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    紫蘭(シラン)

    @shiran_wx48

    短編の格納スペースです。

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    紫蘭(シラン)

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    #グルアオ版マンスリードロライ の7月のお題:太陽・メロンで作成しました。
    ポケモンの道具って、たまに食べれそうなものありませんか?

    今後もお付き合いください(お題:太陽・メロン)/グルアオ「あつ〜い」

    カンカン照りの中、私は南三番エリアの荒野を歩き回っていた。
    今日は大量発生中のカルボウを捕まえに来たのだけど…暑い、暑すぎる。
    ここってこんなに暑かったっけ?と思ってスマホロトム確認すれば、ここしばらくは猛暑が続くと天気予報が出ていたみたいで、どうして出かける前に確認しなかったのかと後悔した。

    まだカルボウを見つけられていないけれど、滝のように流れる汗から熱中症になる危険性を考えると、一度アカデミーへ引き返すことを選択する。
    …また前と同じように無理して続けて、ミモザ先生にこっぴどく叱られたくないし。

    岩陰に移動してから水筒を取り出して水分補給をすると、深呼吸をした。
    そして帰る前に少しだけ休憩しようと地面に座り込む。

    影のところにいるからといって 全く涼しくなんかならないけれど、直射日光を浴び続けるよりずっとマシだった。

    「ううー…」

    それでも唸ってしまうのはやめられない。
    ああ、だめ。何か楽しいことを考えよう。
    帰ったらテーブルシティでアイスクリームでも買って食べようかな。
    いやこんなに暑かったらアイスよりジュース?
    きのみがたくさん入った 冷たいミックスジュースとかもいいな。

    それとも――


    「あ、いいこと思いついた…!」


    どうせ食べるならあの人のところに行こう。
    年中雪に閉ざされた山でこもる人だから、季節感なんてわからなくなってるだろうし。
    夏を届けに来ました〜ってことにして、会いに行こう。

    最終的な目的地を変えると、私はミライドンを出してまたがった。
    必要なものを買いにハッコウシティに行こう。
    あと今のシーズン、街の近くにあるビーチには簡易シャワーがあったから そこで汗を洗い流して服を着替えてからと…。

    道中これからのことを計画しながら、私達は走り出した。






    「…で、急に来たかと思えば何?」
    「ですから、とけないこおりをたくさん買ってきたので、かき氷作りましょう!」
    「何回聞いても意味がわからない」

    暑さで頭やられた?って聞かれたけれど失礼な!
    頬を膨らませながら抗議すると、グルーシャさんは右手を目元に添えながら深くため息をついた。

    「…とにかく、そんなアツいとこからこんなサムいとこまで来たんだろ?
    早く中に入りなよ。風邪引くし」
    「それもそうですね!さっきシャワー浴びたばかりですし」

    そう言えばぎょっとした顔で見られたけれど、更なるお小言が飛んでくる前に ナッペ山ジムの裏口から入っていった。

    そして彼が普段利用する控え室に行くと、ミニキッチンを借りて準備する。

    「前に景品でもらったかき氷機ってまだあります?
    あのユキハミ型の…」
    「あれなら上の棚に置いてるから取ってくるよ」
    「ありがとうございます」

    去年、私がとあるキャンペーンでゲットしたかき氷機。
    寮に置いても仕方なかったから、グルーシャさんにあげたのだ。
    たまに食べたくなったら使ってくださいと言えば、渋い顔を浮かべていた。
    でも何回見ても使った形跡は全くなかったので、今回はそれも兼ねてる。
    お付き合いしている人と一緒にかき氷を食べる…そんな夏らしいデートをしてみたかったから。
    …あいにく私の彼氏は今の時期はアツいからヤダの一点張りで、私のために下山しようと なかなか重い腰を上げてくれなかったけど、暖かい室内で食べちゃえばいいんだ!ってさっき気がついたので、事前連絡の上こうしてナッペ山ジムまでやって来た。
    思い立ったら即 行動!は、私の誇るべき長所だ。

    ずっとやってみたかったことを一つ達成できるぞ〜と鼻歌まじりで保冷バッグから、ハッコウシティのデリバードポーチで買った とけないこおりを取り出す。

    それらを軽く洗ったかき氷機のユキハミを模した氷入れにセットして、器を出口付近に置き いざ手回しハンドルを回した。

    「ねえ、それ本当に食べても大丈夫なやつ?
    元々はポケモンに持たせるアイテムだろ…」

    疑わしそうに私を見つめるグルーシャさん。

    「一応店員さんに聞いてみたんですけど、大丈夫じゃないですか〜?って言ってましたよ!
    普通の氷だと溶けちゃいますし」
    「…こんな訳わかんないことでお腹壊したくないんだけど」

