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    nig

    @nessieisgreen

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    nig

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    短文詰め。息抜きがてらに書いたので本当に短いです。
    前半4つ🤟🛸、後半2つ🐣🛸になっています。

    #Renppio
    #Kyoren

    みじかい話嘘つく彼の独白

     レンはすぐに「好き」と言う。友だちであれば「××のこと?もちろん好きだよ!」と言うし、犬を見かければ「好き!」、近所のおしゃべりなおばさんのことは「大好き」だし、俺の母親のことも「面白くて優しくて好き」なんだ。あいつには好きなものがたくさんあって、だから彼が俺に向ける「好き」も、その他大勢の「好き」の中のひとつに過ぎない。つまり今、俺の背中に腕を回して肩に頬を押し付けながら「好き」と切ない声で彼が言っていたとしても、アップテンポに合わせたメトロノームのように俺の鼓動が高鳴っているとしても、その「好き」は道端の犬や俺の母親、近所のおばさんに向けるのときっと同等で、だから「俺も好き」だなんて言うべきではないのだ。
     (・・・本当に?)



    正直な彼の独白

     キョウは俺の「好き」が好きじゃないみたいだ。俺は友だちが好きだし、散歩中の犬を見るのが好きだし、近所のおしゃべりなおばさんのことも、キョウの優しくて面白いお母さんのことも、もちろんキョウのことも好きだった。そういう「好き」を口にするたび、わずかにキョウの眉間に皺が寄ることに俺は気づいていた。俺の「好き」は宇宙に点在する恒星のようで、キョウの「好き」は鍵のかかった小箱の中に大切に仕舞われているみたいだった。彼は俺のそういう雑多で安易な「好き」が気に入らないのかもしれないが、キョウへの「好き」だけは宇宙に手放すことも出来ず、ずっと手の中で大事に握ったままであることを彼は知らない。・・昨日までは。いつの間に指の間から零れてしまった俺の「好き」は一度落ちていくと止めることは出来ず、彼の大きな背中に手を回して肩に頬を押し付けながら、死刑判決を待つ罪人のように俺はずっと彼の言葉を待っている。
     ・・どうか「俺も好き」と彼が言ってくれるようにと。



    2人が手を繋ぐ時

     誰もいないエレベーターの中。珍しく電車を使った時の真っ暗な帰り道。信号待ちしている時の車の中。混雑したパーティーの壁際。学校の空き教室。ベッドの上。ふたりで肌を重ね合うバスタブ。
     その機会が訪れれば、どちらかが、あるいはどちらともが、伺いを立てるように指先で手の甲や指先をかすかに触れてみる。触れ返してくれれば幸せ。繋いでくれたらもっと幸せ。触れ返してくれなかったら少し寂しいが、後でだって触れ合うことはいくらでもできる。そうして手でじゃれ合う時、隣にいる彼の顔を盗み見て表情ひとつ変えなかったとしても、堪えきれず笑みを浮かべているとしても、胸の内はいつも同じだと俺たちは知っている。



    夜のシアター

     最近、隣の家に新しく住人が引っ越してきた。挨拶に来た2人の男のうち、1人はエイリアンで、もう1人はずいぶん派手な髪色をした男だった。エイリアンの方はよく1人で近所を散歩し、派手髪の方は出歩くときはたいていエイリアンと一緒だった。同性同士の恋愛ドラマに夢中だった妻は“きっとカップルなのよ”と彼らについて嬉しそうに想像を膨らませていた。私はどう思うかというと、よく分からない。ただ、何度か彼らと外で立ち話をする機会があった時、私の印象は“社交的なエイリアンと控えめな派手髪”“派手髪に片想いのエイリアン”という感じで、もしカップルだとしたら、エイリアンの愛情の行き先として相手は十分な受け皿を持っているようには見えず、エイリアンが少しかわいそうに思えた。もちろん余計なお世話ではあるが。
     ある蒸し暑い夜のことだった。私の住んでいる区画では21時にもなれば真っ暗で、わずかな街灯に照らされた通りを歩く人は滅多にいない。私はその日妻と些細なことで喧嘩をして、気まずさから車でそのあたりを走らせた後、適当なところに駐車して謝罪の言葉を考えながら時間を潰しているところだった。その時、車を追い越すように向かいの通りを人が歩いてくるのに気がついた。珍しさに目を向けると、隣人の男たちが歩いていた。ゆっくりとした足取り、繋いだ手。ああ、やっぱりカップルだったのだと分かり、これを話のネタにすれば妻は許してくれるかもとよこしまな考えが頭に浮かぶ。そのまま何となく彼らを目で追っていると、ふと2人が立ち止まった。何か話しているような素振りを見せた後、派手髪の方がエイリアンに近寄り、キスをした。街灯から少し離れたところに立っていたが、ほんのりと明かりに照らされているせいで、まるでドラマのワンシーンのようだった。1つになっていたシルエットがほどけると、派手髪が慰めるように一方の頬を撫でるような仕草をし、それからまた2人はゆったりした歩調で歩き始めた。今度は派手髪がエイリアンの腰に腕を回し、自分の方に引き寄せながら。
     ・・1分にも満たない光景だったが、再び1つになって遠ざかっていくシルエットと、愛しそうに腰に回された腕をぼんやりと眺めながら、俺は考えを改めることにした。きっと派手髪の彼はエイリアンの愛情を十分に受け取り、それと同等の・・いや、きっとそれ以上の愛情を彼に返しているのだろうと。2人の姿が見えなくなってたっぷり時間が経ってからようやく俺はエンジンをかけた。そして家に帰ったら妻にちゃんと謝って、それから日ごろの感謝と愛情を伝えようと、ゆっくりとアクセルを踏んだ。



