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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    mitotte_kazu

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    レドリアさん(@ryudran663 )の誕生日を祝うナイトさん(@haruorigin )の話

    生誕祭 依頼を終え帰宅した自分を待っていたのは豪勢な食卓だった。早かったなと鉄板に乗った塊肉のローストを手に呟いた彼に何事かと尋ねてしまう。新しく聞いたレシピを試したかっただけだと後頭部を掻いた彼がまたキッチンへと消えていく。温かな湯気が立ち昇る食卓へと視線を落としていると、座って待ってろ、とキッチンから鋭い声がした。言われた通り腰を下ろしていると、中央に開けられていたスペースにそっとケーキが載せられる。
    「これは、」
     思わず顔を上げると照れたように口角を下げた彼が何も言うなと言わんばかりの表情で蝋燭に火を灯し出した。ここでようやく今日が何の日か思い出して彼を見ると、気まずそうに目を逸らされる。おめでとう、と素っ気なく言われるが、彼なりの照れ隠しなのはよく分かる。対面に座った彼が火の灯された蝋燭か刺さったケーキを差し出してきた。ありがとうと返し、一息で吹き消す。

    「ケーキは食後だろ」
     吹き消された蝋燭を外したケーキを保冷機に片付けた彼にぶっきらぼうに言われ、それもそうかと納得してしまう。それよりも、と再度席についた彼によって彩られた食卓へ視線を移した。こんがりとローストされた塊肉はウルダハでは高価な部類に入る、希少部位らしい。切り分けながらすげなく説明してきた彼が皿を差し出してくる。礼を述べながら受け取り、口に運ぶ。ロースト前にしっかり焼き目がつけられており、十分加熱されていても中はパサつくことなくしっとりと仕上げられていた。焼き上げている間に染み出した脂と旨味をじっくり吸い込みながら一緒にローストされたポポト等の野菜も美味だった。噛み締めるように美味しい、と感想を漏らした自分に当然だろ、と彼は返してくる。
    「英雄殿の金で一番良い肉用意したからな」
     側から聞くと乱暴な言い草だが、目が肥えた彼がその良い肉を吟味する意味を知っている自分は苦笑しながらもう一切れを口に運んだ。

    「それも冷める前に食えよ」
     自分の分の肉を切り分けた彼が、フォークでスープボウルを差してきた。手を伸ばすと鮮やかな赤色が目に入る。
    「クリムゾンスープか!」
    「もどきだけどな。ロフタンの肉じゃねぇ」
     それだけ言って肉を頬張った彼に首を傾げながら掬ったひと匙を口に運ぶ。ビートなどの野菜の風味とサワークリームの酸味が爽やかで、思わず息を吐いた。数口飲んでいる内、大きな肉の塊と遭遇する。それがじっくり柔らかく煮込まれたものだと気付き、先程の彼の発言に納得した。スプーンだけでほろほろ崩れる肉は一体どれだけの時間をかけて煮込まれたのか、想像がつかないがあまりの美味さに思わず唸ってしまう。
    「バゲットに乗せても美味い」
     ザクザクと切り分けた一切れを差し出しながら彼が言った。彼が言うなら間違いないだろうとわかってはいたが、香ばしいバゲットと柔らかく煮込まれスープの旨味を含んだ肉のハーモニーは最高だった。頬杖を突いてにやにやと手料理を堪能していた自分を眺めていた彼がふいと目を逸らす。

    「……まぁ、肉は使い回しなんだけどな」
     口元まで運んでいたスープと肉が乗った匙に視線を落とした。不思議そうな顔をしていたんだろう、塩胡椒だけして軽く焼き目をつけた先程の希少部位の肉塊を少しクリムゾンスープ用に回したと説明してくれた。手元のスプーンとローストされた肉塊とを交互に見ていると彼がなんだよと軽く睨みつけてくる。
    「いや、同じ肉なのにこんな仕上がりに差が出るんだなぁと……」
     しっとりと仕上がりながら肉の旨味は逃がさない食べ応えのあるローストと、ほろほろと崩れスープと馴染みながらも存在感はあって、と上手く説明出来ないもどかしさと共に両手が空を舞う。そんな自分の姿が面白かったのか、彼がくつくつと笑い出した。とりあえず、
    「ナイトの腕前は凄いなって話だ」
     一番大切だと思う部分だけ伝え、冷めてしまったひと匙をまた口に運んだ。気恥ずかしさから彼の顔を見れず、目の前のスープに集中していると、小さくそれはずるいだろ、と聞こえた気がした。

