「爽やかには程遠い」/廻あざ 薄暗い室内で私は本棚の整理をするふりをしながら、そばで本を読むセンター長さんを眺めていた。照明が暗いせいかより一層青白く見える肌に、くまが濃い目元。文字通り全てを見透かす目は伏せがちで、あの鋭い瞳は本の文字を追っているからか微かに揺れている。さらに目線を下げれば、鼻筋の通った鼻と薄い唇が映った。そう、彼の唇。ごくりと生唾を飲み込んでから、私の視線はそこから動けなくなった。
「……そこまで凝視されると、流石に気になりますね。私になにか?」
「へぇ? あっ、なんで……!」
さりげなく見ていたはずが気づかれてしまった。とっさのことで頭が回らずあたふたする私に対して、センター長さんは少し呆れた様子で続ける。
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