんげぇ自慢してくんの。『娘っていいですよ』ってさ」
「そりゃあわが子はかわいいもんだ」
「だからよ、娘もほしいなと思ったんだよなー」
「……だよなー……、じゃねぇべ。おらたちもうじいさまばあさまだべよ、今から娘とか無理…って、ちょっと悟空さ…っ」
「無理かどうかは、まだわかんねぇだろ?」
にっこりと笑う、金色と橄欖石色を持つ夫からやんわりとコーヒーを取り上げられてチチは思う。
今日、悟天を幼馴染のトランクスのところに泊まらせていたのは絶対確信犯に違いない、と。