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    kapiokunn2

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    kapiokunn2

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    喧嘩をした丞と紬くん。とにかく書きたくてひたすら書きました。付き合い長いのに、恋人になってから色々悩む二人が尊い。BlueJasmineはすごく好きな曲です。

    Blue JasmineBlue Jasmine

     三寒四温。昨日は上着なしでも過ごせるほど暖かかったのに、今日はまるで真冬に戻ったかのように寒い。そろそろクリーニングに出したかった厚手のコートを着て来て良かった。しかし、傘を持たずに出てきてしまったのはうっかりだった。夕方から雨だと、昨日の天気予報で知っていたはずなのに。さすがに天鵞絨駅から寮までを傘なしで帰るのは難しいし、誰かに迎えを頼むのも心苦しい。いや、幸ちゃんなんて堂々と『誰か駅まで迎えに来て』と団員のグループLIMEに送ったりしているけど。そして誰かしらは都合がついて迎えに行くし、左京さんも『濡れて帰って来たり、無駄に傘買うくらいなら足を呼べ』なんて言う。今の時間なら、車を運転できる誰かしらはお願いしたら来てくれるだろう。でも俺はそれをせずにもう一時間もカフェで時間を潰している。開いた台本はちっとも頭に入って来ず、雨はまだまだ止みそうにない。

     今日、寮を出る前に丞と喧嘩をしてしまった。俺が悪いとわかっている。途中で冷静になって謝っていたら、と後悔しても遅い。
    『わかった、もういい』
     お互い何を考えているのかわからないままにしてきてしまって、俺も今まだ気持ちの整理がついていないから、何となくまだ顔を合わせたくない。夕飯も、客演先の役者さん達と食べてくると監督に連絡してしまったが思い切り嘘だ。でも全くお腹が空いてる気がしないので何も食べていない。丞はもう帰っているだろうか。
     喧嘩が珍しいわけではない。いつもならこんな気まずさを感じることはないし、LIMEでも電話でも一言「さっきはごめん」と言えるはずなのに。空のカップをぼんやり見つめる。永遠にここにいられるわけでもないし、そろそろ帰らなきゃならない。テーブルの上に伏せていたスマホが震えた。画面を見ると、リーダー会議の日程に関してのLIMEだった。一瞬期待してしまった自分がいて、ため息が出た。

     嫉妬、と言うのだろうか。丞と付き合ってそれなりに経つのに、あんな風にムキになってしまったのは初めてだった。前に付き合っていた相手とは、喧嘩もしたことないのに。
    子どもじゃないし、お互い付き合いがあるのはわかっている。嫌な言い方をしてしまったのは俺の方だ。
    『俺がいると邪魔だと思うし』。

     この歳になってようやく、恋愛って大変なんだなあ、なんて思った。でも丞のことが好きで、今までより深い関係を望んだことを後悔なんてしてない。
     たまたまだろうけど、カフェにいるお客さんが次々と席を立ち始めた。俺もそろそろ帰らないといけない。やっぱり、謝ろう。開きっぱなしだった台本をバッグに仕舞った。すぐそこのコンビニで傘を買うくらいならあまり濡れずに済む。しかし、席を立とうとしたところでスマホが連続して震えた。着信だ。
    「もしもし、丞?」
    『ああ。お前今どこだ?』
    「今帰るところだよ……駅前で」
    『早く出て来い。すぐそこに車停めてある』
    「え……?」
     電話はそこで切れてしまって、すぐに通りに面した窓に目をやる。そこからは丞の車は見えない。バッグを肩に掛けて慌てて店を出た。右を見ると、数メートル先に青い車が停まっている。運転席の丞が俺に気がついて軽く手をあげてくれた。

