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    fumau_ktgu49

    @fumau_ktgu49

    左右不定相手非固定の混沌。雑食型デッドマターしか生存できない侵食領域です。
    ここにあるものはもう年齢が立派な大人であることが明らかとなったリスインされている方しか閲覧できません。健やかなな10代はごめんな。
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    fumau_ktgu49

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    ベリ炭寄稿させていただきました!冒頭ちょっと展示しています。お楽しみに…!

    始まりを告げる新芽 油絵の具を載せた筆がキャンバスの上を滑っていく。イメージした通りに色を置いたところで、六花がふぅと息をつく。気づけば部屋の中はすっかり暗くなっていて、窓の外を見れば陽が沈みかけている。
    「もうこんな時間か……」
     いつから描いていたのだろう。頭に浮かんだイメージが消えてしまう前に、そう思って慌てて鉛筆を手にしていた。
     パレットの上に絵の具は残っていない。絵の具のチューブに視線を移すと、小さく折りたたまれて原型を留めていないものがいくつか床に転がっていて、もう絞り出せそうにない。今から買いに出てもお店は閉まりそうだし、集中力も切れてしまった。折角いい調子だったけど、今日はここまでだ。
     すると自室のドアがコンコンとノックされた。
    「……か」
     不鮮明だが声の主はすぐわかった。六花は急いで描きかけのキャンバスを裏返してからドアを開けた。
    「おかえりなさい、四季さん。今日はもう終わったんですか?」
    「そ。キリのいいところで陽も落ちてきたしね」
    「そうだったんですね。お疲れ様でした」
     四季は「これ」と六花に紙袋を寄越してきた。開いて中身を手に取ると数本の絵の具のチューブが入っていた。
    「これ……! ちょうど無くなったとこだったんです」
    「ならよかった」
    「でもどうしてこの色ってわかったんですか?」
    「昨日六花の部屋で喋ってた時に目に入っただけだよ。まぁもし今日六花が買いに行ってたとしても、その色ならいくら予備があっても使うだろうしね。六花はよく風景を描いてるから」
     六花はふと目を細めた。
    「風景……そうですね。ありがとうございます。そうだ、絵の具代を!」
     室内に財布を取りに行こうとしていた六花を四季が呼び止める。
    「後でいいよ。それより今らか早めに飯でも食いに行かない? お昼食い損ねたんだよ」
    「四季さんもですか? 実はおれもまだ食べてなくて」
    「なら丁度いいな。騒がしくなる前に行こうか」
    「わかりました。これだけ置いてきます」
     紙袋を机に置いて、六花も部屋を後にした。
     人の気配がない廊下は、二人の足音がよく響く。
    「皆さんは街の復興のために出払っているのに、おれは絵を描いてていいんでしょうか」
    「いいんだよ。これまでまともな休みなんてなかったんだから。しばらく好きなことさせてもらわないとな。たまに元素術使ってほしいって依頼が来た時に手伝ってやってるんだろ? それで十分じゃない?」
    「でも四季さんは働いてますよね?」
    「大人は別だよ。まぁ休み貰ったところで特にやることもないし、六花みたいに復興の役に立つ元素でもないし。適当に手伝うつもり」
    「そうですか……」
     六花は納どうも得できない様子で窓の外を眺めた。
    「そういや明日は休みなんだ。制限区域解除された湯射街より北側でも行ってみる?」
    「ホントですか? 行ってみたいです!」
    「じゃあ適当な時間に出るか。準備できたら部屋まで行くよ」
    「はい! よろしくお願いします」
     そんな話をしながら二人は食堂へ入っていった。
    最初は貸し切り状態でのんびり話をしていた二人であったが、次第に業務から戻って来た混の志献官が増えていく。入れ替わるようにして食堂を後にした。
     足の向くまま、暗くなり始めた防衛本部の周囲を散歩する。
    「ずっと考えてたんですけど……やっぱり、いつまでもここにはいるわけにもいかないと思うんです」
    「まぁ死ぬまで居れるわけではないからいつかはそうだろ。でも今すぐってわけじゃない。誰かがそんなこと言ってた?」
    「いえ、ただおれがそう思っただけです。朔さん、三宙さんが出て行きましたし、来週は七瀬くんも栄都さんと一緒に出るって言ってました」
    「みんな帰る場所があるからな。六花はこれからどうするつもり?」
    「鐵司令から働くよりもまずは学校だと勧められたんです。デッドマターとの戦いでまともに通えてなかったからって」
    「学校はともかく、働く必要はないのはその通りだよ。六花はまだ十四だし、その歳で戦わされる方がおかしかったんだ」
     デッドマターがいるのも、因子があれば志献官になるのも当たり前だったからあまり実感がなかった。でもおれの歳で志献官、特に純の志献官になるのは早いとは言われていた。平和になった今となっては、確かに凄い状況だったのかもと、苦笑いするしかない。
    「六花は家には帰らないだろ?」
    「はい。鐵司令はずっと寮にいていいと言ってくれたんですけど、みんな出て行ってますし。学校の近くの家でも探そうかと思っています」
    「じゃあ一緒に住む?」
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