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    進明 歩

    あんスタ、Edenが好き。基本はジュンひよ・凪茨。
    ときどきpixivに投稿しています。
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    進明 歩

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    誓うのは神にではなく──


    合わないな…と思われたら引き返してくださいね。
    ジュンひよです。

    #あんさん腐るスターズ
    ansanRottenStars
    #ジュンひよ
    juneSun

    憂いいろのJune もとより綺麗な人だ。そんなの彼を一番近くで見てきたジュンが誰よりも知っている。日和はやや光沢のあるホワイトのタキシードを着て、手には同じくホワイトのグローブを握っている。形のいい額を惜しげも無く晒して、片側の耳に髪をかけたヘアスタイル。ステンドグラスから差し込む陽光を受けて、彼の美しさはより鮮烈だった。朗らかに笑うその姿はおとぎ話から抜け出てきた王子さまそのもの。傍らにはウエディングドレスを着たお姫様が良く似合うだろう。
     『おひいさん』だなんて、いくらジュンが厭味ととびきりの愛情を込めて呼んだところで、この人は本来、王子さまであって然るべき人なのだ。
     曇りなく眩い笑顔の日和とは対照的に、ジュンの胸の内では暗い感情がグルグルと渦を巻いていた。
     何人ものスタッフが慌ただしくジュンの目の前を横切る。それでもジュンはこの臙脂色のバージンロードの先にいる日和から目が離せなかった。
     
    「ジュンくん!!」
     ジュンに気づいた日和が、懐っこい笑顔でヒラヒラと手を振る。話をしていたスタッフにグローブを預けて、ジュンの方へと歩いてきた。
    「え、来るな、ほんと、無理……」
     ジュンはくるりと踵を返すと早足でバージンロードを戻る。開いたままの扉からチャペルを出て行こうとした。
    「ずいぶんな態度だね?」
     駆け寄った日和がジュンの腕を引く。背中にピタリと寄り添って揶揄うように言った。
    「相方の晴れ姿だよ? タキシード似合ってますねとか何かないのかね?」
    「ニアッテマスネ」
     扉に向かってぶっきらぼうに言い放てば、日和が頬を膨らませるのが分かる。
    「もぉっ、AIのほうが余っ程気の利いた事を言うと思うね」
    「……じゃあ、おめでとうございますってクラッカーでも鳴らしてやりましょうかねぇ?」
     冗談めかしたつもりの声は、思いのほかトゲトゲしくなってしまった。ジュンから褒め言葉を引き出すことを諦め、日和は話題を変えた。
    「……メアリは?」
    「今、おめかししてもらってます。スタッフさんと相性がいいみたいだったんで、少しだけ抜けてきました」
    「早めに戻ってあげてね。打ち合わせで何度か顔を合わせたとはいえ、慣れない人ばかりだとあの子が疲れてしまうね」
    「分かってます。オレはそのためにここにいるんですし」


     結婚情報誌の企画のひとつ、『愛するペットと一緒に結婚式』。今日はその撮影だった。新郎新婦を務める日和と女性モデルが、それぞれに愛犬を連れて撮影に臨む。人見知りのメアリを心配して日和は難色を示したが、クライアントの強い要望にジュンも撮影に付き添うという条件で引き受けたのである。
     
    「巴さん! 照明の調整に少し時間がかかるので、控え室でお待ちいただけますか?」
    「はーい!」
     スタッフから声がかかり、ジュンは今度こそ日和とチャペルの外に出た。ちょうどメアリを抱えたスタッフがやってくるところだった。
    「キャン!!」
    「お疲れ様です! 撮影までメアリちゃん一度お返ししてもいいでしょうか?」
    「わぁメアリ可愛いねぇ!!」
     感嘆の声を上げた日和がメアリを抱こうとするのを、ジュンが慌てて割って入った。
    「ったくもぉ〜、ダメですよ。あんた衣装着てんでしょうが」


     実際に新郎や新婦がペットと使う控え室に入り、メアリを床に降ろした。メアリは純白のウエディングドレス衣装を着ている。ふわふわのチュチュスカートも、頭につけられた大きなリボンもメアリに良く似合っていた。親バカかもしれないが世界一可愛いとジュンは思う。
    「ん〜メアリ宇宙一可愛いね! 写真を撮ろうね!」
     それは日和も同じだったようで、スマホを構えると角度を変えながら連写し始める。やがて満足したのか、ずっと黙ったままのジュンを振り返った。
    「どうしたの、ジュンくん。なんだか浮かない顔してるよね?」
    「いや、別に」
    「じゃあ、きみもメアリに何か言ってあげるといいね!」
     ジュンはメアリの前に屈み込むと、衣装を乱さないようにそっと彼女の体を撫でた。
    「……可愛くしてもらいましたねぇ。よく似合ってます…………でも嫁にはやらないっすよ」
    「えっ?」
    「オレは手放しませんよぉ。……まだまだ一緒にいたいですからね」
    「ジュン、くん……?」
     メアリへ零した言葉に、思わず日和への当てつけが滲んでしまった。これでは告白したのと同じだ。花婿衣装の日和を見て、自分とでは叶わない未来に嫉妬してしまったって。

