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    あもり

    @34182000

    二次創作小説置き場です。
    現在格納済み:fgo、遙か3、バディミ、スタオケ、水星の魔女、マギなど色々

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    あもり

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    3年前に書いたものを発掘しました。
    ぐだマシュ前提の藤丸と巌窟王が夢の中で会う話です。夢って異界だよね〜〜〜桜って夜雰囲気変わるよね〜というのを書きたかった。あと後方巌窟王が先導するの。なので藤丸と巌窟王の独特の雰囲気をお楽しみください!

    #FGO

    幽界の桜気付けば桜の花が何枚も何枚も、数え切れないほど目の前を舞っていた。桜の森の中に日は柔らかく差し込んでいるが、太陽の位置ははっきりとはわからない。というより桜に遮られてそれも惑わされてるようだった。満開の時にしかわからないあの消えそうな、微かな香りが辺りに漂っている。ひらひらと舞い散る花びらを掴もうと手を伸ばせば、からかうように指先から感触がすり抜けていく。昔絵本で読んだような、綺麗な風景だった。ゆめみたいな景色。何度も見たような、懐かしい景色。
     ならここは夢だ。妙に五感があって、意識ははっきりとしているのに、何故かいつから此処に来たかわからない。この感覚は間違いようがない。カルデアにきてから、マスターとして契約を結ぶようになって何度も体験したことー自分ではない誰かの記憶の中。
     となれば誰かがどこかにいるはずだ。いつものパターンなら行動すれば歩けば棒に当たるのように、敵性が出てきた時か、誰かがひょっこり出てくる。まぁ簡単に言えば囮になってなんとかする。よくマシュやダヴィンチちゃん、それから最近は新所長にも怒られるけど、こうしないと事が進まないから仕方ない。私は止まるわけにいかない。だから、進まなきゃ。でもまあ、あとでたっぷり怒られるのだけは覚悟しておこう。いつになっても怒られるのは嫌だけど、閉じ込められたままも不味いし。そうして光に満ちた桜の森の中をゆっくりと歩き始めた。

    ……

    「うーん」
     敵もいなければ、誰にも合わないまま、何分経っただろうか。体感時間では好きな曲6曲を脳内で歌ったから三十分くらいだとは思うけど、本当に影も形も気配すらもない。密集する桜と、そこから花弁がひらひらと舞っている景色が続くだけだった。いつまで経っても抜けることがない。
     抜けることがない、永遠の春。同じことの繰り返し。こんなことをしそうなのは何人か思いつくけれど、大概もっと早く種あかしをしてくる。例えば、ルルハワルでのループ騒動を引き起こしたあの困ったややこしい後輩系AI。でも彼女ではないとは思う。彼女なら目覚めた段階か、疑問を覚えた今くらいでゲームスタートを教えてくれる。そう、彼女には彼女なりのルールを設けてゲームを行おうとする節がある。言葉を借りるなら「1%の可能性を与えておかないと不公平」なのが、分かりにくい彼女の誠意なのだ。
     だから本当におかしかった。ただ桜が舞っているだけの世界。ただ綺麗な景色が続くだけの世界。綺麗、美しい、形容詞だけしか浮かばなくなってくる。思考が真綿にくるまれるように柔らかくなる。そのまま包まれててしまえと言わんばかりの、優しい光景。桜の隙間から差し込む光がより温かくなる。頭がふわふわする。力が抜けていく。足元がふらつく。うっかり酒を一気に飲んでしまった時の感覚にまずい、と思って舌を噛んだけれど麻酔がかかったように痛みがない。感覚が解けていく。緩やかに弛緩していく。

    ただ、その気持ちよさにゆだねてしまえばいい。嫌だ、いやだと思ってもその抵抗をはぎ取るように一つひとつの感覚を消されていく。癇癪を起こした子供をあやすようにゆっくりと包み込まれていく。

     ー飲み込まれる。そう思った瞬間だった。バチバチとした雷の音が閉じつつあった空間を切り裂くように鳴り響いた。思わず目を閉じれば、より音が身体中に浸透していく。何をしている、起きろ、目覚めろと音によって全身が揺さぶられる。
     雷鳴が鳴り止む頃には、先ほどまであった緩やかな感覚の喪失はどこにもなくなっていた。

