光へ。 夜明けより その日、ハスマリーはバカみたいに清々しく晴れていた。肌寒さがはじまる時期にしては、日中は太陽が最大出力で照りつけるせいで暖かく、春のような肌触りだった。
――じゃあまた。あとで
エリントンは日付けが変わったから。そんな理由で電話を寄越した男は、散々キャンキャン喚いたあと、それだけ言って終話した。
『あとで』――つまり、十二時間後。ハスマリーの日付けが変わった頃にという意味だ。
薄暗いセーフハウスの一角。アーロンは窓際に寄せた寝床代わりのマットレスに寝転がり、四角く切り取られた空を眺めていた。
ソファーに転がしていたタブレットが震えて、煌々と輝きだす。首だけ振り向いた先。薄暗闇に光るそれを、アーロンはただじっと眺めた。
留守番電話に切り替わったのか、振動が止んだ。ゆっくりと歩み寄り、タブレットを拾い上げる。コールボタンを押した瞬間、窓の外が白みはじめた。室内がうすら、明るさを帯びる。
もうすぐ陽が昇る。
光が、差す。
『――でさ、て……』
「おめでとう。ルーク」
『——おめでとう。アーロン』
あぁ、めぐったのだ。
また一つ、命が巡った。