月の見えない夜だった。明日の講義は午後からだと遅くまでギターの練習をしていた礼音は、薄曇りの空を見て、ようやく日が変わっていることに気がついた。
先日の練習で那由多から変更を言い渡されたアレンジはコードが難解で、ここ最近は毎日のように夜遅くまで練習をしている。同じ箇所は何度も何度も指でなぞって反復して、けれど礼音はそれが苦ではなかった。次の練習ではあのふんぞり返った王様に目に物を見せてやる。そう、心を燃やしながらギターに向き合う時間は割合気に入っている。
時刻を見れば日付が変わって一時間と少し経ったところだった。さすがにそろそろ寝ようと、礼音はギターを置き、ぐっと伸びをする。寝る前に水分補給をしたくて、そのまま立ち上がりリビングへと向かった。
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