花を吐いているところが飯綱くんに見つかっちゃったよ☆
「誰だ?」
「誰って・・・そんなの言えないよ」
もし僕のこの吐いた花が、君への思いだと知ったあの人が、一瞬でも顔をこわばらせるのを見るのが怖いんだから。
敵わない恋心だから捨てるつもりでいたのに
「あ~。んな怖がることじゃねえと思うけど・・・というかきっと大丈夫だし」
「?」
「まぁ、お前は分かんなくていいよ。」
とりあえず、まぁでも、治療はしなきゃなんねぇけどな、と言いながら
飯綱君は僕の両手を廊下の壁に押さえつけた。
「え?なななな何?!」
「凜太郎」
「え?」
「違ったか・・・じゃあ学園長」
「何?」
「これも違う、恵比寿先生」
「…もしかして僕の好きな人当てゲームかな?」
「それ以外にねえだろ?。山崎さん」
「ふっざけんな!僕はいいた・・けほ!!!」
「あ~~ほら。次の段階着ちまってんじゃねえかよ・・」
はらはらと口から藤の花が零れるそれにのどの痛みと嘔吐する反射と、無理やり好きな人を聞き出そうとする飯綱君に涙がにじむ。
「放っといて。お願いだから・・・」
(付き合いたいなんて思ってないから。そんな分不相応なこと思えないんだから。
ただ、好きでいるだけはさせてくれてもいいじゃないか)
けほ、けほ、と口から花が零れるたびに、涙も零れて
苦しくて苦しいのに。
それでも飯綱君は容赦がなくて。
「……たかはし先生」
びくり、と肩が動いてしまった
「あ・・・」
「・・・なるほど」
こんな些細な動作で、動物妖怪の彼が気づかない筈がないじゃないか
しまったと思った時にはもうすでに時遅く飯綱君は校内に届くような声でかの人の名前を呼んだ
「おい!たかはしーーーー!たかはし先生ーーーーーーー!」
「呼んだー?」
「・・・なんでいるんですかーーー!?」
「え?学校に保険医が居ちゃ駄目なの?」
しかも、今僕呼ばれたよね?なんて、ことりと小首を傾げる彼に対して
「呼んだよ」
「呼んでません!」
「・・・・どっち?」なんて困ったように笑う癖にほてほてと近寄ってくる彼は床に散らばる花に気づいたのだろう「なるほど」と笑った
いや・・なるほどって
飯綱くんもたかはし先生が気づいたことを当然のように受け止めてるし
本当に泣きたいんだけど、というか泣いてるけれど。泣かないで居られるかこんな展開!
「僕を呼んでくれてありがとうね。ただ、その体勢は気に食わないけれど」
「・・・殺気は閉まってください。この体制は不可抗力だからな!」
ひやり、としたたかはし先生の声に(やっぱり僕に好きになられたら困るよね)なんてさらにぼろぼろと涙が落ちてきて。
「まぁ、今回だけは許してあげるけれどね。ちょっとそこどいてくれるかな?」
数日間の花の嘔吐で疲れ切った身体と好きなことをバラされてぐちゃぐちゃになったメンタルで逃げ出すどころか立ち上がる気力も失せて座り込んだ僕の手を掴んでいた飯綱くんをどかして、片膝をついたたかはし先生は涙をぬぐってくれた。
「お兄さん辛かったね」
「ごめん・・なさい」
「何が?」
「・・・・・」
「何も、悪いことなんてないよ」
涙をぬぐってくれた指を滑らせ、両手で頬を包み込んで視線を合わせられる。
「だって僕も君が好きなんだから」
そういって僕の唇に触れたそれは、とても温かかった。
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上とは違う展開の物
「おーい!たかはし先生!たかはし明ーーー!」
「ちょっと!何呼んじゃってんの?」
幾らあの人がスーパードクターだとしても・・・うん・・・治せそうな気はするけれど・・
「呼んだー?」
「ぎゃー!来ちゃったじゃん?」
「呼ばれたのに?。というかどう」
どう、で不自然に止まった言葉にたかはし先生を見遣れば
「・・・花吐き病・・かな?え?なにお兄さん恋しちゃってるの」
「ひっ」
床一面に散らばる藤の花を見ながら彼は言った
(え?!何?怖?・・・え?「お前には恋なんてしてる暇ねぇよ」って・・・コト!??)
「ねぇ?どうなのお兄さん」
「たかはし先生。あんまり殺気だすなって」
「秦中先生は黙ってて。ねぇ。お兄さんはかなわない恋をしているの?誰?」
(誰って・・・誰って言えるわけねぇよ!)
貴方が好きです、なんて
(あと、飯綱君が読んだ癖に、なんでお前が怯えてんだよ!??)
解せぬ
解せぬし理不尽だし、ここ数日花吐いているからかちょっと朦朧としてきたし
喉も痛いし、頭も痛い
痛い痛い痛い痛い
痛すぎてもういいや、って自暴自棄だった。
いっそ失恋しちゃえばいい、なんて
だから
「君だよ。君」
「へ?」
僕?だなんて聞き返してくる彼に
(あ~~やっぱり好きだな)なんて思って切なくなるけれど
うん。けどいっそすっぱりさっぱり振ってくれてた方がいい
「安倍晴明は、たかはし明が好きなんですよ」
と言えば
どん、という衝撃の後で温かい身体に抱き込まれた