    クラゲたちのダンス

     ダンスフロアにはスローテンポの音楽が流れ、淡い青と白のスポットライトが波紋のように床をゆらゆらと揺らめいていた。ひとり、またひとりと今日を約束した相手と手を繋ぎ、波打つフロアに踊り出る。横でケーキを品評していた見知らぬ女の子も、近くのテーブルに紙皿を置くと、さっきまでの姑じみた口調を引っ込め代わりに聖母のような優しい顔でパートナーと踊り始めた。きっと今日のために用意したのだろう水色のドレスはライトに当たると海を泳ぐクラゲのようでとても美しかった。
     自分の名前を呼ばれるまでレンは壁にもたれかかって、クラゲたちのダンスを悲しいとも嬉しいともつかない表情でただ眺めていたが、突然目を醒ましたかのように声の主に柔和な表情を向けた。「レン、踊ろうよ」。隣に並んだドッピオが手を差しだす。レンは彼の顔をまじまじと見つめると「・・男2人で?」と語尾に笑いを滲ませながら言った。「男2人じゃだめなの?」。ドッピオの言い方は「パンにバター塗るのは普通でしょ?」と言うのと何ら変わりなく、彼のその堂々とした口ぶりにレンは小さく笑い声をたてて、それから手に持っていたドリンクを傍らのテーブルにそっと置いた。「今目の前にいるとっても素敵なエイリアンと踊りたいんだけど・・レンはどう思う?」とドッピオが空になったレンの手をとり、とても演技的に、その甲に恭しく口づけた。レンは答える。「今君の前にいる素敵なエイリアンは意外と恥ずかしがりやだから、皆の前で踊るなんてちょっと恥ずかしいなあと思っているけど・・・でも・・ドッピオとならいいかなって、そう思ってるみたい」。そして彼の手を握った。
     ダンスフロアで抱き合って踊る2人をくすくす笑う声が聞こえても、使い古した野次が飛んできても、あまりにも2人が幸せそうに踊るため、いつの間にか人々は自分の踊りへと戻っていき、やがてクラゲたちはまた海の中をただ幸福そうにたゆたうのだった。



    エイリアンは時々寂しい

     エイリアンは時々寂しい。エイリアンは寂しくなると、ソファでテレビを見る俺の肩にもたれかかり、ソックスを履いていない足の先をもじもじと擦り合わせながら、ただ静かに一緒にテレビを見る。だけど数十分もするともっと寂しくなって、俺の手を取ると、手のひらの皺をなぞったり、指の間を撫でてみたりする。まるでそこに大事な事実が隠されているとでも言うような真剣な表情で。だけど俺が何もしないでいると、さらに寂しくなって、今度はもっと大胆になる。ソファに横になるように頭を俺の膝の上に乗せると、俺の顎を指先でくすぐってみせる。さすがにくすぐったくて笑ってしまった俺に満足そうにすると、指先を顎から上に移動させて、感触を確かめるようにすりすりと唇を撫でる。そのうち口内まで親指が入り込んで、下あごの歯茎を右から左へとゆっくりと通り過ぎていく。やりたい放題の彼の手をようやく掴むと、レンが嬉しそうに笑った。

    「・・さびしいの?」

     俺の問いかけにレンは笑っていた口を閉じると、わずかにあがったままの口角はそのままにしてこくりと頷いた。俺は彼の前髪をよけると、あらわになった丸いおでこや目元にキスをする。口を離すと今度は半開きになった唇から、吐息が漏れる。それから泣きそうともとれる表情で「・・さびしいんだ」と掠れた声で言うと、俺の手を取って、自身のTシャツの中に潜り込ませた。
     俺は時々寂しなってしまうエイリアンの心を元いた場所に戻すため、彼の冷えた肌の上に手を滑らせる。

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    nig

    DONE🤟🛸inミッションスクールな話。長いのでいったん途中までですが載せておきます。
    3月11日:加筆修正、続き書きました。
    瓶の中、ふたりで この学校は変なやつばかりだ。例えば、今あそこで電子オルガンを弾いているやつ。一見すると普通の人間のようだが、頭には左右非対称の黒い角が生えていて、先端は水色に発光していた。学校から支給された白いブレザーを正しく身に着け、涼しげな顔で流れるようにすいすいと鍵盤を叩いている。もし彼を瓶に詰めてラベルを貼るとしたら何て書くだろう。“品性方向”“誠実”・・それから“王子様”といったところだろうか。“王子様”を思いついたところで、彼はいかにも白い馬に乗ってお姫様を助けに来そうだと思い、笑いそうになる。あるいは・・と“品性方向”と“誠実”に二重線を引き“ヤリチン”と書き直してみる。つまり、“ヤリチン”の“王子様”。清涼剤の匂いでもしそうな澄ました横顔が、下心を裏に隠した甘い表情で見知らぬ誰かを口説いている様を想像し、またも笑いがこみあげる。ありえなくもない。瓶のラベルには“品性方向で誠実だが、ヤリチンの王子様?”と書くのが良いだろう。生徒が全員着席し“ヤリチンの王子様”の伴奏が止まると、俺の思考もそこで霧散した。先生が壇上に立ち(今日は国語の教師だった)、“・・・の福音書26章41節を読みましょう・・”と真剣な表情で言と、あの独特の薄い紙をめくる音が、さざ波のように広がっていく。俺はてきとうにページを開いて膝の上に置くと、説教を始める先生ののっぺりとした声を子守歌にして目を閉じた。
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