雰囲気情緒特化型漫画を描きたくて描いたのに情緒もへったくれもない振り返り備忘録を！！！！書く！！！！！(全季節描き終える頃には忘れてそうなので今！)

言葉が好きでいつもモノローグ過多になりがちなので、今回はあんまり説明しない漫画を目指したつもりでした。一応サイレント漫画以外だと当社比言葉が過去一少ない漫画になったのではと思います。
あといつも季節感ゼロなので季節感のある漫画を描くこと。季節感のあるからいちを季節に合わせてお届けするのって季節の便りって感じで良くない？というきっかけで作り始めた漫画です。
長めの漫画を描くときはいつも自分なりの目標やこういうのをやりたいっていうのを決めて取り組みます。多分読み手からすると全部同じに見えると思うのですが、自分の中ではいつも己との闘いです…昨日の自分を超えていけ！

今回のからいちのテーマは、『気づかないうちに自分たちの立っている場所が少しずつずれていくふたりの話』。兄弟という場所からずれていくからいちを季節ごとに切り取る漫画です。冬の話は四季の最初の話なのでまだほんの少しずれただけで、始まりも経過も結末もずっと曖昧な展開になっているのは仕様です…
いつも描いてるからいちは“結ばれる過程”なんですが、今回は“曖昧な関係”の方にフォーカスしたからいちを描きたいな～と思っていて…(似てるけどちょっと違うんです…多分)上手くできるかはまだわからないんですが、自分ではあんまり描いたことがないタイプのふたりかなと思うのでわくわくしてます。

展開が穏やかで曖昧なものを言葉で語らず、でも漫画からは季節感や雰囲気や何かを感じ取ってもらえるように、今回は特に絵を頑張りました。ふたりがいる日常の光景を切り取ったものにしたくて、背景も自分なりにしっかりめに描いたつもりです…下書きの段階では描き切れるかなぁと思いましたが、思いの外楽しくできてよかったです。やりたかったことがひとつできた気がして、自分の中では漫画を描くうえで自信になりました。今の自分では描けないと思って寝かせていた他のからいち漫画にも取り組める気がする…！
背景や夜の描写がよかったと言っていただけたり、あと言葉で説明しない分、間(ま)を気にして描いたつもりだったのですが、その間が色っぽいと言っていただけたのがとても嬉しかったです。

最初から最後まで四男はずっと同じことを言っているし、ふたりとも「好き」だなんて一度も言っていない…言わずに終わっている。実際次男の中ではまだ、言葉で形容できるような輪郭を持った感情ではないのだと思います。もっと曖昧で無自覚的で、漫画の最後の方に言っていたことが今の次男の気持ちのすべてなんだと思います。
一見ハッピーエンド感があるんですが、実はこのふたりは相互不理解のままなんですよね…でも、この漫画を描き始めたときは続きを描くか決めてなくて、とりあえず冬の話だけでも読めるようにハッピーエンドと受け取れるようなニュアンスを残したので、ハッピーエンドだ！と思って頂いて全然大丈夫ですし合ってます…！ふたりの立っている場所は物語の初めに比べると間違いなく少しずれていて、これからずるずるずれていきますのでお楽しみに。


あとは気に入ってるシーンとか説明のないシーンの仮設定覚書。
あくまで仮設定なのでそれがすべてではないですし、読み方は自由なのでゆるく見てもらえたら幸いです。なんかいろいろ言っているけど実際あんまり決めずにふわっとしたまま描いている部分が結構あります！

・路地裏のﾈｺﾁｬﾝ可愛く描けた！

・四男が次男に煮干しを渡してﾈｺﾁｬﾝを次男の方に向けるシーン。次男が一瞬固まっているのは、「どっちのﾈｺﾁｬﾝにあげる…？」と思っているからです。多分それ以外の感情も生まれてるけど無自覚なので…。

・「そう。」の四男の顔、結構気にして描きました。笑ってるような笑ってないような顔にしたくて…

・夢の中でﾈｺﾁｬﾝが四男になっているシーン、非常に癖に忠実に描きました。めちゃくちゃ好きなんです手からごはん食べさせるのが(早口)

・夜中に揺り起こされて、別におなかすいてないのに呼ばれるまま夜中のラーメンに付き合ってくれる次男、いいなぁと思います。普通に眠そうにしてて特にニコニコもしてない感じが好きです。カップ麺は四男が勝手に作りました。
次男がつられて食べてみようかなという気持ちになるような四男のほくほく顔が描きたくて、可愛く描けたなと満足してます。ラーメンの湯気とおいしい匂いで結局食べる気になる感じもいいなぁ～と思います。ラーメンのシーンお気に入りです。

