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    matubahuki_2go

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    ヨ●ンタの空白の25年間の捏造&妄想IFの本編。
    時系列は🌎5巻で逃亡して一週間後くらい。
    その11…完結 【石箱を見つけた三人】(ヨレ&ポト&コハン)
    (7/4追記)#ヨの25年間

    #ヨの25年間

    その11 【石箱を見つけた三人】(ヨレ&ポト&コハン)【石箱を見つけた三人】(ヨレ&ポト&コハン)

    ――石箱とは?
    石で作られた容器
    素材:石(大理石・石灰岩・花崗岩)や金属と組み合わせて作られる。
    形状:蓋付きで、彫刻が施されることも多い。
    理由:燃やされない・腐敗しない・水や虫にも強い。
    使用目的①:聖遺物箱……聖人の骨や衣服を入れる箱。
          迫害を恐れ地下や教会の壁に埋められた。
    使用目的②:石棺……修道院において遺体を納める箱。
    地中に埋められる。復活と永遠を表す十字が彫られる。
    使用目的③:石箱…… 秘密文書・科学記録の隠蔽用
    錬金術などの異端思想の記録を隠すための石製容器。
    隠し場所:井戸の底、遺跡の壁裏、森の聖域など。

    ***
     昼過ぎに三人と、荷物を乗せた馬は、視界の開けた草原に到着した。
    コハンスキが口を開いた。
    「ここです。ここに手がかりがある。」
    その草原は高台にあり、山や森から離れていた。
    丘の上からは、全方位の星空が観測できそうだった。
    ポトツキが、ヒゲを撫でながら言った。
    「……ここは若い頃、フベルトと二人で天体観測に来たことがある。都市から歩いて来れる距離だ。
    コハンスキはどこから、此処に手がかりがあると聞いた?」
    「酒場で聞き込み調査を。そこで俺は、天体観測をしている上級市民と知り合いになりました。
    どうやら、半年前に知り合いの占星術師が異端で捕まったらしく、その占星術師は草原の岩に印を見つけた、と。」

    ***(6/10追記)
    ポトツキの目が細まった。
    「占星術師が……印を?」
    風が強く吹き、草の揺れる音がした。
    「ええ。草原の岩に、星座のような模様が刻まれていたと言っていたそうです。だが、術師が捕まる前に、それを確認した者はいないそうです……。」
    コハンスキは、歯切れが悪そうに答えた。
    自信がないのか、だんだん語尾が小さくなっていった。
    ヨレンタは荷物から蝋板と尖筆を取り出した。
    「それがこの辺りのどこかにあるなら、天体と関係があるはず。星の位置と照らし合わせれば、場所を特定できるかもしれません。」

    ***(6/11追記)
    「なるほど! さすがだ、ヨレンタ。
    コハンスキくんは上級市民から、よく聞き出してくれた。」
    ポトツキは二人を褒めたたえた。
     コハンスキは照れて頭を掻いた。
    「は、はい。酒場を見張っていたら、天体の話題になると、誰にでも絡みにいく上級市民がいたので、もしかしたら……、と思って。実は寂しがり屋だったのか、たくさん話してくれました。」
    「問題は……その“岩”がどれなのか、ですね。」
     ヨレンタは地面に膝をつき、周囲を見渡した。
    草原は起伏が少なく、風に揺れる草が視界を遮る。しかし、突き出した岩が無数にあり、特定に時間が掛かりそうだ。
    「暗くなる前に見つけたい。三人で手分けして、岩についた印をさがそう。」
     午後の陽の光が斜めに傾き始めた。
    ポトツキの提案で、三人は担当エリアを決め調査した。
    三人と一頭の馬の影が、草原の波に溶け込んでいった。

    しばらくすると、「おーい!ちょっと来てくれ!」とコハンスキが呼ぶ声がした。
    「……この岩。向こうの岩にも……何か、彫ってあるように見えないか?」

    ***(6/16追記)
     ポトツキとヨレンタが、猛スピードで走り寄って来た。
    「はぁはぁ、何だって?!」
    ポトツキが、肩で息をしながら覗き込む。

    ――その二つの大岩には、確かに刻まれていた。
    それぞれに三つ星が彫られ、中央の星に×(バツ)印が付けられていた。――
    「これ、何かの星座ですか?」
    コハンスキが二人に聞く。
    「これ……オリオン座のベルトの三ツ星では?!」
    ヨレンタが驚きの声を上げる。
    ポトツキが岩に手を当てた。
    彼の瞳に、かすかな恐れが走った。
    「これは……この印の特徴は……フベルトのだ……。」
    ポトツキは、へなへなと力が抜けて、地面に座り込んだ。
    彼は膝をついたまま、岩の印を見つめた。
    「間違いない……彫りの深さ、線の癖、×の刻み方。
    これはフベルトが使っていたナイフの跡だ……。」

