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    one_Papico

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    射すくめる眼光🐯🔥×爽秋を彩る経験🍁❄️の朱玄パロ

    #朱玄
    zhuXuan

    屏風の中の虎部屋に腰掛けて遠目に部屋を彩る屏風を眺めてみたものの別段変わったところはないように見える。
    記憶力はいい方ではあると思うのだが寸分違わずその日のままを覚えていられるわけではない。
    日頃から仕事で部屋には立ち入っているものの、思えばこいつを迎え入れたあの日以来、じっくりと見るほどの時間はとっていなかった。
    絵の一部が剥がれてきている可能性もあるだろうし、気に入って置いたものだ。ちょうどいい機会だと座った姿勢のまま畳の上を膝で擦って屏風の隅に描かれた虎へと近寄った。
    ……この虎はこんなに大きかったか。
    「屏風の虎が動く」という言葉が玄武の脳裏に浮かんだ。
    大きくなっているんじゃなく、遠近法か。だんだんとそこから外に出ようと近づいていっているんじゃないか。
    剥がれかけた和紙が揺れたり熱で絵が歪んだとかそういう自然な原因などでは絶対に起こりえないことだ。
    ということは、屏風の中の虎は本当に──
    ひとつの説が脳裏に浮かんできたことで鼓動の音が身体中を反響するように鳴っている。
    これがなんなのか理解したい。そんな好奇心に玄武はゆっくりと屏風の虎に人差し指を伸ばした。
    触れるまでの距離はさほど大きくない。ほんの一瞬の時間のはずなのに、まるで長い時間そこに向き合っていたかのようだった。
    ようやくたどり着いた人差し指の先には、木や和紙では絶対にありえない生き物の生暖かさのある毛の感触があった。
    「っ」
    驚きに息を呑み、当てた人差し指ごと身体を引いた。触れられた虎はみる間に大きく大きくなっていく。
    想像していなかった現象にそのままずりずりと後退りするが、まるで玄武の方へ走ってきているようにコマ送りに動く虎ははじめから木々などなかったように屏風いっぱいに大きくなっていた。その次の瞬間には虎の大きな前足がするりと、そこに板一枚の隔たりすらも感じられず、ただ窓から身を乗り出すくらいのごく自然な動作で外へと飛び出ていた。
    全身が畳の上に立体として目の前に現れた屏風の虎は、目を瞬かせる玄武などおかまいなくのしのしと歩いて、立派な爪の生えた前足で玄武を床に押し倒した。
    もしかしてこのまま食われてしまうんじゃないのかと想像して、背筋が冷たくなるのを感じている。虎がぐわりと牙をむき出すのが見えて玄武は反射的に両目を瞑った。が、次の瞬間想像していたような痛みを感じることはなかった。

    「オレは朱雀ってんだ。おまえの名前はなんていうんだ」

    ──虎なのに、朱雀ときたか。

    屏風の中にいたはずの大きな虎が人語を介しているという、立て続けに起こる衝撃的な現実を整理しきれずに頭の片隅でそんなことがよぎっていた。
    「……玄武だ」
    緊張にきつく閉じていた唇をほどいてようやく名乗ると、虎は玄武、玄武と納得するように復唱した。
    山月記の虎が喋っているときの様子はこんな感じだったのだろうか。獣の大きな口には立派な牙が生えているのに、よく器用に発声できるもんだなと感心する。虎じゃなくて絵だから、動物そのものの構造は関係ないのだろうか。
    そういえば虎が動いたという話は聞いていても、実害が出たり部屋がひどい有様になったりした報告はなかった。
    対話ができるんだったら、食われないようにどうにか話ができないもんか。
    玄武は自分にのしかかる大きな虎を刺激しないよう、慎重に行動しなくてはならない。まずは何か質問をしようと、再び口を開けた刹那

    ハックシュン!