・「誰にも迷惑かけてない」のところの絵、頑張りました。いつもの自分ならまずやらないアプローチです…。今回は全体的に構図とかを当社比結構冒険してます。上手くいかなくて投げ出したくなるか自分のモチベの賭けだったんですが、楽しむ方にいけたのでほっとしてます…

・「必要か？」のところお気に入りです。シルエット…えっち…

・「いらない」のあとのほっぺたに肉球スタンプ…これは…！すきすきスタンプ！！(からいち短編集『Moment.』収録話『すきすきスタンプ』参照)

・夜空のコマも頑張りました！ちょっとリアルめの電柱と電線が描きたくて、毎日電柱を見上げながら写真撮りながら道歩いてました。

・泡沫では酔ったときダイレクトに「好き」がボロボロ出ている感じでしたが、今回の話では一筋縄ではいかない本音の出方になっています。たとえば「本当は誰でも乗れる背中なのが嫌」というような。四男は「誰でもいいなら」を免罪符に次男に必要だと言えているので、「誰でもいい」を否定したら破綻してしまうのです。でも今は酔っているから自分を騙せない。だから「降りる」。普段だって「誰でもいい」に甘えて安心している部分ももちろんあるんですが…。

・この漫画で一番天才のコマは標識のコマ！です！！！思いついたとき人生で一番免許持っててよかったと思った。
『←ここまで』の標識は、『一方通行はここまで』の意………

・次男が空を見上げてるシーンから四男が目を伏せるまでのシーン、感想で好きなシーンを挙げてくださった方の多くが挙げられていてウオ～～～！ってなりました。印象的なシーンにしたくて自分でもこだわって描いたところなので嬉しいです。

・「酔ってるのにほっとけないだろ」って言ってる次男、いい感じにお兄ちゃんみがあるように描けたのがよかったです。腕をつかまれても手を繋がれても、そのたった一言で優しさによる行為だと思い知って、それに歓喜も絶望もしない四男……と、四男目線だとそうなってしまうところがまだまだすれ違ってるふたりです。

・「そこにいてくれるだけでいい」、四男はずっと同じこと言っているけれど、それを受け取る次男の眼差しはどんどん変わっていってます。
何も持ってないはずの四男から次男は何かを受け取っていて、それはあったかいもの…

・星空の下で雪は降るのか(雪が降るのは曇り空なんじゃないか)という疑問があったときにちょうどあの大寒波が来て、ほんとにナイスタイミングで夕暮れにちょうどいい感じの雪が降ったんですよね…！しかもそのときちゃんと空には晴れ間があって星が見えたので、自信をもって雪と星空を描くことができました。季節に合わせて季節の漫画を描くとこういう利点もあるのかと実感しました…！実体験ほど助かる資料はない！

・夜のシーンはトーンを貼るのも頑張ったので、綺麗な仕上がりになった気がします。印刷でどれだけ上手く再現されるかはわからないんですが…そういう点でも本にする前に一度画像で見てもらえたのはよかったと思います。温度を感じるって言っていただけて嬉しいです…！


あまりにふわっとしていてやまおちいみなしなからいち(からいちと言えるほどからいちしてない)なので、中身を伏せたまま本をお届けする勇気がなくて、かといって中身を確認していただいたらそれはそれでいよいよ本の需要なくなるんでは？という気もして…結局まず見てもらいたかったので公開だけしたのですが、本…まだ需要ありますかね…
自分的には、需要関係なく自分が読みたいから続きの春も描こうかな～その先で5月イベントあるし新刊にしたらちょうどいいかな～と思っているところです。
冬は先に見てもらっているのでとりあえず大きなコレジャナイ感が起きるのは回避できてるはずだから、春は内容未公開で本で読むまでのお楽しみにできるかなとか。
もしご興味のある方がいらっしゃれば、冬と春合わせてお届けできたら幸いです。

今回も書き殴り文章でしたが、ここまで読んで下さりありがとうございます！
最後に、この本は2月のwebイベント『おれいち2』の存在があったから、そこでお披露目したくて制作を頑張れました。素敵なイベントを開催してくださりありがとうございました。イベントとっても楽しかったです！スペースにお立ち寄りくださった方々もありがとうございます！ポイピクリアクション、書き込みボードともにありがたく拝見しております。めっちゃ嬉しい～～～～～！
今年はからいちバリバリ描いていきたいので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。