     他にもラノシアオレンジを使った新鮮なサラダやラザハンのスパイスが効いたフライドポポトなど卓上に並べられた料理を楽しんだ。彼に言われた通り、腹八分目まで御馳走を堪能してから再度食卓へ登場してきたケーキに臨む。贅沢にフルーツがあしらわれながらも甘すぎないそれは、シンプルに具材の美味しさが味わえた。
    「こういうのも作れるんだな」
     デコレーションなど大変だろうにと暖かな紅茶を口に運ぶとあー、と少し考え込まれる。
    「そっちより計ったり混ぜたりとかのが厄介なんだよな」
     そんな凝ったものはしていないから、と何気なく呟いた彼に首を傾げてしまう。曰く、分量や焼き加減によっては仕上がりに顕著に差が出るのだと言う。
    「その辺りは料理のが楽だな。多少雑に作っても逆に焦げが旨味に変わったりするし」
     話に集中した分、蒸らしすぎたのかやや渋みが増した紅茶に彼が顔を顰めた。
    「シロップとミルクを足してイシュガルド様式で誤魔化す」
     席を立った彼の名を呼ぶと苦々しい声で短く言われた。そこまでしなくても良いのに、と思ったら表情に出ていたのか、俺が気になると簡潔に付け足される。彼の手によってイシュガルド様式に生まれ変わったミルクティーは、腹もこなれて自分が思っていたより蓄積されていた疲労に染み渡る甘さと美味さだった。

     祝宴の礼に後片付けの手伝いを提案すると、自分でやった方が早いと切り捨てられる。彼の言い分も最もなので大人しく従い、慣れた手つきで食器を洗い水分を拭き取り片付ける彼を眺めていた。
    「……本当に、ありがとう」
     料理だけでなく片付けまで無駄のない動きでこなしている彼の背中に改めて礼を伝えると、何がだよと返された。どこから言うべきかと迷い、ええと、と考え込む。
    「作ったりだけでなく……食材の準備とか、」
    「食材なら英雄殿がお礼に貰ってきたのも使ってるからな」
     言われてみれば見覚えのある野菜や果物が使われていた。自分より遥かに有効活用してくれている彼につい苦笑してしまう。
    「あとはこう、メニューを考えたりだとか……」
    「そんな良い所のフルコースみたいに頭使ってねぇよ」
     愉快そうな声の彼の肩が揺れている。最後のいちまいの食器を片付け終えたらしい彼は手を拭いてこちらへ向かってきた。
    「それに英雄殿が各地で聞いてきた、試してみたいレシピを適当に作っただけだ」
     彼らしい乱暴な物言いだが、それだけの理由であれほどの料理に手間や時間を掛けるものではないとわかっている。だからこそその根底が嬉しく、愛おしく感じられた。

    「……今度は、一緒に作らせてほしい」
     勇気を出して切り出してから彼の様子を伺うと、丸くした目を意地悪く細めて邪魔すんなよ、と笑いかけてきた。
    「ご教授願わないとな」
    「俺の指導は厳しいぜ?」
     ニヤニヤと見慣れた楽しそうな笑みを浮かべた彼に、いつか本場の味を共に嗜みたいとは流石に気恥ずかしくて言えなかった。揶揄われる未来も見えたので改めて礼を伝えると、ああそうだった、と思い出したように微笑みかけられる。
    「誕生日、おめでとう」
     噛んで含めるような、彼の祝いの言葉が程良く満たされた全身に染み渡るような感覚がした。
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