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DONEケイぐだちゃんワンドロライお題「小鳥」愛しい小鳥「ん?」
窓をコツコツと叩く、微かな音が聞こえた。
白いレースのカーテンを開け、小さな来訪者に頬を緩める。
「おや、すっかり常連ですね」
みかん色の羽の小さな鳥。
一度餌をあげたからか、たびたび訪ねてくるようになった。
妻が起き出す前のわずかな時間。コーヒーを啜っていると、この小鳥は姿を表す。
窓を開けてやれば、チュン! と一鳴きしたその子がなんの警戒もせずにこちらの手に飛び乗った。
早くご飯ください、と言わんばかりに首を傾げている。この子の為だけに買っておいた鳥の餌を、もう片方の手のひらに乗せた。
「さあどうぞ」
嬉しそうに鳴いたその子が朝食をつつく。
その様子を、手のひらに乗せたままじっと観察していた。
895窓をコツコツと叩く、微かな音が聞こえた。
白いレースのカーテンを開け、小さな来訪者に頬を緩める。
「おや、すっかり常連ですね」
みかん色の羽の小さな鳥。
一度餌をあげたからか、たびたび訪ねてくるようになった。
妻が起き出す前のわずかな時間。コーヒーを啜っていると、この小鳥は姿を表す。
窓を開けてやれば、チュン! と一鳴きしたその子がなんの警戒もせずにこちらの手に飛び乗った。
早くご飯ください、と言わんばかりに首を傾げている。この子の為だけに買っておいた鳥の餌を、もう片方の手のひらに乗せた。
「さあどうぞ」
嬉しそうに鳴いたその子が朝食をつつく。
その様子を、手のひらに乗せたままじっと観察していた。
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DONEケイぐだちゃんワンドロライ二人、初め「あけましておめでとうございます!」
「今年もよろしくお願いします」
大晦日、暖かい炬燵の中。
互いの手をギュッと握って、見つめ合いながら年を越した。
最高に幸せな心地のまま、気づいたら零時は過ぎている。
「もうお正月かぁ……あれ、今日見る夢が初夢?」
「いえ、元日からその翌日にかけての睡眠で見る夢が初夢です」
「そっかぁ」
未だ握ったままの手を擦り合わせ、セーター越しの厚い胸板にこてんとおでこを乗せた。
自然と互いの身体に腕を回し、テーブルの上で乾いているおつまみのことを忘れて身を寄せた。
そっと顔を上げ、萌葱色の瞳に映り込む。
「じゃあ、今からぐっすり寝て、二日に目が覚めたらその時に見たのは初夢?」
「それは……どうなのでしょう」
898「今年もよろしくお願いします」
大晦日、暖かい炬燵の中。
互いの手をギュッと握って、見つめ合いながら年を越した。
最高に幸せな心地のまま、気づいたら零時は過ぎている。
「もうお正月かぁ……あれ、今日見る夢が初夢?」
「いえ、元日からその翌日にかけての睡眠で見る夢が初夢です」
「そっかぁ」
未だ握ったままの手を擦り合わせ、セーター越しの厚い胸板にこてんとおでこを乗せた。
自然と互いの身体に腕を回し、テーブルの上で乾いているおつまみのことを忘れて身を寄せた。
そっと顔を上げ、萌葱色の瞳に映り込む。
「じゃあ、今からぐっすり寝て、二日に目が覚めたらその時に見たのは初夢?」
「それは……どうなのでしょう」
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DONEケイぐだちゃんワンドロライ、お題「星空」ひたすらに愛おしいから。 深夜。そっと抜け出したマイルームの扉が閉まる。
普段気にならないようなプシュ、という音が、静寂の中でやたら大きく響いた気がした。
ひた、ひた、と自分の足音を聞いて、スリッパを履き忘れたのだと気付かされる。
戻ろうと一瞬立ち止まり、億劫さに負けてそのまま歩き始めた。
頭から被った毛布をぎゅっと握る。薄い寝巻きをごと私を覆い隠すそれに、守られている感覚。
「ぁ……」
ふと目をやった、大きな大きなガラス窓。
その外側、遥か上空で煌めく星々に見惚れた。
極寒の地には雲一つなく、濃い藍色の空に散りばめられた星がはっきりと見える。
吸い寄せられるように近寄り、ぺたりとガラスに手をついた。
