Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    chikiho_s

    @chikiho_s

    絶対零度トリックさんとミミッキュたんに狂わされてる人
    Twitterに投げた文と落書きの保管庫

    ▼かいてる
    ぐる主♀
    ミミッキュたん
    刀さに(色んなの)

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🏂 😍 😘
    POIPOI 9

    chikiho_s

    ☆quiet follow

    Twitterに上げたバレンタインとホワイトデーの連作。
    プレゼントは死ぬほど貰うけど、自分からあげるなんて無いだろうから悩み悶えていればいい
    ココアの件はフォロワーさんのリクエストで。グランブルマウンテン(砂糖たんまり)でもいいね。可愛いね。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19706108

    #グルアオ版マンスリードロライ
    #グルアオ
    gruao.

    氷の貴公子とチョコレイト今年もこの日がやってきた。一年の中でも憂鬱な日。バレンタインだ。

    ジムの建物内を埋め尽くす勢いでチョコレートやプレゼントが届く。言うまでもなく全部ぼく宛て。わざわざ雪山の山頂にあるジムまで届けにやってくる人もいる。多分明日は本部に届けられた分がやってくる。正直、意味がわからない。
    この日だけ特別に一階のエントランスに設置されるプレゼントボックスは何度回収しても溢れていて、業務に支障が出るレベル。下手にぼくが表に出ようものならパニックが起きて大惨事になるから、貰ったチョコレートを消費しながら上のフロアにある自室に篭もる。ほとぼりが冷めたらプレゼントの山を仕分けして、日持ちしない物から皆で頂いて、残りは皆で手分けして持ち帰る。それでも裁ききれないからポケモン達に食べさせたり、建物の裏にある箱を冷蔵庫代わりにして保管する。これは雪山の小さな特権。
    このプレゼントの一つ一つに想いが込められているだろうから、ただ処分するだけっていうのはさすがに心が痛い。
    この日と誕生日は毎回こんな感じ。一般的な視点で見れば異次元レベルだと思う。引っ越しみたいに大量の箱が運ばれて積み込まれるなんて話は聞いたことが無い。皮肉っぽく聞こえるけど、これが現実なんだから一回味わってみてほしい。たぶん、ぼくの憂鬱な気持ちが伝わると思うから。

    日が傾いて人が疎らになってきた頃、建物に向かってくる人影が見えた。アオイだ。今なら下に降りても大した騒ぎにはならないだろう。ぼくがエントランスに出たと同時にドアが開いた。
    「グルーシャさん、お疲れ様です!会いに来ました!うわあ…やっぱり凄い数のチョコですね……。さすがです!」
    「これでも昔より大分減ったよ。アオイも渡しに来たんだろ?」
    「あ、はい。でもグルーシャさんは沢山貰ってるだろうなって思って、すごく悩んだんですけど……悩んでる間にどこのお店も売り切れちゃいました。」
    「ふうん、そうだったんだ。大変だったね。」
    ああ、ぼくが言うとどうしても嫌味に聞こえてしまう。
    最近は学校とリーグの仕事とでなかなかゆっくりとした時間が取れないと言っていたから、その貴重な時間をぼくのために使ってくれたのかな。前に料理は得意じゃないから友達に教わっているとも言ってたっけ。可愛いな。
    外から流れ込んできた冷気と、ぼくの憂鬱な気持ちを吹き飛ばしてくれる。アオイはやっぱり変わってる。会えるだけでこんなに嬉しいのに、どうしたものか。
    「それでやっと買えたのがこれなんですけど……」
    そう言ってアオイは背負っていたバッグの中から水色のリボンがついた袋を取り出して、遠慮がちにぼくに差し出した。
    「……開けてもいい?」
    「いいですけど、こんなところで開けちゃって大丈夫ですか?」
    「今は人いないし、平気。ぼくが見たい」
    アオイがぼくに何を選んでくれたのかが知りたい。ぼくはリボンを解いて袋の中身を取り出した。
    「むむ、これは……」
    可愛らしいピンク色のポケモンがデザインされた箱には"エネココア"と書かれている。お湯を注いで作るタイプの所謂インスタントドリンク。
    「前にグルーシャさんとお茶したときに、ココアが好きだって話を聞いたのを思い出して、チョコと同じ材料だからありかなって…思ったんですけど…ダメですよね!すみません」
    アオイは今にも顔を真っ赤にして俯いた。そういえばこの間たまたま予定が空いてカフェに行ったときに何気なくそんな話をしたような気がする。雪山の上から見下ろす輝く景色を眺めながら、温かい部屋で甘くて温かいココアを飲むのが好きだって。
    「……ダメじゃない。」
    「はい……?」
    「ありがと、大切に頂くよ」
    「ど、どういたしまして……?」
    潤んだ瞳を持ち上げてきょとんと不思議そうに首を傾げるアオイは小さなポケモンみたいで可愛い。その可愛いアオイが選んでくれた物なら何でも嬉しいに決まってる。
    「……またアオイに温めてもらった」
    「何をですか?」
    「内緒」
    仕事があるからと適当に話を濁してぼくは仕事部屋へ戻る。あれ以上顔を合わせていたら、ぼくの方が溶けてしまいそうだから。
    部屋にある棚に貰ったココアの箱をしまって、建物から出て山を下っていくアオイの姿を見届けて。
    来年は楽しくこの日を迎えられそうだ。


