両片思い ここ数日、起床時にルーチンと化していることがあるので紹介しよう。
今日も元気に起床。
まず、寝床からでてすぐ、部屋を見渡して。
ジョンも同じように部屋をキョロキョロと見渡して、脱衣所のほうを見に行く。
「……いないか」
戻ってきたジョンも、寂しそうにヌ!と報告してくれている。
こちらの部屋には自分とジョンしかいないことが判明したので、起きて数秒しか経っていないのにすぐ事務所側への扉を勢いよく開ける。身だしなみを整えもせず、本来なら紳士のすることではないのだが。
いない。
落ち着いて、深呼吸するが、その間にも自分以外の人の気配を感じなかった。
「あのアホタレめ!」
お分かりいただけただろうか。
ここ数日、ずっとあのアホタレがいないのだ。なのでまず起きたら、アホルド君探しをすることから始めている。
最初はあまり気にしていなかったので、会わなくなって何日目なのか正しい数字を出せないが、先週の卵の特売日に食事のリクエストでも聞こうと思った時にはいなかったので一週間は経っているのは確実だ。
「おのれアホルド君! 人を揶揄うのもいい加減にしたまえよ……」
前触れもなく、突然それは始まった。
退治人の仕事は吸血鬼を相手にしているわけだから、活動時間は専ら夜でありそれは私の活動時間を同時期である、はずだった。
もちろん彼は日の光を浴びることで負の影響がでることのない健全な人間だから、日中も活動している。
日中は私とはほぼ鉢合わせることはないし、私の起床が遅ければ彼が仕事に行ってしまっておはようが言えないこともある。たまに、こういうすれ違いが重なって一日程度会わないことも、同じ部屋に住んでいても起こり得てしまう。
ただ一日以上会わない、というのはなかった。そもそも彼の仕事のための事務所がここなので、真面目な彼が仕事を放り出して連日出かけるなんてこともないわけだから例え私と喧嘩して折り合いが悪かろうとも仕事の為に帰ってくるのだった。
たとえ、喧嘩しても、だ。
私たちの間での喧嘩の定義が曖昧だが、今までに「家に居たくない」と思うような言い争いは多々あった。その度に一時家を離れることはお互いによくあったが彼はともかく、私は離れたらすぐどうでもよくなるタチなのでコンビニへ散歩でも行って帰ってくることにはどうでもよくなってることが多かった。つまり、長い喧嘩も、ないのである。
そんなこんなな私たちなのに、なぜ、今や。一週間も会わないのか。
「もどかしい! もどかしすぎるなジョン!」
ジョンは概ね私と同じ意見であることが多く、今回も同意のようで小躍りしている。……もどかしいと小躍りするかどうかはよくわからないが、多分身を置いておけない的な意味だと解釈した。
「もういい、私が、仕方ないから動いてやろうではないか」
ヌー!
私よりもロナルド君に詳しくて気持ち悪い奴なら数人心当たりがあるから、当たってみるとしようじゃないか。
「で、俺のところに来たと」
「君、気持ち悪いくらい把握してるよね」
「生きがいだからな」
「気持ち悪い」
半田
声を荒げているのには理由がある。
「いや、最近執筆が…」
「それにしても合わなすぎるだろ!」
「会いたくないの!」
「……?」
「こわいだろ、嫌いとか言われたら」
「なん…?」
「答えを聞かなければこのままでいられるんだよ」
「それはちがうだろ」
「ちがうか」