(綺麗……)
上手な例えも浮かばないほど。ううん、きっと美しいものをこの星空に喩えるんだ。
2632普段気にならないようなプシュ、という音が、静寂の中でやたら大きく響いた気がした。
ひた、ひた、と自分の足音を聞いて、スリッパを履き忘れたのだと気付かされる。
戻ろうと一瞬立ち止まり、億劫さに負けてそのまま歩き始めた。
頭から被った毛布をぎゅっと握る。薄い寝巻きをごと私を覆い隠すそれに、守られている感覚。
「ぁ……」
ふと目をやった、大きな大きなガラス窓。
その外側、遥か上空で煌めく星々に見惚れた。
極寒の地には雲一つなく、濃い藍色の空に散りばめられた星がはっきりと見える。
吸い寄せられるように近寄り、ぺたりとガラスに手をついた。
(綺麗……)
上手な例えも浮かばないほど。ううん、きっと美しいものをこの星空に喩えるんだ。
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DONEケイぐだちゃんワンライお題「キス」せんせ、教えて?「ね、せんせ、大人のキスってどんな感じなの?」
「……どうしました? 急に」
ケイローンに与えられている部屋へ、いつものように滑り込んだ。
そんな私に既に慣れてしまった彼は、特段気にした様子もなく机に向かう。本を読んだり書き物をしたり。いつもの鎧を脱ぎ捨てて寛いでいる。
それが悔しくて、気を引きたくて。いつからかこんな問いかけを始めた。
初めは、彼を少し困らせて満足していた。
それでも教えてくれなかったり、わからないなどとは言わないものだから、段々と調子に乗っていった。
無遠慮に座り込んだベッドの上、苦笑いを零した彼を挑戦的な瞳で見つめる。
「気になっちゃったの、教えてくれる?」
「……いいでしょう。貴女がそれを望むなら」
1808「……どうしました? 急に」
ケイローンに与えられている部屋へ、いつものように滑り込んだ。
そんな私に既に慣れてしまった彼は、特段気にした様子もなく机に向かう。本を読んだり書き物をしたり。いつもの鎧を脱ぎ捨てて寛いでいる。
それが悔しくて、気を引きたくて。いつからかこんな問いかけを始めた。
初めは、彼を少し困らせて満足していた。
それでも教えてくれなかったり、わからないなどとは言わないものだから、段々と調子に乗っていった。
無遠慮に座り込んだベッドの上、苦笑いを零した彼を挑戦的な瞳で見つめる。
「気になっちゃったの、教えてくれる?」
「……いいでしょう。貴女がそれを望むなら」
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DONEケイぐだちゃんワンライ一回目、お題「秘密」二人の秘密。「マスター、少しお話が……」
「あ、わ、開けちゃだめ!」
まさかこのようなミスをするとは。
自らを急かしたはずの用事など、頭から消え去ってしまった。
着替えの最中であったマスターが、慌ててその身を隠す。
すぐに目を反らし、ここから出ていくべきなのに……目が離せなかった。
「ご、ごめんね! 汚い、よね……」
「っ、まさか! そんなはずが、ありません……」
華奢な身体。白い肌に広がる夥しい傷痕。
もう消えないのだろう。カルデアの、最先端の技術を用いても。
細かいものから大きなものまで。最近できたような打ち身の痕は、時間が経てば消えてくれるだろうか。
「私は……こう言ってはなんですが、好きです」
「あはは、ありがと……」
1164「あ、わ、開けちゃだめ!」
まさかこのようなミスをするとは。
自らを急かしたはずの用事など、頭から消え去ってしまった。
着替えの最中であったマスターが、慌ててその身を隠す。
すぐに目を反らし、ここから出ていくべきなのに……目が離せなかった。
「ご、ごめんね! 汚い、よね……」
「っ、まさか! そんなはずが、ありません……」
華奢な身体。白い肌に広がる夥しい傷痕。
もう消えないのだろう。カルデアの、最先端の技術を用いても。
細かいものから大きなものまで。最近できたような打ち身の痕は、時間が経てば消えてくれるだろうか。
「私は……こう言ってはなんですが、好きです」
「あはは、ありがと……」