     夢の中に来れる、雷鳴。それは自分の知る限り1人しかいない。

    「あ、はは…やっぱり来てくれたんだ、巌窟王」
    「……フン、」
     後ろを振り返ると顔をしかめた巌窟王が立っていた。淡いパステルの風景に場違いな程影が濃い彼を見て、私は初めて詰めていた息を吐いたことに気づいた。自分で思ってた以上に、この状況に堪えてたのか。
    「あー、君が来たってことはやっぱりこれはわたしの夢の中なのかな?いつも君がいるっていう夢の底」
    「さあな、そうかもしれんさ。ただの虚無の地獄かもしれないぞ」
     いつも通りに難しそうな顔で、私を見る視線は変わらない。変わらない、だからこそあの雷を裂いて現れたのが目の前にいる巌窟王だと確信できる。
    「でも迎えにきてくれてありがとう。実はちょっと出れなくて参ってた」
    「そのようだったな……行くぞ、こっちだ」
     深緑のマントを翻し、私には同じにしか見えない桜の中をゆっくり歩き始めた。
    「あーあ、これマシュにも見せたかったな」
    「シュミレーターでも見れるはずだが」
     思わずぽつりと吐き出したのを、先導を行く巌窟王は耳ざとく拾ったらしい。地獄耳、と思ってここは地獄みたいなところだったのを思い出した。私は前を向いたまま続けた。
    「これは私のわがまま。前にドクターから聞いた事があるの。マシュの見たかったモノ」
    「外、か」
    「うん」
     シュミレーターでもなくコフィンを通してでもなく、この旅が終わったらいつか外に出ようと、外に出て本当の青空の下、楽しいことをたくさんしようねと指切りをした。今までの旅に負けないくらい、楽しいものにしようと何度も約束した。その中の一つが、桜を見に行くことだった。
     そう、カルデアから見る景色は雪ばかりだった。だから「春が見たいなあ」とポツリと言ったことがある。マシュは博識で、私の知らない春の事もたくさん教えてくれた。世界の春の事、生物学的な春の事象、歴史的な春という事情。打って変わって私が話せたことと言えば、春になったら、桜を見に行くことだけだった。だって、今までそんな事大したことじゃなかった。毎年のように来る春を、桜を当たり前だと思っていた。教室にいて古い戦争の勉強をしているときも、テレビ越しに聞く紛争のニュースも恥ずかしいけど、あまりピンと来なくてただ他人事だった。口々に言う「日常が愛おしい」という言葉の痛ましさは受け取っていたけど、今なら嫌ほどわかる。初めて分かる「当たり前」が全部あった。
     でも。そのマシュが、私の大事なひとが、先輩が見た春の、毎年見ていた桜の中で一番きれいなところへ一緒に行ってみたいですとはにかむように笑ってくれた。残っている。私の次の春は、彼女と迎えたい。ただそれだけだった。
     だけど。
    「でも、ここじゃないから、私がマシュと行きたいところ。こんな桜が綺麗だけでなくて、もっと俗っぽいところだからさ。桜があって、屋台とかもずらって並んでて、いい匂いもしてて、それでもっといろんな人がいて、」

    「みんな笑っている風景なの」

    「だから出ていかなきゃ。目を覚まさなきゃ。みんなが、マシュが待っている。だから……手伝ってくれてありがとう、巌窟王」
     言葉にした瞬間だった。昼間のような明るさから、一気に夜のように真っ暗になる。桜だけはぼんやり光っているあたり、この夢を施したものの優しさがわかってしまう。夢を加工したもの、ほうがいいかもしれない。いつもだったらこんな優しい空間ではないだろう。
    「出ていけば地獄が待っているというのに?」
    「うん」
    「ここはいい場所だ、マスター。何もお前を脅かすものはない」
     周囲を軽く見渡す巌窟王の表情は、背中越しだったからわからなかった。
    「そうだね」
     それでも、それでも。
    「私は、立ち止まるわけにも行かないよ」
     遠くで誰かが泣いている声が聞こえた。
    「ありがとう、巌窟王。忘れたくないけど、忘れてしまうのがなんか悔しいな」
    「それでいい、マスター。夢なんぞ覚えていても現実のお前にさしたる影響もあるまいて?」
    「うーん、でもさ」
     私は半歩前を行く、彼の横に合わせるように、大きく一歩を踏み込んだ。隣に並ぶとかすかに香る桜よりも強烈に、巌窟王の纏う灰と煙の異質さが際立つ。この春の中でただ唯一の苦味のような男がどれほど自分を守っているかも、知っていた。
    「私は何もできないから、こうやって助けられているのに見ないフリ、はすごく嫌だな。出来ないからって貰いっぱなしって性に合わないし」
    「お前はそういう奴だな、マスター」
     隣で声を抑えて笑う気配がした。その答えが聞きたかった、と言わんばかりだったのでちょっと悔しくて反論する。
    「そうだよ、知ってるくせに言わせるなんて意地が悪いなぁ」
    「たまにはお前の口から聞きたい言葉もあるんでな?」
    「あのさ」
    「なんだ」
    「……なんでもそんな気障ったらしい言葉がポンポン出てくるのなんなの!?フランス人か!?」
    「俺はオレだが?フランスなぞ知らん」
    「ソーデスネ」
     思わずため息をつく。なんか、気が抜けてしまった。
    「じゃあ私の共犯者、先導よろしくね」
    「お前の頼みとあれば」