    「ジュンくん、ぼくを見て」
     ジュンは屈んだまま日和を見上げた。正装している日和の美しさは、触れてはいけない彫像のようだった。ジュンは立ち上がる。少しでも近づいて、彼の呼吸や体温を感じたかった。視線の近くなった恋人は緩く口角を上げた。
     
    「ぼくはきみだけを愛してるね。ずっと一緒にいようね」

     明らかに上辺だけの台詞。言葉の意味とは裏腹に愛も情も感じられなかった。ふっと空気を和らげ、日和はジュンの頬をむにっと摘んだ。
    「……なんて言葉を、この場できみを安心させるように言うことは簡単だね。けれどぼくはその言葉に酔えるほどロマンチストじゃないし、きみもそのまま信じるほど子供じゃない」
     そうでしょ? というように首を傾ける。
     
    「だからぼくにできるのはこれだけ。ジュンくん、きみを誰よりも愛してる。今、この気持ちに嘘はないとぼく自身ときみに誓うね」

     今度の声色は愛に満ちていて、ジュンを慈しむように包み込んだ。
     ジュンにも分かっている。自分たちはこの先の約束なんてできないなんてこと。それでも、いつかは別れが訪れる今だけの恋愛だとしても、容易く手放してしまえるほど簡単な想いじゃない。
     ジュンは日和を愛しているし、愛されている。
     

    「巴さーん、メアリちゃーん! 十五分後に撮影始めます。お願いします!」
    「はーい!」
     スタッフからの呼び掛けに答えると、日和は鏡の前に立ち衣装を整える。これから日和はウエディングドレスを着たモデルを相手に愛を誓うのだ。まだチリッと痛む胸を、ジュンは自分自身には誤魔化せない。
     鏡越しに揶揄うような表情の日和と目が合った。
    「ふふっ、ぼくに見蕩れちゃった? タキシード似合いますねって言ってもいいね」
    「……いや、一秒でも早くソレ脱がしてやりてぇなって」
     ジュンはカッチリ留めたボウタイを解いた下にある項を、タキシードの下に隠された身体を思い浮かべた。項に吸い付いてやれば、可愛い声を漏らしてフルッと震えること。薄く作り物みたいに白い肌が、ジュンのキスを愛撫を受けると桃色に色づいていくこと。それはジュンだけが知っていることだ。
    「変な意味で言ってるね!? さっきのAI以下のジュンくんのほうがマシだったね!」
    「あと、人のものってシチュエーションもいいかなって」
     犬歯を見せてニイッと笑えば、日和は顔を赤くして唇を震わせた。
    「ジュンくんのへんたいっ!」
    「冗談ですよぉ。……あんたが人のものになるなんて、嫌に決まってるでしょうがっ……!」

     荒くなった語気を誤魔化すように、日和を後ろから抱きしめる。鏡の中の彼をじっと見つめた。
    「あんたのこと愛してます。今、この瞬間は」
     これでいいんでしょう? というように首を傾ける。日和の目は満足そうに細められ、唇は美しく弧を描いた。
     振り返った日和が目を閉じるのに合わせて、唇を重ねた。

     ずっと、一緒にいられたら──

     触れ合わせた唇から、秘められた日和の本音が伝わってくるようだった。

     ずっと、一緒にいたい──
     
     だから無理矢理に呑み込んだジュンの本音だって、溢れ出してしまっているだろう。
     こんなに好きなのに、好きだからこそ、胸が苦しい。どちらからともなく絡めた指にぎゅっと力が込められていった。

     普段あれだけ我儘に振舞うくせに、日和は肝心なところでは本音をしまい込んでしまう。そしてはなから願いなんてなかったかのように、自分自身さえも騙してしまう人だから。
    「もしもあんたと添い遂げられるなら……」
     一度は閉じ込めた本音が言葉になって、キスの隙間から転がり落ちてしまった。僅かに躊躇って先を続ける。
    「神様に認められなくても世間に祝福されなくてもいい。こんな綺麗なチャペルもタキシードもいらない。二人きりの路地裏でどんなにみすぼらしい格好だっていいのにって、オレ、本当はそう思ってます」
     日和が口に出せない心の内を、愚かなふり子供のふりで、代わりに口にしてやるのだってジュンの役目だと思うから。