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PROGRESS次こんな感じの本出したいと思ってる君は天使。「えっと……ここだ!」
周囲の街並みよりも一段と高いマンション。
その最上階に、目的の人物は住んでいるという。
白くてふわふわした羽をばさりと羽ばたかせ、風に乗って急上昇した。
目当ての部屋のバルコニーへと降り立ち、窓に手をかけた。
すると自然に鍵が開く。
「天使に鍵など通じないのです」
先輩天使の口癖を真似しながら、悠々と室内に侵入する。
広いリビングでコーヒーを飲んでいた住人は、何故だかぽかんと口を開けていた。
突然、窓が空いたからびっくりしたのだろう。天使である私の姿は見えないのだから。
「私が幸せにしてあげる人間はこの方ですね、今日からお世話に……いえ、お世話してあげます!」
*******
1758周囲の街並みよりも一段と高いマンション。
その最上階に、目的の人物は住んでいるという。
白くてふわふわした羽をばさりと羽ばたかせ、風に乗って急上昇した。
目当ての部屋のバルコニーへと降り立ち、窓に手をかけた。
すると自然に鍵が開く。
「天使に鍵など通じないのです」
先輩天使の口癖を真似しながら、悠々と室内に侵入する。
広いリビングでコーヒーを飲んでいた住人は、何故だかぽかんと口を開けていた。
突然、窓が空いたからびっくりしたのだろう。天使である私の姿は見えないのだから。
「私が幸せにしてあげる人間はこの方ですね、今日からお世話に……いえ、お世話してあげます!」
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DONE吸血鬼の恋人(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15665104)のおまけ読後推奨である
幸せな黒猫 起床と同時に、ご主人様の懐へと潜り込む。
いつだって歓迎してもらえるから、遠慮なんてなかった。
「おはよう。今日もお元気なようで何より」
応えるようににゃあと鳴けば、それだけで彼は嬉しそうにしてくれる。
にゃあにゃあと鳴きながら、ご主人様の胸板に肉球を押し付けた。右、左と交互に捏ねる。
幸せな朝のルーティン。
やがて朝食にしようと、彼が私を抱き上げた。
人間にいじめられて怪我をして、路地裏で震えていた。
偶然通りかかった彼に拾ってもらってからは、もうメロメロで仕方がない。
最初はちょこっとだけ警戒したけど、甘いミルクを振る舞われてからはすっかり心を許してしまった。
朝、一緒に起きて、ご飯を食べて。お昼寝したり、遊んだり。
892いつだって歓迎してもらえるから、遠慮なんてなかった。
「おはよう。今日もお元気なようで何より」
応えるようににゃあと鳴けば、それだけで彼は嬉しそうにしてくれる。
にゃあにゃあと鳴きながら、ご主人様の胸板に肉球を押し付けた。右、左と交互に捏ねる。
幸せな朝のルーティン。
やがて朝食にしようと、彼が私を抱き上げた。
人間にいじめられて怪我をして、路地裏で震えていた。
偶然通りかかった彼に拾ってもらってからは、もうメロメロで仕方がない。
最初はちょこっとだけ警戒したけど、甘いミルクを振る舞われてからはすっかり心を許してしまった。
朝、一緒に起きて、ご飯を食べて。お昼寝したり、遊んだり。
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DONEモブ視点異ぐイチャイチャ健全盗み見た幸福「あ、あの、これ書類です……」
「どうも、そこへ置いておきなさい」
「は、はい!」
こちらをチラリと見た萌葱色は、そのまま書類へと戻っていく。
妙な緊張感に責められているような気がしてしまう。そそくさとデスクに戻り、ふぅ、と息を吐いた。
「怖ぁ……」
「そう? 寡黙なイケメン、眼福じゃない」
「寡黙すぎますよ……にこりともしないじゃないですか」
同僚は軽く言ってくれる。
苦手な上司に聞こえないよう、小声でやり取りをしているが……聞こえているのではと不安になった。
「でも、怒鳴ったりしないでしょ?」
