花びらを数えて「いち、に、さん、し……ご、ここもだね、ろく……」
十を数えたところで、日和は鏡の前でため息をついた。
「ふぁ〜〜、おはようございます。おひいさん何を数えてるんすかぁ? んーー」
日和は眉を吊り上げて、寝ぼけまなこで伸びをするジュンを振り返る。浴衣の前をはだけてジュンに見せた。
「キスマーク! キスマークの数だね!」
「ああ、、」
ははっと笑い、ジュンも布団から出て日和の近くに擦り寄る。
「いくら好きに付けていいよって言ったからって、酷いね! これじゃ折角の温泉に入れないよね!」
「じゅういち、」
「何?」
ジュンは人差し指で日和の肩甲骨の辺りを押した。
「じゅうに、じゅうさん……」
次いで腰、腿をつつく。日和がぴくりと身体を震わす。
「じゅーし」
「ひゃっ」
尾骶骨の上をするりと撫でた。
「おひいさんから見えないところにも、まだまだありますよぉ」
へへっと悪びれもせずに笑う。
「オレは一人で温泉行ってきますかね〜!」
「ジュンくんずるいね!」
日和はジュンの浴衣を引っ張った。
「……なーんてね! そんなこともあろうかと、ジュンくんが寝ているうちにぼくも付けちゃったね! キスマーク♪」
「えっ!」
ジュンは自分の浴衣の袷を開いて確認する。
「あー!!」
臍の上辺りに可愛いらしい花びらが二、三個付いていた。
「でもこのくらいなら、手で隠しちゃえば入れますよ」
「えー! 待つね! もっと付けるから!」
ジュンを押し倒すと、鎖骨に胸元にとチュウチュウ吸い付きながら浴衣をはだけていく。
「きゃーー! おひいさんに襲われる〜!」
形だけの抵抗をみせてジュンは嬉しそうに笑う。
「ちゅ、ねぇジュンくん、チュッ、温泉行きたい?」
キスの攻撃を止めると日和は首を傾けてジュンを見た。
「……一人で行くわけねぇでしょ。それに温泉はまた行けますからね。今はおひいさんとイチャイチャしてたいです」
「ふふっ、そう言って昨日は観光もしなかったし。イチャイチャのほうがいつでもできるね?」
「いいんですよぉ、イチャイチャはなんぼしても飽きませんから……っと!」
「わ!」
日和を引き倒して抱きしめた。
「……でも昨夜沢山シたから、ぼく今はできないね……」
「いいんすよ。キスして、抱きしめ合って。立派なイチャイチャでしょ?」
「……うん、最高のね!」
「あとで美味いもんくらい食いましょうね」
……チュッとジュンが日和の腕の内側に吸い付く。
「じゅうご……」
「こら、また付けたね!」
……チュッ、日和はジュンの鎖骨の下に吸い付く。
くすくす笑いながら、ひとつ、ふたつとまたお互いに花びらを増やした。