Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    kg4awt108

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 16

    kg4awt108

    ☆quiet follow

    マシュマロのリクで頂いた、K暁前提の息子→暁人の小説。4500文字近くになりましたので、キリのいいところでふたつに分けて出します。

    #K暁

    さよなら、俺の(1)土曜の昼下がり、母の洗い物のカチャカチャと鳴る音と、自分が読んでいる雑誌がめくれる音がする中、突然インターホンが鳴る。

    「なにかしら?ちょっと出て」
    「わかった」

    どうせ宅配か、なにかの勧誘だろうとインターホンに、今出まーすと返事をして、玄関を開けた。するとそこには、いつもの宅配のおっさんや、勧誘のおばさんではなく、一見普通の青年が立っている。でも、俺は目を奪われた。

    長いまつ毛に縁取られた瞳は曇りなく、そして優しげにこちらを見据え、綺麗に微笑んでいるが、どこか哀愁が漂っており、そして自分を見た時にその笑みが悲しげに、崩れそうになる。
    そんな青年をただただ言葉なく見つめていると、彼が口を開く。

    「えっと…ーーさんのお宅で間違いないでしょうか?」
    「あ、はい…そうですが、どちら様で?」
    「ーー?どうしたの?…あなたは?」

    お互い、無言で見つめあっていたためか、母が出てくる。母も青年を見ると、不思議な表情を見せるから、知り合いでもないらしい。
    では、なぜうちを知っているのだろうか。

    「突然すみません、僕は伊月暁人と申します。けぇ…お父様の、ーーさんから遺言を預かって来ましたので、それを伝えに来ました。」

    どうやらこの青年、伊月暁人さんは父の部下らしい。遺言、といいことは父は死んだのか…。母は一瞬黙ると、どうぞと家の中へ通した。伊月さんはお邪魔しますと頭を下げて家の中へ入った。

    椅子に座ってもらい、早速本題に入る。
    その時に彼は、父がずっと持っていたであろう手帳を差し出す。母がそれを受け取り、開くとそこには、自分がだいぶ小さい時に家族で撮った写真が挟まっている。
    大切に持ってているとは思いもしなかった。

    「ーー、旦那は亡くなったのですね。」
    「はい…、渋谷の事件はニュースでご存知だと思います、ーーさんはその事件を追っていました。ちゃんと務めを果たされて…っ、亡くなりました…」
    「…そうですか。その時に遺言を預かったのですね…なんと仰っていましたか?」
    「『俺は、最後まで生き抜いた』と…奥様と息子さんに伝えて欲しいと頼まれました…。」
    「ーーさんは、自分はいい父親でなかったと、自分で言ってました。僕はそれでも、不器用ながらに、家族を思っている事も知ってます…見ず知らずの他人に言われても、なんだと思いますが、どうしてもこれだけはお伝えしたかった…。」

    物心がついた頃から、殆ど父を見かけることはなく、母がワンオペで頑張ってくれて、2人で暮らしてきた。今更そんなこと言われたって、もうどうすることも出来ない。父は死んでしまったし、そもそもあまり帰らないから。この家には居心地が悪いような顔をしてたのだって知っている。昔はおもちゃを買ってくれたりしてたが、大きくなるにつれて、スーパーカーなんて興味も薄くなった。それさえも気づかなかったくせに、何を。『生き抜いた』だなんて…っ

    「帰ってこなかったくせに…今更なんだっ…!父親ぶりやがって…!」

    荒々しく、思いの丈を口に出す。彼に言ってもどうしようもないことは分かっているのだが、ぶつけずにはいられない。彼もそれを分かっているらしく、悲しげにこちらを見て素直に言葉を受け取っている。そんな俺を母は、背中を撫でて宥めてくれる。

    「伊月さんに言うのも気が引けますが、息子の言う通り、家族の絆はだいぶ解けていました。とりあえず、遺言はお預かりします。仕事などの遺品などは…そちらでお願い致します。こちらはお寺に頼んで小さなお仏壇だけ置いとくことにします。あと…ありがとうございます。最後までーーの隣にいてくれたことを。貴方だからこそ、それを託せたんだと思っています。」

    その言葉に伊月さんはくしゃりと泣きそうな顔をする。そうだろう、遺言を託され、でも言葉は届いても想いは叶わずにいる。むず痒いはなしだろう。母は小さく笑うと、ちょっと待っててと言って、リビングを出ていった。

    「伊月さんは、父と同じ仕事を?」
    「いえ、僕は普通の大学生ですよ。まぁ、助手みたいなことはしてましたが。」
    「そうだったんですね…あ、俺に敬語はいいですよ。伊月さんの方が年上ですし…。」
    「…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね。ありがとう。あと、暁人でいいよ。」

    母が戻ってくるまでは、当たり障りなく世間話をした。自分の歳だとか、趣味だとか。
    割と暁人さんは、聞き上手だった。兄がいたらこんな感じ何だろうか。
    母が戻ってきて、伊月にこれを、と差し出す。それはいくつかの父の写真だった。

    「旦那の実家に帰れば、もうちょっとあると思いますが。これを伊月さんに持っていて欲しいんです…。」
    「えぇ…そんな、頂けないです…」
    「うちで保存するよりは、伊月さんに持っていてもらった方が、あの人も喜ぶと思います。
    最後まで、あの人を信じて隣にいたのは伊月さん、貴方でしたから。」
    「……頂戴致します。」

    そうして写真を受け取ると、暁人さんは写真の中の父をそっと指でなぞった。
    うちの母親と暁人さん、これではまるでどっちが本妻か分からない程に、暁人は悲しい目で父を見る。

    「写真、ありがとうございます。伝えたい事はお伝えさせていただいたので、そろそろお暇させていただきます。」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭👏👏👏👏👏👏👏😭😭😂😂💕💕💕💕💕💕💕💕💘😭☺☺❤👏😭🙏😭😭😭😭❤☺❤😭❤🙏😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works