ひたすらに愛おしいから。 深夜。そっと抜け出したマイルームの扉が閉まる。
普段気にならないようなプシュ、という音が、静寂の中でやたら大きく響いた気がした。
ひた、ひた、と自分の足音を聞いて、スリッパを履き忘れたのだと気付かされる。
戻ろうと一瞬立ち止まり、億劫さに負けてそのまま歩き始めた。
頭から被った毛布をぎゅっと握る。薄い寝巻きをごと私を覆い隠すそれに、守られている感覚。
「ぁ……」
ふと目をやった、大きな大きなガラス窓。
その外側、遥か上空で煌めく星々に見惚れた。
極寒の地には雲一つなく、濃い藍色の空に散りばめられた星がはっきりと見える。
吸い寄せられるように近寄り、ぺたりとガラスに手をついた。
(綺麗……)
上手な例えも浮かばないほど。ううん、きっと美しいものをこの星空に喩えるんだ。
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