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    MonoCloTone

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    MonoCloTone

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    IQ5くらいのしきみそ落書き

    #しきみそ

    見えるアト、見えないアト 一呼吸置いて、そこに噛みついた。
     手のひらで髪をかき上げるとざり、と刈り上げの手触りがする。顕になったうなじを見て、人間の急所を曝け出されていると言う事実に確実に興奮が募る。
    「し、四季? なんか言ってくんねーと……んっ」
     自分の下でうつ伏せになりまさしく今急所を晒しているソイツが、不安げに振り返ろうとしてきた。黙らせるために、うなじに指を添えて、押し込める。服に隠れて見えないであろうギリギリの部分に舌を這わせて、歯を立てた。八重歯が当たる感覚にソイツは下で身じろぎする。
    「いっ……」
    「……ん、痛いか」
    「いや、でもなんか、ぞわぞわする……」
     予想通りの反応を示しているのを見て、四季は満足気にほくそ笑む。そこを十分に湿らせて、噛み跡と共に吸い付いた。唾液が混じりじゅ、とちいさく水音がする。
     口を離せば狙い通りの赤い痕がうなじのキワに綺麗についていた。決して大きくも濃くもないその痕は、確かに所有欲を満たす。
    「ついた?」
    「ん、ついたよ」
    「……オレから見えないの、すげー不安なんだけど」
    「へぇ、何してると思ったんだ?」
     目の前のソイツが首を後ろに向けて聞いてくる。わざと挑発するように言ってやれば、分かりやすく押し黙った。
     今しがたつけたキスマークに、指を添えて撫でてやる。ここに、確かにあると刷り込むように。
    「ここ」
    「服着たら見えない?」
    「見えないよ」
     そう言えば、ソイツは何故か不服そうな顔をした。
    「見えた方が良かったか?」
    「いや……」
     煮え切らない声でソイツは何かを言い淀みながら、視線を彷徨わせる。続く言葉を待ってみたが、結局その口からはっきりとした言葉が紡がれることはなかった。
     うなじに張り付いた所有欲の証は、薄く唾液で光りながら、そこに存在を主張している。
    「ほら、次」
     自分の思い描く印がつけられて、満足げに四季は言った。促せば、肩越しに振り返ったソイツ──三宙と視線が噛み合う。三宙は身体を起こして、四季に向き直る。自分のうなじにあるだろうキスマークを指で探り、何度かそこに存在を確かめるように噛み締めていた。口からホッと声が漏れる。
    「そんなに欲しかったのか?」
    「そりゃ……そうでしょ」
    「それくらいいつでも付けたのに」
    「頼んでつけてもらうのと、つけられるのは別なの」
    「……ふうん」
     結局頼んじゃったけど、と。三宙はどこか不安そうに呟く。
     発端は、三宙が言い出したことだった。キスマークをつけて欲しい、なんて、やけに殊勝な態度で頼んできたから特に断らなかった。思えば今までつけたことはない。一晩で消えるような、そんな刹那的な跡ばかりだ。それが、不安にさせたのだろうか。
     三宙も四季も、人前に出る仕事をしているから下手な跡はつけられない。それは分かっていながらも、どこかで折り合いをつけられず悩んでいた。そんなところだろう。
    「オレの、好きなとこでいいんだよね」
    「ん。ドーゾ」
     ベッドの上に二人して座って、相対する。四季が手を広げれば、おずおずと三宙が身体を寄せて来た。四季の鎖骨辺りを指でつとなぞって、喉を鳴らす。無意識だろう。
    「……ん」
     鎖骨より上、首に差し掛かるところに三宙は唇を寄せた。襟が緩い服なら見える位置だ。コイツがそれを分かっていないはずがない。
     慣れない唇は拙く肌を食んで、控えめに舌を出す。湿った場所を吸い上げれば、赤い印がつく、はずだ。
    「ん、つかない……」
    「ヘタクソ」
    「う……ん、んっ」
     そこは少しばかり朱に染まる程度の色しか残らず、ただ唾液が光を反射しているだけだった。思ったようにいかない出来栄えに、三宙は首を捻る。
     何度も三宙は唇を押し付けて、その度に軽いキスだけ落として唇を離す。それが啄む小鳥のような動きで、四季は思わずクスリとこぼしてしまった。可愛い。
    「そんなガキみたいなのじゃつかないだろ」