     どうしてなのかはわからない。俺は泣きそうになった。助手席に乗り込むとすぐに、丞の手が伸びてくる。髪についた雫をやわらかく払って、少し濡れた手が頬に触れた。
    「悪かった」
    「ごめん、俺が先に謝らないといけなくて……」
    「いや違う。俺だ」
    「ま、待って……とりあえず車動かした方が」
    「ああ、そうだな……」
     雨の中を車がゆっくり走り出す。雨足は少し弱くなってきたように思えた。明日は晴れるだろうか。
    「おい、メシ食ったか?」
    「食べ……、てない」
     丞が大きくため息を吐いた。だと思った、と続ける。
    「どうしてわかるの?」
    「何となくわかる。まあ、俺も食ってないんだけどな」
    「どうして?」
    「どうして、って……いいだろ別に」
     そして車は赤信号に引っかかった。あとほんの少し走れば寮だ。
    「お腹すいたな……」
    「腹減ったな」
     まさか、同時に口に出してしまうなんて。俺たちは声を上げて笑った。笑いながら、俺は少しだけ泣けてしまった。
     恋愛って面倒だ。今まで簡単に仲直りできてた相手と、急にそれができなくなったり。好きだから素直になれなかったり。でもやっぱりこうして通じ合えてることがわかって、泣きたくなるほど嬉しくて。
    「とりあえずどっかで何か食うか。この辺だとファミレスくらいだけどな」
    「うん。行こう」
     寮と反対の方向に車は進む。雨の夜のドライブなんてちょっと新鮮だ。
    「そういえば、どうして、俺があそこにいるってわかったの?」
    「別に……わかった訳じゃない。どうせどっかで時間潰してるんだと思って駅前まで行って、何となく覗いたらいたんだ」
    「あそこは丞とも行ったことあるもんね」
    「この時間までやってるカフェなんてそんなないしな」
    「……たーちゃんは、全部わかってるんだから」
    「いや、お前の考えてることなんて全然わかんねえ」
     はあ、とまた丞がため息を吐いた。
    「だから、はっきり言ってくれ。もっとひどい喧嘩になっても、こんなふうに連絡もなく帰ってこないよりマシだ」
     なあ、つむ。
     俺しか聞いたことのない声で名前を呼ぶ。
     今日はきっとこのまま、帰らないだろう。いや、帰りたくないと言ったら良いだろうか。せっかくなんだから、恋愛っぽいことを。
     少し先にファミレスの看板が見えてきた。
    「今日、帰りたくないな」
    「今日は帰らなくていいよな」
     また、と俺は笑った。丞は笑えないようで、眉をぐっと顰めている。
     お腹が空っぽじゃ抱き合えない。ひとまずはそこを満たしに行こう。雨はいつの間にか止んでいた。
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    kapiokunn2

    REHABILI二人は俺の推しCP。的な感情の至視点の同棲丞紬です。
    春も嵐も。 遊びに行くのは二回目だった。一回目は、二人が引っ越してすぐ。あの時はまだ開けていない段ボールがいくつかあったけど、あの二人のことだから今はすっかり片付いているだろう。シンプルで無駄なものがなくて、でも所々にグリーンやちょっと独特のセンスな雑貨が置いてある、それぞれの譲れないところがよくわかる部屋。駅からの道は何となく覚えている。わからなくなっても地図アプリ使えばすぐわかるし、と俺は記憶を頼りにぶらぶらと歩いた。ぶら下げた保冷エコバッグの中には大量の差し入れ。ここに来る電車の中では、カレーのにおいが車内に充満してしまわないかとちょっと不安だった。
     確かコンビニがあったはず、と角を曲がった。記憶は間違っていなかったようで、すぐ先にコンビニがあって、そこからまた少し進んだところのマンションの前で俺は足を止めた。エントランスの脇に小さな花壇があり、カラフルな花たちがそこを彩っていた。片手に持っていたスマホで電話をかけた。着いたよ、と伝えてエレベーターで三階へ。三階くらい階段上れ、と誰かさんには言われそうだが俺はなかなかに重い差し入れを持っているのだ。許されたい。廊下の突き当たり、一番奥の部屋。思えばもうそれなりに付き合いの長い友達の家なので緊張するのもおかしな話なのだが、インターホンを押すのはちょっと勇気が必要だった。そういえば俺、友達の家に行くとかもほとんどなかったし、一応付き合ったことのある彼女の家なんて一度も行ったことない。きっとここに住んでる二人は、お互いの家もまるで自宅みたいに行き来していたんだろうな。よし押すか、と俺は人差指でインターホンのボタンをロックオンした。するとだ、押してないのにドアが勝手に開いた。俺もついに不思議な力に目覚めたのかと思いきや、ドアの向こうから現れたのは家主の紬だった。
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