    「うふふ、その時は看病してあげますから」
    「なんで自分は平気だって信じて疑わないんだ…」

    呆れ声をBGMに、私はくるくる手を回し続ける。
    するとユキハミの口からふわふわの氷が出始めた。
    やったできてるーとはしゃぎながら、二人分のかき氷を作った。

    「シロップはメロン味しかなかったので、かけますね。
    …よしできた!スプーン出してくれますか?」

    ローテーブルに二つのかき氷とスプーンを置いて、ソファーに座ると私は一目散に食べ始めた。

    「んんっー、冷たーい!
    グルーシャさん、美味しいですよ!食べてください。
    食べ終わったら舌が緑色になってるか、見せ合いっこしましょう!」
    「なんでそんなにハイテンションなの…」
    「一緒に夏を感じたかったので。
    でも、誰かさんがアツいところには絶対に行かないって駄々こねるから…」
    「ぼく駄々なんてこねてないけど!?」

    もう一度掬って口の中にいれると広がるメロンっぽい味。
    かき氷シロップって実は味はどれも一緒だけど、色と匂いに脳が騙されてるから別の味に感じるとかなんとか聞いたけど、本当かな?
    私にはちゃんとメロンの甘い味がするんだけど…。

    あまりの冷たさに、頭が響くような痛みを感じながらも美味しいからとどんどん食べていく。
    ふと隣を見たらグルーシャさんは全く手をつけてなくて…。

    「食べないんですか?」
    「いや、そんなことないけど…」
    「もー、仕方ないですね。食べさせてあげますから口開けてください」

    私分からメロンシロップがたっぷりかかった氷をスプーンで掬うと、彼の唇の前まで持っていった。

    「はい、あーん」

    頑なに口を開こうとはしなかったけれど、声をかけたら渋々食べてくれた。
    ごくんと喉仏が動いたのを見て、追加分を口へと運ぶ。
    なんだか産まれたてのポケモンの世話をしている時みたいだなーと考えていると、勘づかれたのか グルーシャさんの眉が中央に寄っていくのを見てケラケラ笑った。

    そう。私はこんなことをしたかったんだ。
    何かを二人で一緒に食べて 笑って お喋りして。
    …最近ジムの方が忙しそうで、こうして会うのは久しぶりだったから余計に。

    「グルーシャさんて、みやぶるでも持ってるんですかー?」

    なんて冗談を言えば、すっとあの美しい目が細められた。
    あれ…と思った時には冷たい唇が合わさっていて、そこから冷んやりとしたものが入ってくる。

    「んっ、ぁ…」

    舌同士くっついては離れ、上顎を内側から擦られたりと好き勝手に暴れ回られた後、ちゅっとなんとも可愛らしい音をたてながら唇が遠ざかった。
    あんなに冷たかった唇も舌も最後には生温かくなっていて、ぽかんと見上げるしかない。

    状況把握に手こずる私を見て、グルーシャさんは得意げな表情で笑っていた。

    「こっちはアオイのわがままに付き合ってあげたんだ。
    これくらいの報酬はもらわないと」

    顎の下を撫でられながら、もう一度キスされた。

    「き、キスして付き合ってくれるなら、あまーいりんごとやまぶきのみつを使ったジュースを作りたいので、今度協力してください」
    「…なんでそんなにポケモンに使うどうぐを食べたがるの」

    食べ虫とかなんとか言われたけれど、私はドキドキしているのを悟られないように精一杯振る舞うので必死だった。


    終わり
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    💚🍈🍧
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    chikiho_s

    PASTTwitterに上げたバレンタインとホワイトデーの連作。
    プレゼントは死ぬほど貰うけど、自分からあげるなんて無いだろうから悩み悶えていればいい
    ココアの件はフォロワーさんのリクエストで。グランブルマウンテン(砂糖たんまり)でもいいね。可愛いね。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19706108
    氷の貴公子とチョコレイト今年もこの日がやってきた。一年の中でも憂鬱な日。バレンタインだ。

    ジムの建物内を埋め尽くす勢いでチョコレートやプレゼントが届く。言うまでもなく全部ぼく宛て。わざわざ雪山の山頂にあるジムまで届けにやってくる人もいる。多分明日は本部に届けられた分がやってくる。正直、意味がわからない。
    この日だけ特別に一階のエントランスに設置されるプレゼントボックスは何度回収しても溢れていて、業務に支障が出るレベル。下手にぼくが表に出ようものならパニックが起きて大惨事になるから、貰ったチョコレートを消費しながら上のフロアにある自室に篭もる。ほとぼりが冷めたらプレゼントの山を仕分けして、日持ちしない物から皆で頂いて、残りは皆で手分けして持ち帰る。それでも裁ききれないからポケモン達に食べさせたり、建物の裏にある箱を冷蔵庫代わりにして保管する。これは雪山の小さな特権。
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