     自分の肩にしがみつく三宙の手を取って、手首にキスを落とす。皮膚の薄く敏感なところに狙いをつけて、舐めて濡らして、歯と一緒に吸い上げる感覚を与えればすぐに印がつく。
     やってみろ、と促せば、三宙はまたおずおずと四季の首筋に顔を埋めた。ザリ、と音がして首に僅かな痛みが走る。噛みついた音だ。その後遅れてピリリとした刺激と、小さなリップ音が続いた。
    「……ついた」
    「ん、上手い」
     褒めるように三宙の髪を撫でてやれば、驚きと隠しきれない嬉しい声が上がった。素直に肩に擦り寄ってくる三宙は今夜は一段と素直だ。
    「アト、どれくらいもつかな」
    「2、3日は付いてるんじゃねえの」
    「うーん……」
     せっかく残したキスマークを撫でながら、まだ三宙は不安げだ。この機会に、全て吐き出させてしまおうか。さっきの不満げな顔も気になるし。と、四季は決めた矢先にもう一度三宙を腕に抱き込んで、そのままベッドに押し倒す。
    「え、あ、何」
    「……お前、やたら拘るけど」
    「何、に」
    「アト付けるのにだよ」
     指摘してやれば図星の視線の動き方をする。声もうわずっている。隠し切れるとでも思っているのだろうか。だとしたらこいつも大概馬鹿だ。
    「付いてないとそんなに不安か」
    「っ……」
    「お前の作った服着て、お前の好きな髪と顔で、お前のつける香水で出かけても」
     まだ、足りないのかと。
     三宙は恥ずかしいというより傷ついた顔をしていた。自分の感情を、制御できていないのだろうか。
     じっと、見つめれば視線から逃れるように身を捩った。既に腕の中に閉じ込められているというのに。
    「あ、う、その」
    「言えよ」
    「……不安、ってわけじゃないけど」
    「何」
    「四季はオレの、って、暗示、みたいな」
     口からこぼれた、可愛らしい独占欲が、三宙の顔を曇らせる。口にした瞬間、泣きそうな顔をするソイツを、四季は撫でて宥めてやった。
     暗示なんかなくても、もうとうにお前のものだと、刷り込めたら良いのに。
    「だから、見えるところにつけたのか」
    「う……はい」
    「お前も、見えるところにつけて欲しかった?」
    「……ん」
     四季がキスマークをつけた時の、あの物言いたげな態度はそれだった。自分がしたいと思うものと同等の想いを返して欲しいのいうのは当然だろうか。
     生憎、四季の思惑は違うところにあるのだ。
    「僕は、アトなんて見られなくて良いと思ってる」
    「うん……ごめ」
    「謝んなよ、僕の話」
     四季が三宙につけた赤い印を指でなぞる。服を着れば容易く隠れてしまうそれ。所在を知るのは、四季と三宙本人たちのみだ。
    「お前が付けられてる、って、分かってればそれで良いんだよ」
    「え?」
    「他人からどう思われても、服でどんだけ隠れてても。お前と僕にだけ見えてれば、良いだろ」
     これも、一種の独占欲だ。三宙を責められない。
    「他のやつになんて見せてやるなよ」
     言いたいことはそれだけと、四季は身体を離そうとした。首筋から離れた指先を、三宙の手が捕まえる。
    「四季も、思ってんの」
    「何を?」
    「オレを、独占したいって」
    「……ふ」
     真っ直ぐに、そんな当たり前の質問を投げられて、四季の口から笑い声が漏れた。コイツは邪推ばかりするくせに、こんなにも分かりきったことに気付けない。
     三宙に引き寄せられてベッドに身体が沈んだ。隣り合わせで寝転んだその体躯を、四季は腕の中に閉じ込める。耳元に口を寄せて、擦り込ませるように言葉を紡ぐ。
    「僕のことなんだと思ってるんだよ」
    「……四季には、そういうの無いと思ってた」
    「馬鹿」
    「馬鹿でいいよもう……」
     三宙も四季の背中に腕を回して、お互いの体が密着する。視界の端に赤い印が見えて、優越感が溢れていく。
    「付け損じゃんもー……」
    「人のこと試そうとするからそうなる」
    「だって……モデルしてる時の四季、格好いいんだもん」
    「そりゃどーも」
    「誰にも盗られたくないの、オレのだって……」
     世界中に見せつけてやりたいくらい。
     そう溢した三宙の本音は、深く、澄み切ったかたちをしていた。四季からしてみれば可愛いものだ。
     三宙が四季の恋人だという事実でさえ、2人だけのものにしておきたい。このキスマークが2人の間でだけ、伝わる言語であってほしい。恋人の顔をするコイツを他の誰にも悟られたくはない。そう願うほどに、四季だって。
    「僕はお前が思ってるほど良い人間じゃないよ」