    大量の贈り物が雪崩込む憂鬱なあの日からもうすぐ一ヶ月。ジムの中を埋めつくしていたプレゼントの山はほぼ片付いて、元に戻りつつある。
    ここは他のジムに比べたら挑戦者は少ないから、この時期のうちでは雪かきと大量のお菓子を食べ切ることがメインの仕事。だからこの時期はスタッフとポケモン達がふくよかになる。前に食欲旺盛な人間とポケモンが多いから食費が浮いて助かると言ったら怒られたっけ。
    ぼくはというと、嬉しそうにお菓子を頬張る相棒達の横でプレゼントに添えられていた大量の手紙の一つ一つに目を通している。退屈な業務書類や電子メッセージとは違って、手書きの文字は柔らかくて温かい。
    アオイもこんな風に可愛い文字を書いて誰かとやり取りしていたりするのかな。ひょっとしたらアオイからの手紙が混ざってたりとか。
    「……するわけないか」
    思わず零れた独り言と、ちょっとだけ期待してしまった自分にサム気がした。そういえば吹雪で彼女をこの部屋に泊めた日から会ってない。ぼくがいない時に来たなら周りのスタッフが知らせるだろうから、たぶんここには来てない。上は学生のアオイをソリ滑りに来る暇も無いくらい働かせてるのか。でも何日か前に仕事でリーグ本部に行った時もそんな話は聞かなかったから、忙しいのは学校の方。それならば仕方ない。
    アオイの名前が無いか手紙の束を見返しては落ち込んで、を何回も繰り返して。アオイのことを考え出すとキリがない。胸が詰まるような感覚をほぐそうと、席を立ってお気に入りのココアがしまってある棚の戸を開ける。するとココアのパッケージに描かれた愛くるしい姿のポケモンと目が合った。丸くてふわふわで甘い匂いがして、ふにゃりと目を細めて笑うアオイに似てる。
    高級な訳でも豪華なラッピングがしてある訳でもない、どこにでもあるようなインスタントのココア。数えきれない程贈り物の中で、ただ彼女がくれたというだけで、ぼくにとってはどんな物より特別な物のように思えた。
    もうすぐ一ヶ月、ぼくも何か返したい。考えるより先に気がつけばぼくはスマホを起動していた。
    「……グルーシャ、さん?どうしたんですか?」
    「…アオイ?今、少し話せる?」
    「はい。ちょうど今、授業が終わって寮の部屋に戻ってきたところなんで…」
    数回コールした後、スピーカー越しに 聞いたアオイの声は明らかに動揺してる。普段ろくにやりとりしない男からいきなり電話がかかってきたら、驚くのも無理ないか。
    「ふーん。あのさ、この日って空いてる?……無理だったらいいけど…」
    「いえ、無理じゃないです!その日は授業が終わったら特に予定はありませんから、空けておきますね!」
    「ありがと。それじゃ」
    通話を切った後、強ばっていた糸が解れたみたいに溜息が出た。たった数回言葉を交わしただけなのに、現役の頃より緊張してる。同時にアオイの声が聞けて話ができて、会える約束ができたことが嬉しくて、まだ胸が熱い。
    ホワイトデーに興味は無かったけど、今年は特別だ。
    「……何?その顔」
    振り返るとにやけた顔をした相棒達に囲まれていて、冷やかされてることに気づいたぼくは急に現実に引き戻される。さっきまでの流れと妙に浮かれた自分を思い返して、恥ずかしさのあまり棚に向かって崩れた。
    ポケモン達にまで見透かされるなんて、本当にサム過ぎる。

    数日後、今日の雪山はいつもより少し温かい。もうすぐアオイが来る頃だから雪山は歓迎しようとしてるみたいだ。
    休日に街へ買い出しに下りた時、普段なら行かないような店を見て回った。年頃の女の子が好きそうなアクセサリーとか服とか。最近人気だと言われてるお菓子屋のケーキは売り切れてた。アオイがくれたエネココアは期間限定物だったらしくて、見つけられなかった。ポケモン関係の方が良いかと思ったけど、わざわざ呼び出してまで渡すのはさすがにサムいを通り越して空気読めなさ過ぎる。いくらぼくでもそこまで馬鹿じゃない。
    ああ、考えてみたらぼくはアオイのことを何も知らないな。好きな食べ物も色も欲しい物も。彼女はぼくがココアが好きだって何気なく零した一言さえ覚えててくれたのに。貰うのは嫌なくらい慣れてるけど、自分が誰かに物を贈るのは初めてかもしれない。ぼくの方が人生もトレーナーとしても先輩のはずなのに、贈り物一つにこんなに苦戦してる自分が情けない。
    結局ぼくが選んだのは、とてもシンプルで子供にだってできるようなありふれた物だった。

