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    さくま

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    さくま

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    滑り込みキスの日に乾杯!

    キスの日TLだったので、キスをしているドロ最高じゃん。弊ドロのキスはですねぇ……。
    と思い出せば何もしてなかったので、取り急ぎキスさせました。

    #ドラロナ
    drarona

    初めてのキスに執着をジョンもいないし、ロナルドくんが寝てしまうと、珍しく本当に静かな夜だな。

    思わずため息をつく。退屈は吸血鬼を殺してしまう。

    ロナルドくんは朝の燃やすごみの日に備えて寝た。
    いまはもう夢の中のようで、すやすやと規則正しい寝息を立てている。
    寝顔を堂々と見られるのは、同棲中の恋人の特権かもしれない。
    可愛い顔にキスをしたくなるが、起こしてはいけないのでぐっと耐えることにする。

    ロナルドくんの朝食を作り終えて、家事が一通り終わった。
    ツイッターを開いて、トレンドを確認する。

    #キスの日

    確か「はたちの青春」という映画が公開されたことが由来だったっけ。
    へぇ、今日キスの日なんだ。
    日本人はこういうイベント事、本当に好きだよね。
    まぁ、私にはロナルドくんという、かっこよくて可愛い恋人がいるから、キスの1つや2つくらい。

    ……………………あれ?

    待って!
    私、ロナルドくんとキスしたことが無い!

    嘘でしょ!?
    私たち付き合って71日経っているのに、初エッチすらすませているのに、何でまだキスをしたことが無いの!?

    まさかの事実に、ショックすぎて思わず砂になってしまう。

    どうしよう。
    どうしたら紳士的にスマートにキスが出来る?

    キスがしたいですと正直に言う?
    スマートじゃないから言いたくない。

    夕食に鱚料理を出して意識させる?
    それだ!
    買い出しに行くのはロナルドくんだ。
    きっと読めないだろうから、ふりがなを振って余計に意識させたい。

    そうと決まれば、夕食の献立を考えないと。
    えぇと、鱚の炊き込みご飯、鱚のエスカベッシュ、鱚の刺身、鱚のフライ、鱚の、鱚の……。
    ダメだ、バランスが悪すぎる!
    鱚だけで夕食をつくるなんて不可能だ!
    そもそもロナルドくんがよく行くスーパーに鱚なんて売っているのだろうか。

    いや、売っていても、売られてなくても、ロナルドくんを意識させて「ドラルク様、キスがしたいです」と言わせたら私の勝ちだ!
    ……ロナルドくんはそんなこと言わない!

    ゲームしようと考えていたが、良い案が思い浮かばないうちは何も出来ない。
    どうしよう。キスの日になってしまったし、残された時間で出来ることは限られてしまっているのに!

    *

    「それで、今日どうしたんだよ」
    「な、何が?」
    「とぼけるなよ。夕方起きてきて、心ここにあらずまたいな顔してさ」

    仕事が終わり、メビヤツに帽子をかけながらロナルドくんが訊ねる。

    バレバレだったか。

    結局、鱚を買ってくるようにと買い出しメモを机の上に置いて寝たが、起きたときロナルドくんは平然としていた。
    作戦は失敗に終わったようだった。

    次の作戦を考えないと。
    でももう余り時間は残されていない。
    思わず考え込む。

    「……なぁ、俺ってそんなに頼りない?」
    「えっ」

    突然なにを言い出すんだ、ロナルドくんは。
    自己肯定感低ルドくんか。

    「俺にはお前がなに考えてるのかさっぱり分からないし、いつも余計なことは言うくせに。肝心のことは言わないし」
    「ロナルドくん……?」
    「お前と比べて観察眼なんて無いし、察してやることも出来ないし、俺なんかと付き合って後悔してるかもしれないけどさ」
    「そんなことは!」
    「じゃあ言えよ!」

    じわぁと目に涙をたっぷり溜めるロナルドくんに罪悪感でいっぱいになる。
    恋人を泣かせるなんて、そんなことは紳士的にも彼氏的にもありえないことなのに。

    「キスがしたいです」
    「……え?」
    「私は、ロナルドくんと、キスがしたい」

    ……言ってしまった!
    そんなはっきりと、雰囲気つくりも何もしないうちに言うなんて、全くスマートじゃない。
    でもぐるぐると1人で悩んでしまって負のループに陥るロナルドくんはもっと見たくなかった。

    「よくよく考えなくても、私とロナルドくんは付き合って2ヶ月経っているのに、全く一度もキスしたこと無かったでしょ。
    すやすやと気持ち良さそうに寝ている君を起こしちゃうかもと、何度もキスしたくなったことあるけど遠慮していたら時間だけが過ぎてしまってね」

    呆然とした顔でロナルドくんが私を見る。
    これはからかわれても仕方がない。
    だっていまの私、すごくかっこ悪いもの。

    「そ、それならさ、ドラルク……」

    小さな声で、真っ赤な顔をしたロナルドくんが切り出す。
    いつもの声量はどうした。

    「い、いまから、き、キス、する……?」
    「いいの!?」
    「キスだけな、キスだけ!」

    私を殺さないように、ズボンをぎゅうっと握りしめて、目をぎゅっと閉じて、顔を耳まで真っ赤にして、私のキスを待つロナルドくん。

    その様子を見ただけで、私のいままでの悩みがどこかへ飛んでいってしまった。

    あぁ、可愛いなぁ。

    その顔も、髪も、身体も、皮も、骨も、血も、心臓も、全部全部、私のものだ。
    誰にだって、渡さない。
    ずっと、永遠に、私たちは一緒にいるんだから。

    手をロナルドくんの手に重ねると、びくっと身体を震わせる。
    本当に可愛い。
    キスに慣れていない感じが可愛い。
    数をこなして経験が積まれていくと、私が彼を変えたんだと、育成したんだと達成感が生まれる。
    あぁ、私とのキスに慣れたロナルドくんも見たい。

