ブレスレット「もうすぐホワイトデーね。フィン、そんな事してていいの?」
と、虹色に輝く羽を羽ばたかせピクシーが言った。妖精の集落、瓦礫の上に腰を掛け清らかな川へと釣り糸を垂らしていたフィンは長い睫を揺らして彼女を見た。聞いたことのない言葉が飛び出たからだ。
「あら、やっぱ知らないんだあ」
その反応から心情を読みとってくすりと笑う。王と共に旅をする仲魔達の中でも一番の古参である彼女は取り分けヒトの習慣に興味を持っており、また詳しい。王が設置した暦を指さし数えながらこれは何の日だ、あれは何の日だと頻りに訊ねていた。そんな彼女が言うのだから、その【ホワイトデー】とやらは何か重要な日なのだろう。
小首を傾げたフィンの目の前に軽やかに飛んでくると、高い鼻先を小さな指先で突いて可愛らしく笑う。
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