    「……そういうの、見せてくれても良くない?」
    「じゃあ、暴いてみな」
    「ずっ……るいよなぁ……」
     人の本音は引き摺り出してくるくせに。と。
     三宙が拗ねたように呟く。四季の肩口に頭を埋めて、擦り付けるようにぐりぐりと押し付けてきた。
     甘えているようにも、マーキングにも見えるその仕草はどこか動物的で優越感を刺激する。
    「オレばっか言わされてる気がする」
    「気のせいだろ」
    「絶対違う!」
     ば、と顔をあげたかと思えば、三宙は四季の体の上に乗り上げて見下ろしてくる。じっとその二色の瞳に見つめられれば、吸い込まれそうなほどの至近距離で。
    「オレにも見せて」
     何もかも暴かれそうな恐怖。逃げられないという確信。その二つをなるべく表に出さないようにして。
     言われなくても、もうかなり引き摺り出されているのだ。きっと、コイツが成長するにつれてさらに自分は甘くなっていって、そのうちには全部を曝け出す日が来るのだろう。そう確信しているからこそ、今だけは、まだ。
    「四季のこと、全部知りたい」
    「……ははっ」
     真っ直ぐに射抜かれた言葉に笑うことしかできない。自分の最奥にある欲望と引き換えに、こちらの最奥も晒せと平気で言ってくる。なんて危険で、魅力的な駆け引きだろうか。やはり、まだ教えるには惜しかった。
    「今はまだ」
    「……いつになったら?」
    「そのうちな」
    「そのうちか〜……」
     未だ不満げな頭上にある三宙の顔を両手で掴んで、噛み付くようなキスを仕掛ける。そういえば、今日はまだしていなかった。
     舌を入れれば三宙は瞳を閉じて応えてくる。身体の力が抜けて、肌と肌が密着した。2人の呼吸音と心音だけが耳元でする。
     舌を絡めて、吸って、舐めて、食んで、飲み込む。最初のうちはぎこちなかったそれも、今や感触を味わうほどには慣れていた。息の吸い方一つで、次の動きが考えるより先に分かる。こうやって、2人の間だけの行為が増えていけばいいのに、と四季は心底思う。
     誰に理解されなくても、世界でたった2人だけが知っていればいい。三宙はそうではないらしいが。
    (見せつけたい、か……)
     理解できないわけではない。キスマークは牽制にもなるし、周囲からの目は自信にも外堀にもなる。生憎どちらも、四季は必要とはしなかったが、三宙には必要なんだろう。
     本当は見せたくないが。ただまあ、可愛い恋人の願いなので。ああ、こういうところが恐ろしいんだけどなと四季は心の中で呟いた。
    「っ……しき?」
     見下ろしてくる三宙の額を手のひらで抑えて、その動きを制する。口端から引いた銀の糸は、おそらく己の口元とを結んでいるんだろう。
     四季はぐいと三宙の首筋を引き寄せる。今度は、何を着てもはっきりと見えるところへ。
    「っあ、え、ひゃ」
     じゅ、と水音がした。念入りにそこを舐めて、歯を立て、吸い付く。折角なら絶対に消えないほどに、濃いアトを残してやろうと、執拗に何度も吸っては息を吐き出す。腕の中で三宙が戦慄いた。
    「ほら、ついた」
    「え、あ、っと……?」
    「欲しかったんだろ?」
    「は、え、な、あぇ……?」
     口を離して真っ赤に咲いた跡をなぞってやれば、困惑した三宙の表情と目が合った。声をかければ、言葉にならないうめきをあげる。自分で欲しがっておいて、いざ与えられればこうだ。本当に、どうしてやろうか。
    「何、足りない?」
    「いっ、いい……じゅうぶん、です」
     ここだよと三宙の指を捕まえてそこに連れて行ってやれば、安心したような、泣きそうな顔でそこを丹念になぞった。何度も、何度も、繰り返し存在を確かめるようにそれを撫でる。時折口から漏れるため息は、悪い気はしない。
    「……しき、しきさん」
    「何」
    「ありがと」
     また抱きついてきてそんなことを言うものだから、余計なことまでしてしまいそうになる。心の、まずい部分が全力でノックされているような心地だった。
     まだ、全部はやれないから。このくらいは。そう自分の中で言い訳を並べて、無言で腕の中に閉じ込めた。
    「明日、仕事でなんか言われたらどうする気だ」
    「オレのだって言っても良いかな」
    「お前がしたいならな」
     明日仕事に行けば確実にバレるだろう。その時にコイツが並べる言葉が楽しみだ。
     見えるアトと見えないアトを、二つ並べて四季は静かにため息をついた。
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