    陽が少し傾いてアオイが雪山に来た。午前の授業を終えてすぐ、昼食も食べずにここに来たらしく、エントランスで盛大に腹の虫を響かせたアオイを食堂に連れて行き一緒に食事を取る。大きなサンドイッチに豪快にかぶりつく彼女を見ていると、お菓子を頬張る相棒達と重なって何だかぼくまで幸せな気分になる。できればこのままずっと眺めていられたらもっと幸せかもしれない。

    食事を終えた後、二人でぼくの仕事部屋に行く。部屋の中で遊んでいたポケモン達は主人を差し置いて、アオイを囲み熱烈に歓迎している。やっぱり彼女は普通の人とは違うのだと改めて思った。
    ぼくとは何もかもが真逆のアオイが、あれを受け取ってくれるのだろうか。
    「アルクジラ…その手紙、私にくれるの……?」
    「あっ、それ……」
    最悪だ。書き終えた後、しまうのを忘れて机の上に置いたままにしていた手紙をアルクジラが見つけて持ってきてしまった。アルクジラは特にアオイに懐いていて、この前吹雪で彼女を部屋に泊めたときも一緒に寝ていてた。その時ぼくは何をしたといえば。一気に恥ずかしい記憶が蘇って、もうぼくを雪の中に沈めてくれ。
    「あの……グルーシャさん?これ大事なお手紙ですよね?お返ししますね」
    「……いいよ。これからアオイに渡すつもりだったから」
    「え…」
    ここまで来たら腹を括るしかない。顔を覆っている厚いマフラーを下ろして、アオイのきらきらした可愛い瞳を見つめる。
    「いつもアオイから貰ってばかりだから、何か返したいと思って、沢山考えたけど……結局いいやり方見つからなかった。だからぼくの気持ちをその手紙に書いたんだけど、よかったら受け取って」
    「あ、ありがとうございます…。びっくりしました。グルーシャさんて、こういうの興味無いのかとばかり思ってましたから」
    「アオイだからだよ。他の人にはしない」
    「あの、それって…」
    「いらなかったら捨てて」
    「そんなことできるわけないじゃないですか!せっかくグルーシャさんから頂いたのに……。あの、読んでもいいですか?」
    「え。いいけど……できればぼくのいないところにして……」
    ぼくのポケモン達がにやにやと見てる中で、これ以上の公開処刑は勘弁してほしい。

    たぶんもう、憂鬱な日は来ない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤😍☺💗💘❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    chikiho_s

    DOODLE🍐❄️「欲しいものは必ず手に入れる。ぼくは(お相手)が欲しい」

    フォロワーさんとの話で出てきた台詞でカキカキしました
    自分の魅力を熟知して最大限利用してる系の❄️くん。❄️💙が描きやすいのでそれにしましたが、お好みの相手に設定してどんどん使ってください
    背が低いから主人公以外に壁ドンできねえじゃんて気がついたのは書き終わってから
    欲しいものはいつものように雪山滑りを心ゆくまで満喫して帰ろうとしたところに、たまたま外回りから戻ってきたグルーシャさんと鉢合わせた。
    「来てたんだ」
    「あ、はい。今日こそは新記録出したかったんですけど、ダメでした…」
    時間を見つけては滑りに来て、雪山滑りの歴代最高記録を塗り替えるべく何度も何度も挑戦するものの、なかなか新記録が更新できない。というのは実は建前で、本音はグルーシャさんに会いたいから。こうして滑っているとグルーシャさんが声をかけてくれる。ほんの少しでも彼に近づきたい。
    でも記録を塗り替えたところであのイケメンで優しくて才能あるグルーシャさんは私なんかを相手にしてくれないだろうし。彼と話せなくなるくらいなら記録更新なんてしない方がいいのかも。胸がきゅうと狭くなる。
    2319

    related works

    chikiho_s

    DOODLE🍐❄️「欲しいものは必ず手に入れる。ぼくは(お相手)が欲しい」

    フォロワーさんとの話で出てきた台詞でカキカキしました
    自分の魅力を熟知して最大限利用してる系の❄️くん。❄️💙が描きやすいのでそれにしましたが、お好みの相手に設定してどんどん使ってください
    背が低いから主人公以外に壁ドンできねえじゃんて気がついたのは書き終わってから
    欲しいものはいつものように雪山滑りを心ゆくまで満喫して帰ろうとしたところに、たまたま外回りから戻ってきたグルーシャさんと鉢合わせた。
    「来てたんだ」
    「あ、はい。今日こそは新記録出したかったんですけど、ダメでした…」
    時間を見つけては滑りに来て、雪山滑りの歴代最高記録を塗り替えるべく何度も何度も挑戦するものの、なかなか新記録が更新できない。というのは実は建前で、本音はグルーシャさんに会いたいから。こうして滑っているとグルーシャさんが声をかけてくれる。ほんの少しでも彼に近づきたい。
    でも記録を塗り替えたところであのイケメンで優しくて才能あるグルーシャさんは私なんかを相手にしてくれないだろうし。彼と話せなくなるくらいなら記録更新なんてしない方がいいのかも。胸がきゅうと狭くなる。
    2319

    recommended works