     日和の眉が下がり、瞳が動揺したように揺れた。
    「そんなこと……言わないで、ジュンくん」
     ジュンの真っ直ぐな言葉に完璧な“巴日和”の一部がほろりと崩れ、素の表情が覗いた。
    「……ダメ……いや……」
     日和は俯けた顔を小さく左右に振る。セットされた髪がハラリとひと房落ちて、嗅ぎなれたシャンプーの香りが広がった。
    「どうしてです? オレだけでいいでしょ?」
    「……ぼくはそんなのいやだね! お互いの家族、は無理でも凪砂くんとメアリ、あと茨? には見届けて欲しいね」
     ゆっくりと顔を上げた日和がへにゃりと力なく笑う。
    「……ははっ、それはそうっすねぇ……!」
     ジュンからも力の抜けた笑いが溢れた。
    「まぁ、オレが今そう思ってるってことは知っておいてください。そこに嘘はないって、あんた……いや、」
     ジュンは一旦言葉を区切る。日和の手を取り胸の前で握りしめた。
    「……日和さんとオレに誓います」
     日和の瞳に僅かに盛り上がった水の膜が揺れる。
    「……うん……」
     唇をキュッと結ぶと、日和はジュンを恨めしそうに睨んだ。
    「ジュンくんのくせに! 生意気言うようになっちゃったね」
    「いくら一心同体って言ったって、あんたの考えをそのまま写すだけのオレじゃ面白くないでしょう?」
    「そうだけど、ぼくこれから撮影なんだから変なこと言わないでよね!」
    「ははっ……かわいい」
     涙目で睨みつけてくる愛しい恋人を、ふわりと腕の中に閉じ込めた。
     日和から与えられた愛情と同じだけ、またはそれ以上に沢山の愛情を注いできたつもりだ。自分だけは離れていかないと繰り返し言葉で伝え、態度で尽くして証明してきた。そうして時間をかけて脆くしてきた日和の一部。そこから漏れる彼の剥き出しの心が、ジュンはたまらなく愛おしい。

    「……さ、そろそろ行かねぇと。オレを嫉妬させるくらい、完璧な花婿を演じてきてくださいよぉ〜」
     ジュンに言われなくとも、日和は世間の誰もが陶酔するような、花嫁さえ虜にするような花婿を演じるだろう。そしてジュンの腕の中でだけ、我儘で面倒くさくて、だけど誰よりも可愛い『おひいさん』でいてくれればいい。

    「おひいさん」

     ジュンはとびきりの愛情を込めて、恋人のあだ名を呼ぶ。
    「おひいさん、オレを見て」
     日和の形のいい顎にそっと触れ、自分へ向くよう促した。日和の瞳が間近でジュンを映す。水分を含んだ睫毛が下りてきて菫色の瞳は隠された。再び重なった唇。二度、三度ゆっくりとやさしく愛撫するように食む。
     ふと視線を感じて足元を見れば、メアリのツヤツヤに濡れた瞳が二人を見上げていた。
    「こらこら、子どもは見ちゃだめです」
    「ふふっ、神聖なキスだからいいね。メアリが誓いの証人だね」
    「ははっ、じゃあメアリ頼みますよぉ〜」

     今、誓いのキスを見守るのは愛娘だけ。
     それでも遠くリンゴーンと響く鐘の音が、微かに二人の耳にも届いた。
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    進明 歩

    PAST『世界が滅びるとき、最後のふたりになるとしたら相手は誰がいいですか?』
    ※相手が死んでしまったらとの想像、夢などがあり。
    ※二人ともかなり泣く。
    ※ジュンひよですが、逆にも見える。
    ※凪砂、茨もちょっと登場。凪砂→茨。
    この中のワンシーンを書いたのが二次創作を書いた最初。恥ずかしくて投稿できず、ずっと支部の下書きにありました。公式ストが出てくるとどんどん解釈がずれそうなのでここで…
    最後のふたり『世界が滅びるとき、最後のふたりになるとしたら相手は誰がいいですか?』

     
     

    「みなさん、おはようございます! Eveの巴日和です!」
    「漣ジュンです! よろしくお願いします!」
     
     生放送の朝の情報番組にEveで出演していた。今日は日和が主演するドラマの初回放送日。主題歌はEveが務めるとあって、ジュンも日和と共にドラマと曲のプロモーションで出演していた。
     
    「それでは視聴者からの質問コーナー! 時間の許す限り訊いていきますね!」
     アナウンサーの女性が明るくハキハキとした声で進行していく。出演時間は十分程、順調にドラマの映像を見てのコメント、曲の紹介などを終え質問コーナーとなった。

    「次が最後の質問になりますね。『世界が滅びるとき、最後のふたりになるとしたら相手は誰がいいですか?』……巴さんから!」
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