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    Replies from the creator

    あもり

    DOODLE突然始まって突然終わる、シンドバットとユナンの幕間、ユナン視点。時間軸的には本編開始前のつもりです。シンドリアにふらっと遊びに来てはシンドバットのそばに居たいけどいられないことを痛感して離れる、みたいなめんどくさい猫ちゃんムーヴ的行動を何度かしてそうだなぁ〜と思いながら書きました。この2人もなかなか複雑でいいよね。
    不変「言った本人は覚えていない軽くて適当な言葉ほど、うっかり他人を救ってたり殺してたりするものさ」
     開放された窓から南国特有の生ぬるい風が流れてきて、適当に括った髪がそよぐ。僕に向き合うシンドバットの顔は無愛想のままだった。何もとって食いやしないのにと思っていると、
    「そっくりそのままお前に返してやる、ユナン」
    「……ふふふ、根に持つなぁ」
    「俺はお前と違って忘れっぽくないからな」
     わかりやすく捻くれて拗ねた事を言うものだから、思わず笑ってしまう。こんな分かりやすく、変なー警戒心と好奇心があいまぜになった顔。人間の表情筋ってこんな複雑に動くものなんだと感心する。
     それに、こんな人間的で複合的な表情はきっと自分以外にシンドバットは見せないだろう。八人将たちには甘えているからここまで警戒の色は混ざらないし、対外的には七海の覇王としての役どころと面の良さを存分に活かしている。かつて興行として舞台に立った経験も織り込んでいるはずだ。
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    あもり

    PAST24年3月17日春コミで出した、無配ペーパーの小話再録です。そのに。
    2のこちらは、ムーとティトスです。新刊準拠の話ですが読んでなくても「本編最終章終了後、ジュダルが行方不明になったので単独で白龍がレームへ訪問しにきた後の二人の会話劇」とさえわかってれば問題ないです。
    私の割と癖が強く出た話となりました。こっちはしっとり目です。ノットカップリング。
    受け継がれるもの 練白龍が去った後、次の面談先へと元気よく歩くティトス様とは裏腹に、色々と考えあぐねてしまう自分がいた。練白龍は割合、裏表がない青年だ。今回の訪問もどちらかと言えば公人としての彼ではなく、私人としての立場に近いのだろう。だからこそ、あそこまでさらけ出したともいえる。しかし、自身が腹の内を掻っ捌いたようなものだからと言って、それを、同じだけのことを相手に求めさせるのはあまりにもリスクが高すぎる。落ち着いたと思ったが全くそんなことはない。やはり練家の男だと、かつての紅炎を思い出す。
    「ムー」
     くるりとティトス様が振り返った。丸い瞳をこちらに向けてじっと見、そして俺の顔に手を伸ばそうとしていたためすぐに屈む。なんでしょう、と言えば少しだけ笑って口を開いた。
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    REHABILI
    ‘我梦见绿色的夜,在眩目的白雪中’‘I have dreamed of the green night of the dazzled snows’


    你有没有遇到过这种情况?……有一卷磁带,不知道放哪里了,怎么也找不到。
    没有。再说谁还会听那种古董啊。
    因为以前只有这些……
    里面的内容很重要吗?如果还记得的话,在网络上也能找到吧。
    ……不知道啊。斯莱塔上半身躺倒在座椅上。舷窗收束起一轮宽阔无云的天空,铺开一片退烧般的柔和的冰冷,像一面冰河期后仍然遗留在陆地上、忘记解冻的海。虽然水星上的一切都在以难以想象的高速旋转着,太阳风从几十数百千米外的高空呼呼掠过,但对斯莱塔而言,从学校到宿舍的两点一线融洽地保持着一个闭环。殖民地建在南极的深坑里,每天准确地执行着算法编排好的日照、降雨与风速,居民们——他们大多来此定居不久——在一拱吹制玻璃似的天空下,各司其职,各行其事,过着一种理性、朴素,酒精和音乐都很有限的生活,好像它从一开始就本该如此。米奥利涅说过,水星简直是一个史前世界,或者几百年前曾大量涌现的那种‘西部垦荒片’:庞然的大陆上,一小群一小群清教徒孤零零地生活着,放马、煮鹰嘴豆、做木工,周末赶几小时马车一路颠簸去教堂做礼拜,对从四面八方延展开去的无边无际的荒野和狂风无知无觉。
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