永遠の命TLに流れてきた漫画を閉じた。
小さな生き物達が永遠の命を共にするというものだ。
可愛らしい絵とは裏腹な重いテーマ。
その余韻がずしりと私の心にのしかかっている。
そう遠くない未来、きっと私は同じ決断を迫られる。
私の命は永遠ではないが、人間のそれから見れば永遠にも等しいだろう。
不運な事にそれを与える術もある。
いざそうなった時、私はどうするだろう?
もし私がそれを行使したなら、ロナルド君は。
怒るだろうか。
詰るだろうか。
それとも。
夕食を作りながららしくなく塞ぎ込んでいる私に、ロナルド君がどうかしたのか?と声をかけてくる。
何でもないよ、さっき読んだ物語の余韻に浸っているだけだ、と返すと、どんなのだ?と聞くのでシェアをする。
ロナルド君がスマホの画面を見つめている間に夕食の支度を終え、料理をテーブルに並べる。
漫画を見終わったロナルド君の面持ちも神妙だ。
「……お前なら、どうする?」
そんな問いに、
「さぁねぇ。」
と答えながらお茶を注ぐ。
スマホを置いたロナルド君がいただきます、と両手を合わせて箸を持った。
「……。」
動きの止まったロナルド君の視線の先。
今日の夕食は魚の煮付け。
「……なぁ。」
不安そうな視線に思わず吹き出す。
「安心しろ。普通の白身魚だ。人魚の肉など現実にあるものか。」
「お前のじいさんなら持ってきそうだからな。」
「確かに。」
私の肯定にロナルド君はまた不安そうな顔になる。
「……私はそんなものには頼らんよ。人魚の血肉で君の体が作り替えられるなどありえん。君に命を与えるのなら、私自らこの牙で私の血を以てそうするさ。」
だから安心して冷めないうちに食べろ、と促せば、ロナルド君の箸が進んだ。
その向かいに腰掛けて、食べっぷりを見ながら呟く。
「置いていくな、と私が言ったら。」
「ん?」
「君は、どうする?」
ごくん、と口の中のものを飲み込み、ロナルド君は暫く黙り込む。
「いや…いい。食事時にする話ではなかったな。」
お茶のおかわりを注ごうと席を立ちかけた私にロナルド君の声が届く。
「……わかんねぇけど、置いていくのは嫌だな、とは思ってる。」
ロナルド君は発言を誤魔化すかのようにガツガツと食事を再開する。
その顔は耳まで真っ赤だ。
あぁ、今はそれで充分だ。
君がそう思ってくれている。
それだけで。
今は。
お茶のおかわりを注ぎ、おかわり!の声に頷き茶碗を受け取る。
白飯を山盛りによそい、手渡し、また向かいに腰掛ける。
いつか来る未来に思いをはせながら、ホットミルクの入ったマグカップを傾けた。