「それはそうですけど、あの冷ややかな目で見られると……心臓がギュッてなります」
柔らかな緑色なのに、冷たい視線。
2039「どうも、そこへ置いておきなさい」
「は、はい!」
こちらをチラリと見た萌葱色は、そのまま書類へと戻っていく。
妙な緊張感に責められているような気がしてしまう。そそくさとデスクに戻り、ふぅ、と息を吐いた。
「怖ぁ……」
「そう? 寡黙なイケメン、眼福じゃない」
「寡黙すぎますよ……にこりともしないじゃないですか」
同僚は軽く言ってくれる。
苦手な上司に聞こえないよう、小声でやり取りをしているが……聞こえているのではと不安になった。
「でも、怒鳴ったりしないでしょ?」
「それはそうですけど、あの冷ややかな目で見られると……心臓がギュッてなります」
柔らかな緑色なのに、冷たい視線。
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DONE6/19の鯖ぐだオンリーイベント、天文台のキセキの灯火2で頒布したケイぐだ結婚合同誌「Sagittarius honey」の小説のおまけです!愛し子を待つ間は「ふんふんふ~ん、てんてんてん!」
調子外れながらも愉しげな鼻歌が、聴こえてくる。
愛らしいことこの上ないと緩む口元に手を当て、表情を作り直した。
「あ、おかえりなさい!」
玄関からリビングへと進めば、可愛い妻が重たげな腹をさすりながら振り返る。
柔らかな笑みを浮かべつつ彼女に近寄り、その肩を抱いた。
「ただいま、立香……ところで、どうして動いているのです?」
「え? ……あっ! えーと、うーんと……」
一切警戒をせず捕らえられた少女は、逃げられなくなってからようやく慌て始める。
その手から雑巾を奪い取れば、ぷくりと丸い頬が膨らんだ。
「安定期なのにぃ」
「だからとて、無理をしていいわけではありません」
「無理ってほどじゃ……」
1536調子外れながらも愉しげな鼻歌が、聴こえてくる。
愛らしいことこの上ないと緩む口元に手を当て、表情を作り直した。
「あ、おかえりなさい!」
玄関からリビングへと進めば、可愛い妻が重たげな腹をさすりながら振り返る。
柔らかな笑みを浮かべつつ彼女に近寄り、その肩を抱いた。
「ただいま、立香……ところで、どうして動いているのです?」
「え? ……あっ! えーと、うーんと……」
一切警戒をせず捕らえられた少女は、逃げられなくなってからようやく慌て始める。
その手から雑巾を奪い取れば、ぷくりと丸い頬が膨らんだ。
「安定期なのにぃ」
「だからとて、無理をしていいわけではありません」
「無理ってほどじゃ……」
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DONEポメガバース風ケイぐだちゃんわくわくポメ曜日! いつもよりずっと短い自らの腕を見下ろす。
とっても短くて、ふわふわ。何故だか自然に舌が出てしまう。
(やだぁ……どうしよう)
めそめそしながら床に落ちたスマホを肉球で操作し、後輩に助けを求めた。
確かに最近は疲れが溜まっていたけれど、まだ頑張れると思っていたのに。
このおかしな体質……疲れがピークに達すると、ポメラニアンになってしまう体質を、恋人に隠していたことが負担だったのだろうか。
着ていたスーツが床に散乱している。何の備えもなく、ポメラニアンになってしまった証だ。
この短い前足では、片付けの一つもできやしない。
いつもよりずっと高く見える天井のせいで、ここが自分の家ではないような気がしてくる。
1438とっても短くて、ふわふわ。何故だか自然に舌が出てしまう。
(やだぁ……どうしよう)
めそめそしながら床に落ちたスマホを肉球で操作し、後輩に助けを求めた。
確かに最近は疲れが溜まっていたけれど、まだ頑張れると思っていたのに。
このおかしな体質……疲れがピークに達すると、ポメラニアンになってしまう体質を、恋人に隠していたことが負担だったのだろうか。
着ていたスーツが床に散乱している。何の備えもなく、ポメラニアンになってしまった証だ。
この短い前足では、片付けの一つもできやしない。
いつもよりずっと高く見える天井のせいで、ここが自分の家ではないような気がしてくる。