愛のような甘さ(Δジョンドラ) 憤懣やるかたない様子でドラルクさまが隊室に戻って来た。威圧するような鋭い足音に、ふんふんと荒い鼻息。普段の高貴さは迷子のようだ。
「誰か地獄のようなコーヒーを淹れてくれたまえ!」
投げやりな、おおよそ人に物を頼む言い方ではなかったが、そんな傍若無人な要望にも、はいはい、と涼しい顔で応じるのは希美さん。流石、慣れたものだ。
ドラルクさまはカッカッカッ、と無闇に靴を鳴らして自席に辿り着くと、ひっくり返りそうな勢いで乱暴に着席した。普段なら絶対やらないのに、ノースディンが絡むといつもこうだ。こないだも怒りに任せて椅子ごと倒れ、痛みと羞恥に悶えたばかりだというのに、懲りない人。でもそんなところも愛おしい。
デスクで待っていたヌンは、用意していた砂糖瓶を抱えてドラルクさまに声をかけた。
「ヌヌヌヌヌヌ、ヌヌヌヌヌヌ」
「ああ、ただいまジョン」
「ヌーヌーヌ ヌヌヌヌ、ヌイヌ イヌヌ?」
コーヒーのお供に、愛は如何?
「……ふ、ふふ。そうだね、頂こう。疲れた身には、マジロのような甘さが必要だ」
そう言ってヌンの頭を撫でる手には、もう苛立ちはなく、優しさに満ちていた。ぷんぷんしているドラルクさまもあれはあれで可愛いけれど、やっぱり穏やかなドラルクさまが一番だ。
コーヒーを持って来てくれた希美さんにちゃんと謝罪と感謝を告げたドラルクさまはとっても偉いので、いっぱいいっぱい甘やかしてあげないとね。