    コハンスキとヨレンタは、互いに顔を見合わせた。
     静かに、風が草をなでていく。

    「では……フベルトさん?がここに来たのは、観測のためだけじゃなかった?」
    ヨレンタが蝋板に印を写し取りながら、低く言った。
    ポトツキは呟いた。
    「何かを……残そうとしていた。誰かに気づかせたかったのか、あるいは……隠したのか。」
     コハンスキが、ふともう一つの岩を見やった。
    「印の向き、微妙にずれてませんか?真ん中の星、の角度がそれぞれで、違うような……。」
    「角度……?」
     ヨレンタが印と周囲の地形を交互に確認し始めた。
    「星の配列……いや、違う。これ、視線の誘導だ。」
    ヨレンタの目が、次第に鋭さを増していく。
    「三連星の真ん中の星、アルニラムを示す“×印”の先端が、両方のとも矢印みたいになっています。それを結ぶと、ちょうど、二つの大岩の真ん中にある、山の中腹が、アルニラムの位置になります。」

     三人は、一斉にその方向を見やった。
    「行ってみよう。」
     ポトツキがゆっくりと立ち上がった。先ほどの動揺を抑え込むように、声を落ち着かせている。
    ポトツキたちは、足早に山の中腹を目指した。

    ***(6/17追記)
     三人と馬は木々の間を抜け、山の中腹を登った。
    「フベルトさんは、重い石箱を担ぎながら、こんな急斜面を登ったんですね?」
    ヨレンタが思わず、ポトツキに聞く。
    「いや、学生時代のフベルトはロバを飼っていた。
    たぶん、ロバに運ばせたのでは?」
    ポトツキが、肩で息をしながら答える。
    「俺、十年前にフベルトさんを見たことがあります。
    二メートルありそうな大男だったから、石箱を自分で持ち運んだかもしれません。まさに神!」
    「それならフベルトは、邪教の神だな。」
    「そ、そうなんですね、私もフベルトさんに会って見たかったかも!」
     知らない人の話題で盛り上がる二人に、若干、居心地の悪さを感じたヨレンタだった。

    ――小道のように続く獣道を進む。
    ときどき、黒い鳥カフカが「カァ!カァ!」と鳴き、緊張が走る。夕暮れが迫っていた。

     やがて、ポトツキは立ち止まった。
    地面に、人が立ち入り押し潰された草と、足跡があった。
     焚き火の跡があった。
    そのそばには、何かが埋められたような、大きな土の盛り上がりがあった。

    ***(6/19追記)
    「誰かがつい最近、ここを通った形跡がある……。
    それに、この盛り土。まだ新しい。
    誰だろう? ラファウの仲間……な訳ないか。
    盗賊か、異端審問官でしょうか?」
    コハンスキが問いかける。
     それに対して、ポトツキの表情が強ばった。
    「いや、これは……!」
    彼は急いで、盛り土に駆け寄った。手が震えていた。
    ヨレンタはそっと、その手に自分の手を添えた。
    「きっと、大丈夫ですよ。」
     ヨレンタはしゃがみこみ、手で土を掘った。
    「俺も手伝う!」
    コハンスキも一緒になって、手で土を掘った。
    しばらくすると、指先に固い感触が触れた。
    石箱だった。 更に掘り進めると全体が現れた。
    蓋がずらされ、開けられた状態で、中に土が入れられていた。

    ***(6/23追記)
     石箱の中に入った土を、三人は掻き出した。中は空っぽだった。
     ポトツキは驚愕した。
    「石箱の中の、地動説の資料がない!
    まさか、異端審問官が持ち去ったのか!?」
    コハンスキが泥だらけの手で、額の汗をぬぐった。
    「掘り返した土が柔らかかった。埋められてから、一週間……といったところか。」
    ヨレンタは、身体に震えが走った。
    (一週間ですって!?
    私が捕まって、オクジーさんとバデーニさんが処刑された頃と一緒だわ……。
    ……じゃあ、夢の中でバデーニさんが言っていた
    ”ある方法で地動説の研究を残している”って、
    もしかして、石箱の事だったの……?
    二人の生きた証は、永遠に、失われてしまったの……?)
    「何てこと……!」
    ヨレンタは膝をついた。
    悔しさで涙がにじみ、唇を噛んだ。
    (簡単に諦めるな、ヨレンタ! 今までだって、足掻いたら何とかなったじゃないか!)
    「い、いえ!まだ、何か、何かきっとあるハズ……!」
     ヨレンタは、石箱の隅々を調べた。
    しかし土で汚れた石箱の壁を、指が引っ掻くばかりで、
    手の爪の中に、更に土が詰まるばかりで、何もないように
    思われた。
    「……ああ!神様!!」
    ヨレンタは、絶望から石箱の底を両手で叩いた!

    ゴン!

