アイランド・フォー イグアスサイドの話アイランド・フォーでフロスネがギスつきながら出会いつつ、レッドガンは小遣い稼ぎのつもりがまさかアーキバスと戦わさているとは気づかない中、フロイトとイグアスが戦ったり(ガチの戦闘狂と戦ってからガン引き撃ちになってしまうイグアスとか・・・)、独立傭兵陣営が活躍したりする話が読みたいなって。(「お坊ちゃんども(アーキバス)のお澄ましヅラにクソでも塗りたくってやろうじゃねぇか」とか、コールドコールに言ってほしい)
そんな話のイグアス目線の冒頭など。
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イグアスは唸った。金がないのである。
それもこれもこの前の非番に拠点近くの酒場でやったテキサス・ホールデムのせいだと彼は思い出す。
途中までは良かった。ツキについていた。元金の十倍まで配当は膨れ上がり、久々に安くてまわりが早いだけがとりえの三等合成酒と苦甘ったるい香料が舌をしびれさせる液体煙草の日々に別れを告げられる。彼は配られた二枚のカードの上に掌をおいて口元を緩める。すでにゲームを降りたヴォルタはここらで退こうぜとイグアスを肘でつついたが、胴元に高レートのテーブルへの参加を勧められては断れるわけがない。普段ならまずお目にかかれないような高レートの勝負は、まるでACでのタイマンのようにひりついた最高の勝負だった。チップの塔はますます高さを増し、やにと油で茶色くべたついた店の天井にもせまるのではないかと思わせたが、それも一時のことで、一度つまずくとあとは坂道を転げ落ちるように負けが負けを呼び、二人が店を出るころには有り金すべてをむしられたどころか、新しく借金まで作るはめになった。
「お前、その博打癖直さねぇと死ぬぞ」急速に酔いが覚めて金策に頭を抱えることとなった帰り道でヴォルタは呆れながらイグアスに煙草を分け与えてくれた。「やらねぇぞ。貸しだからな」と、ヴォルタは念を押したがイグアスは聞かなかったことにして加熱煙草のタンクに素早くカートリッジを差し込んだ。スイッチを押しながら息を吸い込む。昔吸った紙巻煙草の香ばしい苦みとは天とも地ともかけ離れたどろどろとしたねばつく苦みが口中に流れ込んでくる。うまいものではないはずなのに、それでも金策に痛む頭がふっと軽くなるような錯覚に包まれる。くそったれ。紫煙を夜の暗闇に向かって吐き出しながら悪態を吐く。
ああ、ついてねぇ。
こうしてギャンブルで大負けしたとき、ACでへまをしたとき、ミシガンのバカみたいに硬い拳でぶんなぐられるとき。決まってイグアスはどこで道を間違えてしまったのか考えてしまう。葉脈のように細い糸のような分岐を辿り、なんだってこんなことになってしまったのかその原因を探そうとする。原因が見つかっても対処するすべはないというのに。一番は、酒を飲んで思考を止めてしまうのが一番だが、薄っぺらくなってしまった財布ではそれもできない。