    大きなくしゃみがひとつと目尻に生理的な涙が浮かんできた。そういえば近くに寄る機会などないから気にしていなかったが、虎は猫科の動物だったなと思い当たる。
    二度三度とくしゃみを繰り返す間も、虎は特に襲い掛かろうとするでもなく、ただ玄武の様子を見ている。心なしか不思議そうに見えるその姿に慎重に対話を試みるという考えはどこかに消えてしまった。食おうって気はないようだし、とにかくまずは距離をとりたい。
    「まず離れてくれ。毛が、っくしゅん……ああ、クソ!」
    なおもくしゃみを続けながら急に威勢よく大きな声を出した玄武に虎はびくりと身体を揺らし、大きな前足をどかして玄武から離れた。
    はぁ、とひと息ついて呼吸を整えているあいだも虎はおとなしく座った姿勢で待っていた。座り姿勢が猫そのもので、大きかろうが猫は猫なんだなと思う。
    「猫……いや、虎か。近寄られるとくしゃみが止まらなくなるんだ。アレルギーでな、アレルギーってわかるか」
    虎はアレルギーと大きな口で呟くと、首を傾げた。ぐるると喉を鳴らして「人間だったら平気か、玄武」と妙なことを聞くので「まあ、そりゃそうだな」と返すと座った姿勢のまま前足を三度ほどその場で踏みしめた。
    畳が傷付くからやめろと言うために口を開くと、ぴかっとほんの一瞬光って虎はあっという間に炎のような髪型に虎柄の服、なんだかアイコン的な要素の多い人間の姿になっていた。
    「これならどうだ」
    得意げに言う男の鋭い眼光がさっきまでそこにいた虎の瞳とそっくりで、すんなりとそれが虎──朱雀の姿であると信じることができた。
    不思議なことが起き続けているのに麻痺してきて混乱するよりも脳が投げやりに順応することを選んでいるのかもしれない。
    この客室を今後どうしていくか、そのためにここで一晩すごすのだから朱雀と話して、どうにか動く屏風の問題を解決しないといけない。
    「お前はどこから来たんだ」
    「あー、あそこ?」
    それはそうだとわかっていたことだが、改めて木々と小さな虎だけが残る屏風を指さされるとやはりどうにも信じられない気持ちになってしまう。今は人間の姿をしているから、尚更だ。
    「そうだ玄武、ありがとな!」
    「ありがとう?」
    何か礼を言われるようなことをしただろうかと思考する。
    「オレを外に連れてってくれただろ。あそこもじいさんはいいヤツで悪くなかったけどよぉ……すげぇ長いこといるからつまんねぇよなって、にゃこと話してたんだ」
    にゃこってのはこの小せえので、と屏風の小虎を指差して続ける朱雀に、ふと疑問に思ったことを尋ねた。
    「なら、今みたいに屏風から出て外を歩いたらよかったんじゃないのか」
    虎の姿はともかく人間の姿なら一風変わった服装ではあると思うがべつになんら不自然なこともなく街を歩けるだろう。
    「外に出たのは今日がはじめてだ」
    朱雀は玄武をまっすぐ見つめて興奮したように話し続ける。
    「オレ、おまえにどうしても礼をしたくてよ。いてもたっても居られなくて、出てぇなって思ってたら、なんか出れちまった」
    「出れちまったって……」
    説明になっていないと思ったが、そうとしか言いようがないのだろう。俺だって虎が人間になる原理を説明しろと言われたら困ってしまう。「虎が人間になっちまった」としか言えない。
    屏風の中で意識だけを持って変わり映えのしない景色の中を過ごすことを想像してゾッとした。気がおかしくなりそうだ。
    「ところで朱雀。お前、屏風には戻れるのか?」
    「そういややってねぇからわかんねぇな」
    えい、と朱雀は屏風に手を触れさせるが、特に何も起きなかった。屏風の中の小虎が心なしか呆れた顔をしているように見える。
    「あっおい、馬鹿にすんなよにゃこ!」
    それはどうやら当たっていたようだった。屏風の中の小虎に向かってくってかかる様子は少し面白い。
    手を鳴らして虎になって同じことをしてみてもダメだった。そのうえこちらはまたしてもくしゃみが止まらなくなってしまい、それを見てあわてて人間の姿になると朱雀はシュンとした顔でこちらを見上げた。
    「玄武ぅ……」
    「まあいい。戻れないならこっちにいられるように考えてやる」
    「ほんとか!」
    ぱっと明るい表情で飛びついてきて、こいつ屏風から出たときもこんな感じだったなと思う。
    とりあえず今日は一晩ここで過ごすとして、明日から朱雀をどうするべきか。
    事情の説明は難しそうだが、隠しようもないことだし現象についての報告は必要だし、相談してみるか。
    支配人もほかの面子も懐の広いほうだし、きっと大丈夫だろう。志狼にいたっては大喜びするかもしれない。
    「下宿に空きがあればそこが借りられないか頼んでみるか……」
    「あのよぉ玄武。玄武の住んでるとこって、女子いんのか」
    「いないが、それがどうかしたか」
    うちは基本的には男所帯だ。雇用者の中には当然女性が数人いるが、総じて近所に住んでいて住み込みで働いているのは男だけだった。
    「オレ、女子ってなんか苦手なんだよなぁ……」
    先ほど牙をむき出しにしていた大きな口の虎からは想像もつかないような情けない声で言うもんだから、思わず少し笑ってしまった。
    なるほど、虎が動いたと言いだすのが決まって男性客だったのはそういうことだったか。

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    keram00s_05

    DONE「神秘のAquarium」ガシャで突如として生まれた人魚野くん(頭領)に狂った末に出来上がったもの。ショタ貴族×人魚野くんという派生朱玄。
    愛と海の境界線あの日、俺は海の中に水面を明るく照らす陽の光が落ちてきたのだと思った。


    オレの誕生日になると親父は全国各地の商人を集めて、誕生日プレゼントを持ってこさせ、オレがその場で一番気に入ったものを買ってくれる。今年はオレが10歳だからか、例年になく豪勢だった。可愛くて珍しい動物に始まり、色とりどりの宝石、見たことも着方も分からない洋服、そして、綺麗な女性たち。
    椅子に座ったオレの目の前で商人達はこれはどうだと意気込んで、商品を差し出してくる。オレは膝の上にいる親友のにゃことああでもないこうでもない、これはどうか、あっちの方が好きかと話し合っていた。
    にゃこは偉大な海賊が残した宝の地図か、未知の技術が記録されている金属の円盤が良いのではないかと言うが、オレは正直どちらもとても欲しいとまではいかなかった。というよりも、どんなに珍しい物であろうと毎年毎年たくさん見せられると目新しさが無くなって飽きてしまう。現に去年は「これで良いかな」という気持ちでプレゼントをもらった。
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