    甲高い大きな音がした。
    「? なんで音がなるの?」
    ヨレンタが、ピャスト伯の屋敷の井戸の底に着地する瞬間は、ドッ と、重い音がした。
    ヨレンタは、再び石箱の底をノックした。
    コンコン、と軽い音がした。
    「待ってください。この石箱、底が二重になっている……。」
    「何だと!?」
    「何だって!」
     驚いたコハンスキと、ポトツキも加わり、石箱を掘り起こした。
    埋まった石箱を、完全に掘りだすとひっくり返した。

    ***(7/1追記)(7/3修正加筆)
     石箱を立てて、コの字形にした状態で、外す作業に取り掛かる。
     それは石箱よりも、ほんの僅かに小さい石板を底に重ねて敷き、二重底だと簡単には分からない造形をしていた。
     コハンスキが指を伸ばし、慎重に底板を外す。
    「……指じゃ開かない。ナイフなら、何とか…?」
     底板と石箱の隙間にナイフを差し込み、てこの原理で、隙間をパカッと開けた。
     慎重に開けると、中には羊皮紙が入っていた。
    十年以上も二重底に隠されていた羊皮紙は黄ばんでいた。
    「見せてくれ。」
    ポトツキは、ゆっくりと羊皮紙を開いた。半分に包まれた羊皮紙の中には、紙片が無数に入っていた。
    「これは何だ?」
    ポトツキは紙片を手に取り、じっくりと見た。
     紙片には、極めて細かな文字で観測記録が書かれていた。
    「これは、ラファウの筆跡だ!」
    ポトツキが叫んだ。
    一方、羊皮紙の内側にも大きく文字が刻まれていた。
    「これは、フベルトの字……!」
    ポトツキは呟いた。
    「『真理は星々の運行に宿る』……か。」

    ***(7/4追記)
     ポトツキは、石箱の中から取り出した羊皮紙の束を胸に抱え、しばらく動けなかった。
    彼の微かに震える唇から、安堵と驚きが入り混じった声が漏れた。
    「……まさか、残っていたなんて……!」
    その声を聞いたコハンスキが、ポトツキを慰めるように、
    そっと彼の肩に手を置いた。

    ヨレンタは、その状況に戸惑った。
    「あの……これは一体、どういう事なんでしょうか?」
     ヨレンタはポトツキに説明を求めた。
    「これは……この紙片は……ラファウの観測記録だ。
    それが、フベルトが言葉を書いた羊皮紙に挟まれていた、という事は……やはり二人は一緒に研究していた……。」
     ポトツキは、大きく息を吐いた。
    コハンスキも深く息をついて、空を仰いだ。
    そして目を閉じて、十字を切った。
    「君のおかげだ、ヨレンタ。君が希望を捨てなかったから……二人の痕跡を、見つける事が出来た。有難う。」
    ヨレンタは驚いた。
    「彼らは死を覚悟して、これを隠したんですね……未来の誰かが、真理にたどり着くように。」
     羊皮紙をポトツキから受け取り、目を通したヨレンタだったが、彼女はふと足元に目を落とし、かすかな陰りがその瞳に宿った。
    (……でも、バデーニさんの……オクジーさんの痕跡が、何もない……)
     ひとつでも、何か――その人が生きていた証が、残ってていてほしかった。
     ヨレンタは、そっと羊皮紙の束をポトツキに渡すと、また石箱の中を見つめ、そっと手を入れて撫でた。

     土しかなかった。

    ポトツキが彼女に話しかけた。
    「まるで……フベルトとラファウが、君に託したみたいだな。この場所を見つけてほしいって」
     ヨレンタは、小さく首を振った。
    「違うんです……。私に聞こえたのは、別の人たちの声で、ずっと……心の中で、私を導いてくれていました。夢の中で見た言葉も……あれは、偶然なんかじゃない。あの人たちの意志が、きっとこの地に……」
    そして彼女は、ポロポロと大粒の涙を流した。
    「……でも、バデーニさんの物は、ここには……なかったんですね」
     か細くつぶやいた声に、ポトツキもコハンスキも、何も返せなかった。

     バデーニは地動説の研究を、ある方法を使い、この地に残した――
     だが、その「何か」は、どこにも見当たらなかった。

     ヨレンタはその場に膝をつき、小さな声で祈りを捧げた。
    「どうか……私に力を。あなたの想いを、私が伝えていけるように」

     目を閉じたその瞬間、風が木々を鳴らした。まるで、誰かが見守っているようだった。
     遠くで馬のいななきが聞こえた。
     冷たい風が、焚き火の跡を巻き上げ、羊皮紙の端を揺らした。
    「……戻ろう。これを安全な場所へ」

     ポトツキが提案し、三人は石箱を手早く埋め戻した。
     周囲に足跡を残さないよう気を配りながら、慎重に森を後にした。
     その背中を、星々がやさしく照らしていた。

    (――私が、伝える。必ず。決して諦めない!)

     ヨレンタの胸には、再び燃える決意の炎が宿っていた。


     異端審問官の足音は、すぐそこまで迫っていた。
    だが彼らの胸には、かつての仲間たちの意志と、確かな「真理」への信念が灯っていた。




    END
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