    キスをしようと、改めてロナルドくんの顔を見る。
    本当に端正な顔立ちだ。
    いままで経験が無かったことが信じられないくらい。
    未経験というのは、とてもありがたいことだ。
    私の色に染めることが出来る。

    目線の先に、ロナルドくんの唇がある。
    緊張で閉じきった唇に唇を重ねようと、少し背伸びをする。自然に首筋が目につく。
    いつかこのやわらかそうな首筋に噛みついて、血を吸いたいな。
    そう考えていると、唇は首筋へと吸い寄せられていった。

    「んぇっ?!」

    ロナルドくんが色気の無い声を上げる。
    音を立てて強く首筋を吸うと、キスの跡が残った。

    「ちょっ、ドラ公……!」

    唇にキスされると思い込んでいたロナルドくんが制止をかけようとする。
    すぐに手が出るロナルドくんだが、私と付き合ってから恋人として過ごす時間というものを口に出さなくても分かるようで、滅多に殴られたことがない。

    ダメだよ、ロナルドくん。
    私はいま初めてのロナルドくんとのキスを楽しんでいるところなんだから。

    耳元に唇を寄せて囁く。

    「っ……!」
    「少し黙って」
    「ぁ……っ」

    少し色を孕んだような声に、気分が良くなる。

    このまま押し倒してしまおうか。
    きっとロナルドくんもその気になっているはずだ。

    しかし、隣の部屋には出来上がった食事が机の上に並んでいる。
    ロナルドくんも仕事終わりで、腹が空いているだろう。
    仕方ない。
    唇にキスされるのを待っているロナルドくんの願いを叶えてあげよう。

    耳へのキスはおしまいにして、今度こそ唇同士を重ねる。

    「んっ……」

    またしてもロナルドくんは、目と口を固く閉じてしまった。
    もったいない。
    爽やかな青の目は見れないし、気持ちの良いキスを経験出来ないではないか。

    ロナルドくんの唇を舐める。

    「はぇっ?!」

    驚きを口にして、開いた隙に舌を入れる。

    「んっ……!?」

    おもしろいくらいに身体が跳ねるロナルドくん。
    口の奥に引っ込んでいる舌を優しく吸う。
    緊張で舌までガッチガチに力が入っている。
    舌がやわらかくてとろけちゃうくらいに絡ませたら、すごく気持ちいいらしいのに。もったいない。

    しょうがないね。
    初めてだから、今日はここまでにしてあげようか。

    名残惜しいけど、唇を離してロナルドくんの目を見る。
    少し瞳が潤んでる。すごく綺麗。舐めちゃいたい。

    「ロナルドくん……」

    ロナルドくんの手が私の手を勢いよく振りほどく。
    あ、やばい。殴られるかも。
    でも予想ははずれて、口を守るように腕を構えられ、距離を取られる。

    「……っ、おま、おまえ、キスするって、言ったじゃねぇか……!」
    「うん、言ったよ」
    「何でキス以外のことを……!」
    「してないよ?」
    「えっ」
    「私はロナルドくんの、首筋と、耳と、口にキスをしたよ」

    呆気にとられたように真っ赤な顔をして何も言えなくなっているロナルドくんに、先ほどのキスの箇所を伝える。

    「まさかロナルドくん、唇同士が触れ合うことだけがキスだと勘違いしてないかい?
    紳士の挨拶に、女性の手の甲に唇を落とすことがあるでしょ。少し意味合いが違うけど、あれもキスの1つだよ」

    尊敬、忠誠、敬愛。
    確かそのような意味があったはずだ。

    キス以上のこともしようと思ったけど、それはきっと私が言わなければ分からないだろう。

    「そうかそうか、童貞ルドくんは大人のキスが分からないんでちゅね〜。今度はほっぺたやおでこにキスをしてあげましょうか〜?」
    「うるせぇ!バカ!!」

    真っ赤な顔して殴られた。
    うん、いまのは私の自業自得だ。
    ロナルドくんが可愛すぎて、デスリセットをしないと夕食そっちのけで襲いそうだ。

    砂から復活するよりも先に、事務所から隣の部屋へと歩いていくロナルドくんが振り返り照れくさそうに口を開く。

    「……あー、あのさ、ドラルク」
    「うん?」
    「こ、今度から俺が寝ているときも、き、ききき、キスしていいから」
    「……え」
    「起こしちゃうかもとか思わないで、したいときにすればいいから。お前らしくないんだよ、俺なんかに遠慮するなんてさ」
    「ろ、ロナルドくん……」

    言いたいことだけ言って、逃げるようにドアを閉められた。

    ………………可愛いがすぎるが?
    何であんなに可愛いし、男前なのに、いままで何も起こらなかったの。不思議でたまらないんだけど。

    まぁ、遠慮しなくていいと言質をとったから、ロナルドくんが夕食を食べ終わったら、先ほどの大人のキスの続きをしよう。

    無事に初めてのキスが出来た私は、鼻歌を口にしながら隣の部屋への扉を開けた。

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